毎月分配型投信は特に不利な商品ではない

■毎月分配型投信で損するとは限らない
たとえば、基準価格100でもって、毎月分配型投信を購入したと仮定します。年間の分配金が10あったとし、そのうちの3が投資対象からの配当収入から充当され、残り7が留保金から充当されたとします。そうしますと、単純に考えれば、分配金は10受け取ったけれども、元金は93に減少しているという面白くない状況にあることとなります。簡単に言えば「蛸足配当」ということです。

これが毎月分配型投信の多くにあてはまる図式であり、毎月分配型投信に不信感を持っている投資家の危惧しているところであると思います。

しかしながら、この「蛸足配当」の考え方は、正しくもあり、また一部見落としもあるというのが当室の解釈です。というのも論より証拠で、実際に当室が保有している毎月分配型リート投信は、いずれも含み損は発生しておりませんし、むしろ現在の基準価格は購入時よりも高くなっていて、少しですが含み益が発生しています。もちろん、分配金は予定通り10%を超える高い利回り相当額を、購入以来継続して受け取って今日まで来ています。

それでは、どうしてそうなるのかと言いますと、理屈上は確かに毎月の分配金の支払い金額が投資先(個別リート株など)からの上がり(分配金・配当)を上回っていて、投信元金部分(留保部分)を食い潰す形となっていますが、実際には投資対象資産の値上がりに連動して差益が発生しており、この差益幅が元金部分の食い潰し幅を埋め合わせる結果となっているからです。つまり、分配型投信の投資対象資産価額は毎月評価換えされているため、投資資産の値上がり部分が含み益とはならないで実現益としてすぐに計上され、これが分配金支払い原資を補填するとともに、投信基準価格を維持する効果を持っていることになります。

事実、分配型投信の運用報告書の損益の状況を記載してあるページには、当期損益金の内訳項目として「有価証券売買損益」という項目があり、これには期末の評価換えによるものを含む旨の説明があります。すなわち、投信の損益が、投資対象資産の評価額(値上がり・値下がり)しだいで変動するということです。

換言すれば、毎月分配型投信の投資対象資産(個別リート株式など)が値上がりする限り、投信基準価格も連動して上昇しますので、その上昇度合いが適切であれば、我々投資家は毎月分配型投信の「蛸足配当」による基準価格下落で損失を蒙ることはありません。

さらに別な見方をすれば、投資対象資産の値上がり部分を分配金の形で受け取っているだけと解釈することも可能です。したがって、高利回りの分配金が獲得できて、なおかつ基準価格も維持できるという状況も十分起こり得るわけで、実際に現状がそのような情勢下にあります。

なお、運用報告書の一例として、下記にDIAM J-REITオープンの運用報告書を掲載しておきました。

■分配金を毎月受け取るのは損とは言えない
毎月分配型投信は、毎月の分配金の10%を税金として支払い、わざわざ受け取り部分を減少させて再投資することになりますので、そのロスの存在は投資効率上で大きなマイナス・ポイントになり得ます。

確かに理屈の上では、税金を支払わない場合に比較すると、毎月の税金部分を損しているように見えます。しかしながら、たとえ10%の税金を支払って90%部分を再投資したとしても、その再投資分は確実に投資口数が増加します。つまり、毎月分配型の場合は、インデックス投信の基準価額が上昇した場合のような含み益のままではなくて、分配金が実現益として毎月計上できて実物資産としての投資口数が増加しますので、その増加口数部分に次期の分配金が付与され、受け取る分配金が増加して毎月複利運用できていることになります。

そこで毎月分配型投信の複利運用の効果を検証するため、仮にインデックス投信が配当率2%相当で毎年1回年末に株数が2%増加し、かつ投信価額の成長率が5.5%で合計年率7.5%ずつ成長していく場合と、毎月分配型投信が分配率7.5%で税金10%分を差し引いて再投資し、かつ基準価格が買価から変化しないとした場合とを、エクセルで単純比較計算してみました。その結果、残念ながら(?)、5年間両者に大きな投資差額は現れませんでした。それ以上の期間でもって試算してみても、おそらく同様の結果であるものと思います。多少は分配型投信の方が不利だろうと想定していた当室にとってもこの結果は若干意外でした。

そうなる理由は、インデックス投信の場合、2%配当部分は再投資で複利運用できるとしても、5.5%増価部分、つまり含み益となって累積する部分が複利運用できないことが主たる要因だと思います。これに対して毎月分配型投信の場合は、10%税引き後とはいえ分配金が全額再投資できるため、再投資部分が全額複利運用になり、不利な税金支払い部分を挽回できてしまうということになります。

それ以外の差異は、信託報酬の多寡が関係するものと思います。しかしながら、毎月分配型投信の信託報酬はインデックス投信に比べると高く設定されてはいますが、それ以上に分配金利回りが高ければ、これを補って余りが出ます。ただし、選別に当たっては、分配金原資の多寡や、今後の値上がり見込みというものも大事になってきます。

なお、これらの点は、これまで当ブログでも何度か説明しておりますように、インデックス投信も毎月分配型投信も、経済成長の果実をそれぞれ異なる形式で受け取っているだけのことですので、結局のところどちらが有利かという判断は、個別投資対象商品を処分換金した後でなければ最終的な判断はできません。

■まとめ
①毎月分配型投信は、基準価格が投資対象資産の値上がりに連動して上昇するため、分配金額が投資収入を上回っているケースであっても元本が減少する(値下がりする)とは限らない。
②毎月分配型投信は分配金が複利運用できるため、インデックス投信に比較して運用効率が不利にはなるとは限らない。
③もっと簡単に言うと、投信基準価格が購入価格を割り込まない限り、損はしない(当然ですが・・・)。

■毎月分配型リート投信の今後の見通し
それでは肝心の分配型リート投信基準価格の動向はどうなるのか、ということになりますが、この点は当室は楽観的に考えています。マクロ経済的に景気の底打ちは完了していますので、よほどの波乱が起きない限りは大きな下落は発生しないものと思います。

まず、J-REIT投信については、(1)銀行が借り換えに応じ始めリート市場が落ち着いて個別リート株の水準訂正の動きが出てきていることや、(2)2月の積水ハウスのリート参入、あるいはまた今般4月のNTT都市開発のリート参入など、大手企業の参入による個別リートの資本面・経営面の安定化効果、それに付随する全般的市場心理改善効果などにより、少しずつ価格が上昇するものと見られます。

また、海外リート投信については、米国商業用不動産の底打ち確認はできていないものの、米国景気の回復が本物である以上、リート価格も少しずつ上昇するものと思われ、また米国金利の上昇によって円安傾向であることから、為替の面からも円建て価格は上昇するものと思います。

なお、債券を投資対象とする分配型投信については、今後の金利上昇によって債券価格が下落しますので、全般的に不利であると思います。固定利付債券は、金利上昇局面に差し掛かっている現状の経済情勢下では、有利な投資先とは言えません。

また、個別リート株についても債券的要素がいくらか存在しますので、分配金利回りが低いものは、今後は金利上昇の影響をある程度受けて価格は頭打ちになるものと思います。ただし、日本については、金利が上昇しても小幅にとどまり、大幅な金利上昇は当面ないものと想定しています。

◆DIAM J-REITオープン毎月分配型投信の運用報告書抜粋(ご参考)
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