米国景気対策法案7800億ドルで米GDP5%の浮揚効果

米上院民主党は6日、景気対策法案について、規模を7800億ドル(約72兆円)に縮小することで穏健派共和党議員らと合意に達した。同法案が上院本会議で可決されれば、先週可決済みの8190億ドル規模の下院案との一本化作業を進めることになる。最終法案は両院で可決後、オバマ大統領に送付され、署名を経て成立の運びとなる」(※1)ということで、ようやく法案成立と財政政策の執行段階となりました。

オバマ大統領は、米経済の危機的状況を踏まえ、2月16日までに法案に署名したい意向を表明している」(※1)ので、予定されている減税部分の政策効果については、前回のブッシュ減税のケースで検証したものと同じようなパターンとなりそうです。
→当ブログ「オバマ大型財政出動は成立からどれくらいで効果が出るか」(http://toshukou.at.webry.info/200812/article_18.html

なお、「ケリー議員(民主党、マサチューセッツ州)によると、7800億ドルの妥協案は42%が減税で、残りの58%が財政支出となって」(※1)いますので、減税部分は3276億ドルということになります。米GDP約14兆ドルの2%程度のGDP拡大効果があるものと思われます(全部消費に回ることはないと思いますが、乗数波及効果も少しはありますので)。

それ以外にも、「ガイトナー財務長官は米東部時間9日正午(日本時間10日午前2時)から講演し、不良資産救済プログラム(TARP)の残り資金の使途に関する計画を明らかにする」そうで、「TARPの残り資金3500ドルのうち、最も多くが金融機関が保有する不良資産への保証付与に使われ」、具体的には、「金融機関が保有する不良資産への保証付与や政府による買い取り権限の拡大、さらに問題を抱える住宅ローンの買い取りや融資条件の修正に向けた最大1000億ドルの支出などを打ち出す方針」だということです(※2)。

バッドバンク構想については、まだ不透明な様子です。一方では、「CNBCテレビは6日、関係者の話として、米政府の下、金融機関の不良資産を買い取る「バッドバンク」が最大の5000億ドル(約46兆円)の資産を買い取る見通しと報じた」(※3)とされていますが、もう一方では、「金融機関から不良資産を買い入れる「バッドバンク」構想については、同筋(政府関係筋)は「大幅に後退した」と述べた」(※2)とも報道されています。

しかしながら、株式市場が08年11月のようにNYダウ8000ドルを大きく割り込むような場面があれば、バッドバンク構想は、おそらく速攻で提出してくるものと思います。また、景気対策法案の支出規模は、9000億ドルからやや減額されてしまったものの、依然として米GDPの5.5%程度の規模ですので、景気刺激効果は十分期待できます。

それに比較しますと、日本での動きというのは、「自民党の菅義偉選挙対策副委員長ら有志議員は6日午後、党本部で「政府紙幣・無利子国債発行を検討する議員連盟」の設立準備会合を開き、景気対策の財源としての政府紙幣と無利子国債の発行に向けて検討を開始した。3月末までに考え方をとりまとめ、麻生首相に提言する方針」(※4)だということで、何やらのんびりしていて牧歌的な響きを感じるのは私だけでしょうか。想定金額の報道もありませんし、具体性が足りません。有志議員の提案というレベルでは、よほどの情勢変化がなければ実現の可能性は低いと思います。

それよりは、「週刊東洋経済」の中で野口悠紀雄先生が主張されている30兆円規模の赤字国債日銀引受による財政出動の方が現実的ですし、かつまたすぐにでも採用するべき政策です。当室はもともとケインズ主義でIS-LMモデル主義ですが、野口先生は最近は当室と同じくらいケインズ主義に傾斜してきておられるようです(※5)。

いずれにしても、今日8日の時点では、明日2月9日に予定されていますガイトナー財務長官の新たな金融安定化措置の発表を待ちたいと思います。

**********

◆(※1)「米上院が約72兆円規模の景気対策法案で合意、週初めまでに採決」(09/02/07 ロイター)http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-36356820090207

◆(※2)「関係筋によると、TARPの残り資金3500ドルのうち、最も多くが金融機関が保有する不良資産への保証付与に使われる。これまでにシティグループとバンク・オブ・アメリカに対して行った損失保証に近い措置になるという。
さらに500億─1000億ドルを用いて不良化した住宅ローンを金融機関から買い取り、差し押さえを回避するために借り手に有利な内容に返済条件を変更する。
残りのTARP資金は米連邦準備理事会(FRB)が開始するターム物資産担保証券貸出制度(TALF)の拡充に使われるとしている。
金融機関から不良資産を買い入れる「バッドバンク」構想については、同筋は「大幅に後退した」と述べた。」
 (以上、「米政府、銀行の不良資産保証や住宅ローン支援など発表へ=関係筋」09/02/07 ロイターより抜粋)http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-36355920090207

◆(※3)「[6日 ロイター] CNBCテレビは6日、関係者の話として、米政府の下、金融機関の不良資産を買い取る「バッドバンク」が最大の5000億ドル(約46兆円)の資産を買い取る見通しと報じた。
金融機関はすべて同じ負荷テストが義務付けられ、政府による金融機関への追加資本注入もあり得るという。」
 (以上、「米政府のバッドバンク、最大約46兆円の資産買い取りへ=CNBC」09/02/07 ロイターより全文掲載)http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-36354920090207

◆(※4)「政府紙幣は現行の日銀券とは別に政府が紙幣を発行し、日銀が資産として保有することや、市中で流通させるケースなどが想定されている。政府の債務ではなく、利子負担も発生しないが、政府の財政健全化への取り組みへの不信やインフレを招く懸念がある。日銀が保有する場合は、日銀財務の健全性に疑念が生じかねないなどの問題的が指摘されている。
一方で無利子国債は、利子は発生しないものの、保有者には相続税免除の特典を付与する。政府にとって利子負担はないが、「金持ち優遇」批判が起こる可能性がある。議員連盟では無利子国債の発行とセットで、生前贈与を時限的に減税する措置も検討する。」
 (以上、「政府紙幣・無利子国債発行に向け、3月末までにとりまとめ=自民有志議員」09/02/06 ロイターより抜粋)http://jp.reuters.com/article/wtBusinessNews/idJPJAPAN-36348920090206

◆(※5)「日本でケインズ政策は戦後初めて必要になった」(野口悠紀雄/早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 「週刊東洋経済 2009/02/14号」)