11月5日の日銀政策決定会合でETF・J-REITは12月中にも購入開始の方針

11月5日の日銀政策決定会合は、円高がそれほど進行していない現況を踏まえ、追加緩和策は打ち出すことなく終了したようです。ただ、積み残していた指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の買入基本要領を決定し、週明け(11/8以降)に国債、12月上旬に社債・コマーシャルペーパー(CP)と段階的に拡大し、ETF・J-REITは12月中にも開始する方針となりました。

今回の日銀政策決定会合は、通常よりも予定を前倒しして11月3日のFOMCの直後にスケジュール変更したという点では、日銀らしからぬ政策的意図を持った対応であり、そのこと自体が大きなサプライズで、その結果としてFRBに呼応した金融緩和策が提出されるのではないかというフェイントを市場にかける効果が生じ、円高進行を何となく阻止してしまいました。それはそれで良かったと思います。

日銀の買い取り枠5兆円という設定自体は、FRBの打ち出した6000億ドル(49兆円)に比較すると明らかに金額的に少額ですが、対GDP比でこの両中央銀行の立場をよく見ますと、次のように、米FRB資産残高が15.9%であるのに対して、日銀の総資産はすでに追加緩和前から25.5%にまで膨らんでいます。従いまして、金融緩和の余地は、日銀には少なく、FRBには比較的まだ余裕があるという解釈をすれば、両者の緩和姿勢の強弱の差異は理由付けが十分できるとも考えられます。

■FRBの資産規模と追加緩和額
①米国GDP 14.7兆ドル(2010年第3四半期)
②米FRB資産規模 2.34兆ドル(2010年10月末)
③対GDP・FRB資産割合②/①×100=15.9%
④追加緩和額 6000億ドル(49兆円)
⑤追加緩和後の対GDP・FRB資産割合(②+④)/①×100=20.0%

■日銀の資産規模と追加緩和額
⑥日本GDP 476.6兆円(6兆ドル)(名目値、2010年第2四半期)
⑦日本銀行資産規模 121.4兆円(1.5兆ドル)(2010.10.31)
⑧対GDP・日銀資産割合 25.5%
⑨追加緩和額 5兆円(617億ドル)
⑩追加緩和後の対GDP・日銀資産割合 26.5%
(1ドル=81円とした)

ただし、ETFの買取額をその市場規模(9月末の市場規模は合計2.3兆円程度)で判断するというのは誤認だと思いますし、J-REIT買取りも「AA格」以上の個別REIT(9月末の市場規模は1.6兆円程度)に限るという方法にも疑問がないわけではありません。

株式のETFは、資金が流入すればその資金が株式市場に流れますので、金額規模的には、例えばTOPIX対象ETFであれば東証上場銘柄の時価総額が考慮対象となるべきものです。東証一部だけで約287兆円の時価総額がありますから、4500億円の買い支えでは規模的な不足感は否定できません。また、J-REITもETFや投信がありますので、それらを購入すれば十分なリスク分散効果があるものと思いますし、むしろその方が、後追い変更の多発する傾向がある確証のない格付けよりも結果的パーフォーマンスは良好となりそうな感じがします。

いずれにしても、株価とリート価格(価額)の下支え効果は十分期待できますので、当室の解釈としては、「底打ち反転」ということで変更ありません。

余談ですが、FRBの追加緩和の金額6000億ドルというのは、直近の米国GDPでもって、直近のFRB資産規模2.34兆ドルに加えて割り算してみますと、上記⑤の通り、ちょうどFRBの緩和後の資産規模がGDPの20%となるように計算されていることが分かります。つまり、バーナンキ議長は日銀の対GDP比の資産規模を考慮しつつ、FRBの追加緩和額を思案しているように見えます。日銀同様にGDPの25%までFRBの資産規模拡大が可能と判断しているのであれば、まだ次の緩和も十分あり得るということになります。

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◆流動性相場色強まる、円高でも日本株は大幅続伸 (2010年 11月 5日 ロイターより抜粋)
「日銀決定会合では上場投資信託(ETF)などの買い入れ概要を決定した。追加緩和はなかったが、一部で懸念されていたような円高進行は限定的であり、日経平均も高値圏を維持している。
株式市場で日経平均は続伸し、10月12日以来となる9600円台を回復した。米連邦準備理事会(FRB)による追加量的緩和策や中間選挙での共和党躍進を好感し米株が大幅高になったことで、東京市場でも幅広い銘柄に買いが先行している。買いの主体は海外勢とみられている。米ダウは4日、2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻直前の水準まで回復し、投資家のリスク許容度が増している。「海外機関投資家から過剰流動性資金が流入している。日経平均はドルベースでみれば年初来高値に接近しており、海外勢にとってパフォーマンスは悪くない状況だ。PERなどのバリュエーション面でも割高感はなく、目先は資金流入が継続する可能性が高い。短期的な下値不安はいったん後退した」(SMBCフレンド証券投資情報部部長の中西文行氏)」
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPJAPAN-18018020101105

◆ETF・REITの買入要領を決定、基金での国債購入開始へ=日銀 (2010年 11月 5日 ロイター)
「決定会合では、10月5日に創設を表明した資産買入基金による購入対象資産のうち、積み残しとなっていた指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の買入基本要領を決定。基金による資産買い入れは、週明けに国債、12月上旬に社債・コマーシャルペーパー(CP)と段階的に拡大し、ETF・J-REITは12月中にも開始する方針だ。

日銀は、早期に基金による資産買い入れを実施するため、定例の金融政策決定会合の日程を前倒しして開催。今回、ETFとJ-REITの買入基本要領などを定めたことで、総額35兆円の資産買入基金の「枠組みが整った」ことになる。日銀では、基金による国債の買い入れを週明けにも開始するとし、「以降、順次、他の資産の買い入れを進めることにより、包括的な金融緩和政策の早期の効果波及を図っていく」とした。

 ETFとJ-REITの買い入れ対象は、ETFが東証株価指数(TOPIX)と日経平均株価(日経225)に連動する商品。対象となるのは9銘柄、9月末の市場規模は合計2.3兆円程度で、ETF市場の9割を占めるという。J-REITは格付けが「AA」格相当以上のうち信用力などに問題がない銘柄で、9月末の市場規模は1.6兆円程度。年間200日以上、取引所で売買が成立し、年間の売買累計額が200億円以上とする流動性基準も設定した。

 ETFとJ-REITともに信託銀行を受託者とし、市場の状況に応じて日銀が定める基準に従って買い入れる。買い入れ価格は原則として、取引所での売買高加重平均価格とする。買い入れ限度額について、ETFは銘柄ごとの時価総額におおむね比例するように設定し、J-REITは各銘柄の発行残高の5%以内で、銘柄ごとの時価総額におおむね比例するように設定する。J-REITの銘柄別残高が5%を超えた場合や、監理・整理銘柄に指定された場合、公開買い付けに応じる場合などは処分する。引当金は、ETF、J-REITともに時価と簿価の差額を計上する。」
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-18022320101105


◆リスク要因は上下バランス、効果・副作用みて基金増額=日銀総裁 (2010年 11月 5日 ロイター)
「日銀の資産買入がFRBの追加措置と比べて規模が小さいとの指摘があることに対しては、日銀が基金で買い入れる指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)は「リスク量を計算すると、米5年国債の13倍に相当する」とし、「(日銀の資産買入は)極めて強い緩和効果を有する。金融政策の表面的な金額で、金融緩和の程度をはかるのは適当でない」と強調した。

 日銀は4-5日の金融政策決定会合で、ETFとJ-REITの買入基本要領を決定。このうちJ-REITの買い入れが500億円程度では小規模との指摘があることに対しては「最終的に損失が発生し、納税者負担を避ける観点から、(購入対象を)格付けAA以上とした」と説明した上で、発行残高や銘柄別の買入限度額などを勘案すると「適正な規模」と指摘。さらに、「中銀が個別性が強く損失が発生する政策に入ると、独立性を持って長い目で政策運営を行っていくことへの信頼性が低下する」とも語った。」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18027520101105
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              (ロイターより)