GMとクライスラーはやはり救済。金融緩和と赤字財政政策による景気浮揚急務

12月19日、ブッシュ大統領から、TARPからの174億ドル融資によるGMとクライスラーの救済策が発表されました(※1)が、これは当室としては予想通りですこれでNYダウの大幅な下げはなくなったと思います。あとは、オバマ大型積極財政の発動を待つだけです。発表が1月20日の就任と同時なのか、年内にも発表されるのか、そのあたりはまだ分かりませんが、何らかの株価マイナス要因が発生した場合はその時に合わせて打ち出してくるでしょうし、株価が安定的であれば、発表は1月20日になることと思います。それまでに勝負する人は勝負するということでいいのではないかと思います。投資判断はお任せします。

以下、今回は経済理論的な内容ですので、株式投資とは直接はあまり関係がありません。興味のある方だけお読みください。

ここのところ、世界の主要国がほぼ同様に政策金利を引き下げていますので、12/20現在、日本0.1%、米0~0.25%、ECB2.5%、英国2.0%、カナダ1.5%、豪州4.25%、ニュージーランド5.0%、スイス0.5%、香港0.5%となっています(※2)。

こうした各国の金利引下げ競争?状態にあっては、「財政政策は無効」と主張するマンデル・フレミングモデルは「財政出動→金利上昇→円高→輸出減少→財政出動分の外需減少」という連鎖条件が崩壊状態にあります。ということは、マンデル・フレミングモデルから判断しても、現在は財政政策は有効という状況にあるわけです。もっとも、当室はもともと考え方の偏向しているマンデル・フレミングモデルよりは、国際資本移動を前提としない素直なIS-LMモデルの方が説明力が高いと考えていますので、あまり関係ありません。金融緩和と積極財政政策がセットであれば景気浮揚に対してはいずれも有効です。

先日の当ブログで、金融引締めと円高を主張する早稲田大学の経済学者のことを批判しましたが、本日12/20のダイヤモンドオンラインに、【野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む】ということで、「『日銀引き受けで25兆円支出増』という思考実験――パンドラの箱を開ける」・・・というコラムが掲載されていまして、少し安心しました(※3)。

榊原先生の方はちょっと「?」マークのままですけれども、野口先生の方はやはりきちんと分かっていらしたのだと思いました。申し訳ないことです。最近の先生の論説がやや方向性に疑問のあるものが散見されましたので、どうされたのかと心配しておりました。こうでなければいけません。

日銀引受による赤字国債の発行とそれを財源とした積極財政支出。不況の打開策はこれしかありません

この主張には、次の反論が必ず出ます。いわく、①ハイパーインフレになる、②国の借金が増えて返済に困る、③円が暴落する、④その結果、最後は国家の財政が破綻する。

しかし、これらの赤字国債発行の弊害の程度は、すべてその発行額と経済状況(=不況の程度)にかかっています。

まず①のハイパーインフレは、現在のこの不況下では起こりません。インフレの前提としては、旺盛な有効需要の存在が不可欠ですが、そんなに購買需要が存在すればもともと不況にはなりません。ないから不況なのです。既存の過剰な生産設備をフル稼働させてかつ物価が上昇を始めるためには、GDP500兆円の1~2割程度は突っ込む必要があるでしょう。それはさすがに大変だし、しないと思います。野口先生の3年間で25兆円という案はGDPの5%で、経済活性化には妥当な金額です。やや控えめな数字かもしれません。この程度の赤字国債日銀引受では、インフレにはならないものと思います。

仮にやり過ぎてインフレになった場合には、国債の実質残高価値が減少しますので、借金を減らすのと同様の効果があります。政府には好都合でしょうし、本音としてはそうしたいのかも知れません。野口先生の指摘の通りです。

②の「国の借金増加と返済問題」ですが、景気が浮揚すれば税収は増加しますので、うまくすれば増発した国債分は全額償還可能です。また、残ってしまった場合でも、国民経済の規模に応じて必要とされる通貨量は一定額かならず存在しますので、GDPが拡大すれば、それに見合う取引用通貨量は増やさざるをえません。その必要とされる通貨量に見合う国債は、償還しなくてもいいものですので、ノルマとして償還するべき赤字国債額は経済の拡大相応分だけ当初発行額よりも少なくなります。さらに、運用対象としての国債も、一定量は必要です。国債金利が低いうちは国債の需要が十分あると解釈できます。

金利が上昇を始める経済状況になれば、民間借り入れ需要も旺盛となった証拠ですので、政府は黒字財政政策を採用して国債を償還すればよいということになります。問題は、その時に政府が償還を優先実行するかどうかです。税収が増加すれば使ってしまいたくなるという悪い癖が出ると国債残高は減りません。

③の「円の通貨価値下落問題」ですが、これも杞憂でしょう。よほどの金額で発行すれば別ですが、経済が回復軌道に乗った世界第二位の経済規模の国の通貨が暴落するはずがありません。25兆円規模の通貨増発では、当然大丈夫です。

④の「借金過多による国家財政破綻問題」はナンセンスです。この点は、当室管理人がファンである山崎元研究員の最新著書「超簡単 お金の運用術」に要領よく書かれていますので、それを掲載します(※4)。

◆「現在、日本の財政赤字は地方の債務も含め八〇〇兆円以上あり、こうしている間にもどんどん増え続けている。日本のGDPは約五〇〇兆円なので赤字規模はGDPの一・六倍にもなる。先進諸国のGDPに対する財政赤字の比率は六〇~七〇%程度が多く、日本の一・六倍というのは突出して高い。(中略)日本の国家予算は、一般会計で支出が八〇兆円。税収は五〇兆円程度で、三〇兆円を国債で補っているので、財政赤字は毎年ふくらみ続ける。早晩、国家は破綻し、あなたが円で持っている財産は意味がなくなる。(中略)こうしたパニック論の後には、資産を海外に避難させよ、通貨以外のものに替えておけ、といったオススメが続くのが常だ。」

・・・と山崎氏は説明して、巨大な財政赤字による国家破綻説というのは、霊感商法と何ら変わらない脅かしだとまで言っています。

要するに、(a)日本の場合は国債は概ね国内消化されており、依然として国内需要は旺盛であるから国家破綻からは随分距離がある。かつまた(b)政府の資産が五〇〇兆円以上あるから純債務残高は三〇〇兆円程度に過ぎず、これは他の先進国並みの対GDP比率六〇%に収まっている、ということで、国家破綻は心配無用ということです。当室もまったく同じ見解です。

従いまして、財政出動は赤字国債日銀引受で実行可、ということです。無難な年間上限はGDPの5%、25兆円程度と思います。

08年12月20日の日経新聞夕刊の記事ですと、09年度予算財務省原案における新規国債発行額は33兆円で、国債費20兆円との差額13兆円が、非自発的に生じる財政赤字、いわば消極的にGDP比2.6%の財政出動を09年度は初めから予定していることとなります。

政府による投資対象としては、当室としては、首都高を改造してほしいと思っています。合流地点の狭さ、左右両方向からの合流、道幅の狭さ、景観など、どれを取ってみても改造の余地は多数あります。しかも東京を基本的に通過しなければならない根本的構造欠陥があります。地震への耐久力対策も不安です。改造できれば、流通面の効率化、排気ガス減少による環境改善、渋滞解消による経済的ロスの縮減効果など、波及効果は絶大だと思います。少なくとも田舎のタヌキ道や使わない空港を整備するよりは、はるかに・・・。

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◆(※1)「ホワイトハウスは、自動車各社へのおよそ174億ドルの融資を不良資産救済プログラム(TARP) から拠出し、このうち約134億ドルは12─1月中に実施するとした。内訳は、クライスラーがまず40億ドルの融資を受ける。同社は今後速やかに関係者から譲歩を引き出し、引き続き「大幅なコスト削減」を行うとした。残りの融資を受けるGMは、政府支援が会社のスリム化と強化につながると表明した。フォード・モーターは、足元十分な流動性があるとし、引き続き政府支援を受けなくてもリストラできることを望んでいるとした。ホワイトハウスは自動車各社に対し、来年3月31日までにリストラ計画を提出するよう要求。そのための中間報告の期限を2月中旬に設定した。さらに幹部らへの報酬を制限し、政府は議決権のない新株引受権(ワラント)を受け取る。」
(以上、「米政府が自動車救済発表、TARPから174億ドル融資」(08/12/19 ロイターより抜粋)http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35555520081219

◆(※2)「政策金利一覧」 外為どっとコム  http://www.gaitame.com/market/seisakukinri.html

◆(※3)「『日銀引き受けで25兆円支出増』という思考実験――パンドラの箱を開ける」http://diamond.jp/series/noguchi_economy/10002/

◆(※4)「超簡単 お金の運用術」(山崎元著 朝日新書 2008/12/30刊)