米銀のストレステストは不可解/リバランスの方針

当室は珍しく若干弱気です。それは、米銀のストレステストの結果が余りにも楽観的で、ずさんなように感じられるからです。優先株を普通株に転換するだけで、どうして資本増強になるのかが理解できません。優先株にしろ普通株にしろ追加発行して新たに資金調達をして初めて資本増強ではないかと思いますが・・・。にもかかわらず、ストレステスト結果が市場の予想範囲内と称して楽観ムードが広がり、株価が上昇してしまうのは納得できないわけで、何らかのまやかしが潜んでいるような気がしています(※1)。バッドバンクに分離する話はどこへ行ったのでしょうか。また、19行しかストレステストの対象としないと宣言してしまうというのも奇妙でアンフェアです。

従いまして、NYダウと日経平均は、勢いでまだもう少し上昇するかも知れないものの、それほど遠くないうちに金融株で揺れ戻しがあるものと判断し、ここは保有している日本株について、徐々にリバランスを開始しておきたいと思います。リバランスの対象としましては、すでに5割以上の値上がりを示している株を処分して、配当利回りで見た割安株(=配当利回りが高く財務的に堅実な株)に乗り換える、ということになります。J-REITとワールドリートを中心とした高利回り投信は、継続してドルコスト平均投資とします。リートはまだそれほど底値から上昇しているとは言えない感じですので、仮に下落したとしてもそれほど大きな下落幅とはならないものと思います。

もっとも逆に言えば、リートが余り上昇していないので、ここのところの株価上昇に不自然さを感じている面もあります。また、金価格も上昇ぎみの動きです。

それにしても、「2010年末時点の自己資本比率をTier1(中核的自己資本)リスク・ベースで最低6%、Tier1普通株式リスク・ベースで最低4%」という表現では余りにも不足で、Tier2も含めて何%とするのか、時価会計で示していただかないとバブル崩壊後の日本の場合と比較して不公平ですし意味がありません。かつての厳しいBIS規制8%はどこへ行ったのですかね。スティグリッツ教授が、デット・エクイティ・スワップの早期実行による資本増強を主張しているのも、当然のことだと思います(※2)。

なお、最近の注目点としては、ジョージ・ソロス氏の強気転換でしょう。5月11日の報道では、「経済の急激な落ち込みには歯止めがかかり、金融システムの崩壊は回避された。各国の景気対策が奏功し始めている。悪化の動きが緩和している」と指摘。「回復がこれまでの落ち込みの半分程度を埋め合わせ、その後、停滞期に移ると予想している」と述べた」とされています(※3)。4月6日時点での弱気発言がウソのような変わりようです(※4)。ソロス氏を以ってしても、わずか1ヶ月でそれだけのブレが出るわけですから、私などでは到底先は見通せません。

ここは、株価についても、「落ち込みの半分程度回復後、停滞期に移る」というソロス氏的見解が妥当な線ではないでしょうか。

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◆(※1)[6日 ロイター] 米政府は6日、大手金融機関19行を対象とするストレステスト(健全性審査)について、資本増強の目標と条件を明らかにした。
ストレステストの結果は米東部時間7日午後5時(日本時間8日午前6時)に発表する。
政府によるストレステストの概要説明と資本増強の目標は以下の通り。 
 <資本目標> 
ストレステストの対象金融機関は、政府が設定した最悪シナリオのもとで、2010年末時点の自己資本比率をTier1(中核的自己資本)リスク・ベースで最低6%、Tier1普通株式リスク・ベースで最低4%とする資本バッファーを実現するよう指示されている。
銀行は通常、自己資本比率がTier1リスク・ベースで最低4%あれば「適切な資本」があると考えられ、Tier1の内訳については、普通株を中心とすることのみが求められている。
ただ今回の資本目標では、「十分な資本」という高い基準が求められるだけでなく、普通株式の比率を高めることも求められる。
Tier1普通株式の重視は、損失の吸収と返済の順位の高い株式の保有者や債権者を保護するうえでは、普通株式がきわめて重要との認識に基づくものである。 
 <期間> 
資本バッファーの積み増しが必要になった金融機関は6月8日までに詳細な資本調達計画をまとめ、11月9日までに計画を実行する必要がある。  
 <経営陣> 
資本バッファーの積み増しが必要な金融機関は「現在の経済環境でリスクを管理する専門知識・能力がある」経営体制を整えるため、経営陣・取締役会メンバーを見直す必要がある。
金融機関は、十分な財務基盤を確保し「国内経済の資金ニーズを満たす慎重な貸し出し」を継続できる経営体制にあることを証明しなければならない。 
 <資本回復計画>
資本増強を義務付けられた金融機関は、連邦預金保険公社(FDIC)と協議のうえ、詳細な資本計画を作成し、主たる監督者の承認を得る必要がある。
金融機関は、可能な場合、民間からの積極的な資本調達を目指す計画を立てることが奨励される。 
計画には、資本性証券の発行・再編、事業、資産もしくは少数持分の売却、配当・自社株買戻しの制限などを盛り込む必要がある。
金融機関は公的資金の返済計画の概要と、FDIC保証債への依存脱却に向けた計画の概要を示す必要がある。  <公的支援> 
民間からの資本調達が望ましいが、財務省は7500億ドルの金融救済基金の下で「資本支援計画(CAP)」を通じ、「民間資本のつなぎ」としての支援を実施する用意がある。
金融機関は、CAPの下で、リスク加重資産の最大2%、もしくは要請に応じそれ以上に相当する強制転換優先証券の発行を申請できる。
政府保有株式を強制転換優先証券に転換することを希望する金融機関には、民間資本の普通株への転換、もしくは新たな民間資本の調達が義務付けられる。 
 <公的資金返済> 
ストレステストの対象19行のうち、公的資金の返済を希望する金融機関は、事業全体が健全であること、資本水準が適切であること、貸し出し能力があることを証明する必要がある。
また、公的資金の返済後も、ストレステストで必要と判断された大幅な資本バッファーを維持する必要がある。
さらに政府の保証なしに必要資金を調達できることを証明するため、FDICの保証なしでシニア無担保債を発行できなければならない。  
 <その他>
政府は、ストレステストの対象を大手19行以外に拡大する計画はないとしている。
政府は、金融機関の資本増強について、景気が急激に悪化しても大手金融機関が融資を続けるという自信を市場参加者や金融機関に持たせるため「一時的なバッファー」として機能する、と説明している。
金融機関が資本バッファーを大幅に積み増した後は、通常の監督プロセスで金融機関の資本必要額を判断する。
政府は、金融危機の最中でも金融機関が貸し出しを続けられるよう「銀行システムをしっかり支援する」方針をあらためて示した。」
 (以上、「情報BOX:米ストレステストの資本目標・条件」09/05/07 ロイターより全文掲載)http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-37866420090507?sp=true

◆「[7日 ロイター] 米金融機関19社を対象に実施した健全性審査(ストレステスト)の結果、10社が資本不足と判断された。不足額は合わせて746億ドル。資本不足とされた金融機関は、資本調達計画を6月8日までに提出し、11月9日までに計画を実行する必要がある。
9社の金融機関については、資本水準は適切、との判断が下された。
以下は、各金融機関の増資所要額および資本調達など対応策の一覧。 
<資本不足とされた金融機関> (単位は10億ドル) 
金融機関名   増資所要額  資本調達計画
バンク・オブ・アメリカ 33.9    
 普通株発行で170億ドル調達
 優先株の普通株への転換 資産・事業売却で100億ドル
 その他の手段で70億ドル
シティグループ 5.5    優先株の普通株への転換
フィフス・サード 1.1   不明
GMAC 11.5   不明
キーコープ 1.8   不明
モルガン・スタンレー 1.8   
 普通株発行で20億ドル調達
 社債発行で30億ドル調達
PNC 0.6   不明
リージョンズ 2.5   非中核資産を売却可能性
サントラスト 2.2   政府の優先株を減らす意向
ウェルズ・ファーゴ 13.7  株式発行で60億ドルを調達
 <資本水準が適切とされた金融機関> 
アメリカン・エキスプレス
バンク・オブ・ニューヨーク
BB&T
キャピタル・ワン
ゴールドマン・サックス
JPモルガン
メットライフ
ステート・ストリート
USバンコープ」
 (以上、「情報BOX:米ストレステスト、金融機関の増資所要額と対応策」09/05/07 ロイターより全文掲載)http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-37894620090508?sp=true

◆(※2)「国際通貨基金(IMF)は4月、米銀行セクターが金融危機以前の水準まで資本を引き上げるには2750億ドルの調達が必要、との見方を示した。1990年代半ばの水準を回復するには5000億ドルを調達する必要がある、とした。
関係者はこれほどの巨額の資金の調達には、債務の株式化が唯一の実現可能な方法だ、と指摘する。
しかし、債務の株式化を強制するには大きな障害が存在する。規制当局は、社債投資家に対し、株式を受け入れるよう強制する法的根拠を持たない。また、大規模な債務の株式化の強制には、法律制定が必要になる可能性がある。
オバマ政権は債務の株式化をそれほど追求しておらず、投資家の多くは大規模な債務の株式化が実施される可能性は極めて低いとみている。
ノーベル経済学賞を受賞した米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授は、債務の株式化を長期間放置すれば、高い代償を支払うことになりかねない、と指摘した。
主要銀行の大半は、引き続き債務の履行が可能であるが、将来大手行が巨額損失を計上し、かつ政府が介入に踏み切るまで時間を要した際には、多大なリスクが発生する可能性がある。この場合、後片付けにより高いコストを支払うことになる。スティグリッツ氏はロイターに対し、「政府は最後まで待ってはならないという、特別な義務を負っている」と述べた。」
 (以上、「〔焦点〕米銀行への債務株式化の強制求める声広がる」09/05/29 ロイターより抜粋)http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPnTK838609820090529

◆(※3)「[ベルリン 11日 ロイター] 米著名投資家のジョージ・ソロス氏は、金融危機の悪化傾向が和らいでおり、各国の景気対策が奏功し始めているとの見解を示した。ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙が11日、報じた。
ソロス氏はまた、アジアが一番先に危機から抜け出すと予想するとともに、中国が米国を追い越し、世界の成長エンジンとなるとの見方を示した。
ソロス氏は「経済の急激な落ち込みには歯止めがかかり、金融システムの崩壊は回避された。各国の景気対策が奏功し始めている。悪化の動きが緩和している」と指摘。「回復がこれまでの落ち込みの半分程度を埋め合わせ、その後、停滞期に移ると予想している」と述べた。
ドルについては、既に弱いとの見方を示し、「むしろ、ドルがユーロに対して大きく値下がりするとはみていない」と付け加えた。」
 (以上、「金融危機の悪化傾向に歯止め─ソロス氏=報道」 09/05/11 ロイターより全文掲載)http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-37931820090511

◆(※4)「[ニューヨーク 6日 ロイター] 米著名投資家ジョージ・ソロス氏は6日、米経済について、「長期にわたる減速」に直面する見通しであり、高インフレとともに、日本式の比較的低成長期を迎える可能性があるとの見方を示した。
ロイター・フィナンシャル・テレビジョンに語った。
同氏はまた、米金融機関の救済について、これらの金融機関を経済の活力源を吸い取る「ゾンビ機関」に変え、経済の減速を長期化させる可能性があると警告した。
ソロス氏は「米経済が第3または第4・四半期に回復するとは予想していない。従って、かなり長期的な減速に直面しそうだ」と語った。その上で、2010年に米経済の成長に関して「重要なこと」があるかもしれないと指摘した。
ソロス氏の見方は、ロイターが実施した最近の月間エコノミスト調査に基づいた大半のエコノミストの見方と相反している。ロイター調査では、大方のエコノミストが、米経済は第3・四半期に縮小が止まり、第4・四半期に成長を再開するとの見方を示した。
ソロス氏は「金融システム全体が、基本的に支払い不能となっている」と指摘。
「われわれが現在作り出した状況は、金融機関が窮地を脱することは可能だろうが、そうすることで、経済を圧迫するという状況だ。経済を刺激する代わりに、こうした金融機関は存続するために実体経済から活力源である利益を吸い取るだろう。これはゾンビ機関を作り出す状況だ」と語った。
ドルは売り圧力にさらされており、将来的に世界の準備通貨の地位を失い、恐らく、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)がドルに取って代わるとの見方を示した。
「現在ドルは疑問視されており、米国にも他国同様の規律を求めるための制度改革が必要だ」とし「基軸通貨国として、今まで免除され乱用してきた。これは、生産した物の6.5%を上回る物を効果的に消費してきたため。こうした状況は終わりに近づいている」との考えを示した。
ドルが下落し、金利上昇や成長減速を引き起こすドルの「転換点」のリスクがあるとし「これはスタグフレーションにつながる」と指摘、ハイパーインフレよりもスタグフレーションの可能性が高いとの見方を示した。
中国は最近、SDRが将来的に世界の準備通貨になることも視野に入れ、SDRの使用拡大を提唱した。ソロス氏は「ドル以外の国際的な会計単位を確立することは、長期的にはわれわれにとっての利益となる。それによりわれわれは散財できなくなる。米国は過去25年間いい思いをしたが、今高い代償を払っている」と語った。その上で、現在国内総生産(GDP)の3分の2を占める米個人消費は、対GDP比60%まで減少する必要があるとの考えを示した。
中国は他国よりいち早く景気後退から脱却し、それは恐らく今年になり、2010年には世界経済成長のけん引役になるとの見方を示した。
前週の20カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)については、世界の政策担当者は、危機対応や金融システムの構造的な問題修正で「追いつき始めている」と評価した。」
 (以上、「UPDATE1: 米経済、長期にわたる減速に直面する見通し=米著名投資家ソロス氏」 09/04/07 ロイターより全文掲載)http://jp.reuters.com/article/domesticFunds/idJPnTK843091920090407