12月7日発表のオバマ経済対策は11年の米実質GDP成長率を0.5~1.0%幅押し上げる

12月7日にオバマ米大統領が発表した給与税減税など向こう2年間の経済対策は評判が良好なようです。

簡単に言えば、米国では、2009年初めからオバマ政権が続けてきた史上最大の7870億ドル(約66兆円)の景気対策の効果が11年初めにも切れるとして、景気後退懸念が高まっていたわけですが、この心配を払拭する形で、今回上乗せする分が約2200億ドル(約18兆5千億円)、そして「ブッシュ減税」を継続する分も合わせると1兆ドル(約84兆円)規模になることで、「11年の米実質国内総生産(GDP)成長率を0.5~1.0%幅押し上げる可能性がある」(ゴールドマン・サックス)との予測がなされています(※1)。

FRBのQE2(第二次金融緩和)と平仄を合わせて、景気の腰折れを防止する姿勢は相変わらず強力です。米国株は、おそらくはジリ高傾向で2011年6月までは進むことでしょう。

一方で、米国長期金利は上昇傾向にありますが、これはインフレ懸念を中心とした景気回復の別な一面を示す動きですので、特に大きな心配は必要ないものと当室では解釈しています(※2)。むしろ円高の終了を示す動きとして、日本株には歓迎すべき事柄でしょう。

金融を追加緩和しているにも拘らず金利が上昇してしまうという現象は、以前から何度も見られます。マネーの供給が増加して悪性のインフレになったという過去の苦い経験則から、「大きな金融緩和=インフレ」という風な短絡的な市場反応が観察できることがしばしば発生し、困ったものとも言えます。これまでに何度か説明しておりますように、マネー供給が仮に増加しても、それが需要につながらない限り物価は上昇しませんので、インフレは起こりません。米国政府がお金を使い、そのお金をFRBが国債買取りで供給するということで、財政需要と貨幣供給が増加してはいますが、現状では政府は景気の下支えを実施しているだけで、国内の需要不足を補完する役割割合が大半ですから、インフレ「懸念」は存在しても、インフレに直結することはありません。ただ、米国の景気が上向いていることは事実ですので、金利が次第に上昇するのは間違いありませんが、上昇しても緩やかな上昇にとどまるものと思われます。

それにしても、、「インフレ高進の兆しが見えたら、すぐに流動性を吸収する。必要なら15分で金利を上げることも可能」というバーナンキ議長の発言はすごいと思います。

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(以下引用)
◆(※1)米の経済対策、想定外 上乗せ分だけで2千億ドル規模 (2010年12月9日付 asahi.com)
「【ワシントン=尾形聡彦】オバマ米大統領が打ち出した給与税減税など向こう2年間の経済対策は、オバマ政権が上乗せする分が約2200億ドル(約18兆5千億円)に上り、「ブッシュ減税」を継続する分も合わせると1兆ドル(約84兆円)規模になることが7日分かった。当初見込まれていたものより大規模で、米金融界は、経済成長を押し上げると期待を高めている。

「自信を持って言えるのは、この対策が米経済を強化し、景気回復を強める手助けになるということだ」。オバマ米大統領は7日、ホワイトハウスでの記者会見でこう強調した。

大統領は前日6日夜に、米共和党側と超党派で合意したとして、ブッシュ前政権時に導入された所得税減税をすべての所得層で2年間延長すると発表したが、この時点では上乗せ部分の予算規模など詳細には焦点が当たっていなかった。それが一夜明けた7日に次第に判明し、米金融界を驚かせた。

米ホワイトハウスによると、オバマ政権は(1)来年実施する給与税の2%分の減税(1200億ドル)(2)失業保険の13カ月の延長(560億ドル)(3)子育て世帯向けなどの税控除の2年延長(400億ドル)などを上乗せした。追加分の総額は2200億ドルになるという。

米国では、2009年初めからオバマ政権が続けてきた史上最大の7870億ドル(約66兆円)の景気対策の効果が11年初めにも切れるとして、景気後退懸念が高まっていた。オバマ政権は今年9月に公共事業の拡大を中心とする景気対策を提案したが、共和党側の反発で実現困難と、弱気な見方も強まっていた。

こうしたなかで、米金融大手ゴールドマン・サックスは、今回の経済対策について「非常に重要だ。つい2、3カ月前まで、財政政策(の乏しさ)は、11年の経済見通しにとって、主要な下振れリスクの一つだったが、今回の対策は前向きだ」とさっそく評価。11年の米実質国内総生産(GDP)成長率を0.5~1.0%幅押し上げる可能性があるとの見通しを示した。

JPモルガンチェースも今回の対策を「第2次景気対策」と位置づけ、11年上半期の経済見通しが改善するとリポート。

BNPパリバのエコノミストのブリクリン・ドワイヤー氏は7日、「(ブッシュ減税分も合わせると)計1兆ドルに上る」と今後2年の経済対策の大規模さを指摘。11年のGDP成長率を0.3%幅押し上げると予測した。

ただ、大規模対策の実施は、財政赤字の拡大をもたらす恐れがある。JPモルガンは、11会計年度の財政赤字は、従来見通しの1.2兆ドルから過去最大規模に当たる「1.5兆ドル」に膨れあがる、と予測している。」
(以上引用)
http://www.asahi.com/business/update/1208/TKY201012080514_01.html

(以下引用)
◆(※2)米長期金利の10年物米国債利回りが半年ぶり高水準(2010年 12月 8日付 ロイターより)

「[東京 8日 ロイター] 米長期金利の指標となる10年物米国債利回りが3.25%と半年ぶりの高水準に上昇した。バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が5日に量的緩和第2弾(QE2)の拡大も視野に入れている事を示唆した直後の利回りの高騰で、金融・証券市場は不安定さを増している。

米政治・経済界からは、「物価安定」と「雇用最大化」というFRBの「デュアル・マンデート(2つの使命)」を、物価安定のみに限定すべきとの意見も出てきた。 

米10年国債利回りは8日の東京市場で、一時3.2550%付近まで上昇し、6月以来半年ぶりの高水準に達した。米長期金利の上昇を受け、10年物日本国債利回りも1.245%まで上昇し、半年ぶり高水準となった。 

米国の長期金利は、8月にバーナンキ議長がジャクソンホールでの公演でQE2を示唆したあと、低下を続けていたが、11月3日にQE2の実施を宣言して以降は、むしろ上昇傾向にあり、5日のバーナンキ発言の金利押し下げ効果も長続きしなかった。 

<FRBの使命を1つに>

FRBは約100年前に、マネーサプライのコントロールを通して、物価の安定を維持するという任務を帯びた、独立した中央銀行として設立された。しかし、1970年代に連邦議会は、物価安定に加え「雇用の最大化」という使命をFRBに課した。FRBは後付けのミッションである「雇用の最大化」を目指し、強力な金融緩和を推し進めている。   

米議会財政委員会メンバーのポール・ライアン共和党議員とスタンフォード大学教授で元米財務次官のジョン・テイラー氏は、インベスターズ・ドット・コムに寄稿し、「米連邦準備理事会(FRB)が6000億ドルの追加国債購入を表明したことは、抗議の嵐を招いているが、これを機に中央銀行が果たすべき『まっとうな役割』について議論するべきだ」と主張した。  

両者は、FRBが健全な金融政策に再び焦点を合わせることを可能にし、他の国家目的を達成する政策について、意見が割れがちな政治的ディベートに、FRBを巻き込まないように、現在の「デュアル・マンデート」からFRBを解き放ち、明確な報告義務と説明責任を伴う「長期的な物価の安定」という単一の使命に限定するべきだ、との見解を明らかにした。  

<QE1、QE2>

FRBを含む量的緩和論者によると、企業は商品の付加価値低下に見合った賃金カットを実施出来ず、コスト削減が出来ないので雇用を増やせない。そこで、金融緩和という一種の補助金を企業に与えることで、企業は投資を再開し、雇用が増え、FRBは「雇用の最大化」というマンデートが達成できることになる。  

バーナンキFRB議長は5日、異例のテレビ・インタビューに応え、量的緩和にもかかわらず11月に9.8%に上昇した失業率について、より「正常な」水準である5―6%に下がるには4―5年かかるとの見方を示し、米景気回復が思わしくなく、失業が高水準のまま改善しない場合には、6000億ドルを上回る米国債の買い入れを実施することを示唆した。 

「債券市場では、QE2が完結しないまま中断するか、来年半ば以降は継続されないのではないかという需給不安に加え、FRBのプリンティング・マネーによる国債買い入れが、いずれインフレを高めるという懸念に焦点を当てているようだ」と東海東京証券のチーフエコノミスト、斎藤満氏は言う。 バーナンキ議長は5日、上記のコメントに加え、「インフレ高進の兆しが見えたら、すぐに流動性を吸収する。必要なら15分で金利を上げることも可能」とし、インフレ懸念からくる長期金利の上昇に「口先介入」した格好だ。

これらは、「夏にジャクソンホールで資産買い入れ、インフレ期待醸成による実質金利の引き下げ論を展開した当時と比べると、かなりトーンダウンしている」と斎藤氏は言う。  

しかし「QE2によるリフレ策を続ければ、自ずと長期金利に上昇圧力がかかる。しかも、この30年間の金利低下で足もとの約3%という長期金利水準は、この1年で4%強の名目成長率を大きく下回っていて、何らかのきっかけで、反転上昇しやすい」と斉藤氏は警告する。 

テイラー教授とライアン議員は、「QE1は経済を立ち直らせることに失敗した。QE2についても、前代未聞のバランスシート拡大のあと、FRBがいつ、どのように、バランスシートを圧縮するのか、FRB自身が分かっていないのではないか、との疑念がもとで、経済を一段と不安定にしている」と分析する。  

「もし、資産を購入する為のマネーが、適切かつ予測可能な方法で引き揚げられなければ、FRBは高インフレとドルの下落という危険を冒すことになる」と両氏は述べ、現在進行する長期金利上昇は、市場からの警告であるとした。 
FRBが2日発表した資産構成資料によると、貸借対照表(バランスシート)の規模は、1日時点で2兆3294億ドルだった。米国債の保有高が大幅に増えて住宅ローン担保証券(MBS)や政府機関債の減少を相殺し全体水準を押し上げた。同バランスシートは2008年9月までは1兆ドルを下回っていた。  
(ロイター 森佳子記者;編集 石田仁志)」
(以上引用)
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-18537620101208?sp=true

画像
               (米国10年国債金利5年チャート:ヤフーファイナンスより引用)