「投資の大原則」/世界一やさしい投資の勧め(バートン・マルキール、チャールズ・エリス著)

■「投資の大原則」の要点
マルキール博士の最新著作ということで、2010年11月に発売された「投資の大原則」を当室管理人も、さっそく購入して読んでみました(※1)。読んでしまうと要領よく投資分野をカバーしてあり、インデックス・ファンド万能のような考え方に上手く引きずり込まれて行ってしまいそうな危険を感じます。

本書の要点は次の通りです。

①投資は売買のタイミングよりもいつから開始するかの方が重要で、若いうちから始めるほど複利で大きく増えて有利。
②住宅ローンを借りて家を買うことは、家族のためにも、生活の質を上げるためにも賢明な投資。
③インデックス・ファンドは10年以上にわたって2/3以上のアクティブ投信にいつも勝っている。
④プロのマネージャーは全体として、自分の運用手数料と売買コストの分だけ市場には勝てなくなる。
⑤バフェットでさえもまた、「ほとんどの投資家はインデックス・ファンドに投資するのがよい」と言っている。

⑥インデックス・ファンドの優位性としては、(a)仕組みが単純、(b)コストが安い、(c)今後の予想が立て易い、ということ。
⑦インデックス・ファンドは最も平凡な運用だが、実質的に平均以上を保証する勝者のゲーム。
⑧資産の大半はインデックスに近い形に分散投資し、そのうえで、いくつか確信の持てる銘柄を加えるという手法もよい。ただし、資産の核の部分は、株と債券の広範囲のインデックス・ファンドに分散投資する。
⑨一に分散、ニに分散、三に分散。
⑩優良な債券投資信託は、株式市場が大きな上昇や下落に見舞われたとき、それを相殺するような動きをしてリスクを緩和する。たとえば2008年、深刻な世界的不況が予想されて、アメリカや多くの国々で株価が急落したのとは対照的に、金融当局による景気刺激策としての政策金利引き下げによって、アメリカ国債の価格は上昇した。

⑪インフレが進行するときには、不動産や森林、石油といった、いわゆるコモディティへの投資は、製造業の株式よりインフレヘッジの効果があり、不動産やコモディティに投資することは、長期的に見れば分散投資として有効である。
⑫すべての資産の投資を一つの時期に集中するのではなく、ドルコスト平均法による定期定額投資の方がリスクは抑えられる。
⑬投資対象資産のリバランスによってリターンを高め、リスクを軽減できる。実施は年1回でよい。
⑭専門家の市場予想はほとんど当たらないし、また、マクロ経済の予測は無意味。
⑮チャートを見て将来の株価を予想するのは、星占いのようなものだ。
⑯重要な投資対象は三つ。普通株、債券、不動産(自宅)。

■インデックス・ファンド選好説と当室の立場
以上の内容を当室が判断するに、結局のところ、「市場予測やマクロ経済の予測は無意味だ」ということと、「チャートを見て将来の株価を予想するのは、星占いのようなものだ」という判断が、インデックス・ファンド選好説の重要な根拠であるように思います。その根本にあるのは、すなわち、「マクロ経済政策に対する不信感」でしょう。

その見解とは対極的な立場にあってマクロ経済動向とマクロ経済政策動向を運用判断材料として重視する当室の運用方針から見れば、インデックス・ファンドは成り行き任せの運用放棄と見えてしまい、運用資産のほとんどをインデックス・ファンドにして、そのまま長年放置してしまうことには相当の抵抗感があります。また、確かにチャート判断は、ハズレもありますが、トレンド把握には不可欠ですし、リーマン・ショックのような景気変動の大波には無力でも、通常の小波に対しては十分な判断材料となりますから、星占いよりは役立つものと思います。

実際に当室同様、2009年に強気で買い進まれた方、そして2010年にJ-REITに傾斜投資された方は、現状フトコロがやや暖かくなっているはずです。

もっとも、「投資の大原則」自体も、「資産の大半はインデックスに近い形に分散投資し、そのうえで、いくつか確信の持てる銘柄を加えるという手法もよい」として、部分的アクティブ運用は容認しています。要は程度問題で、インデックス投資家はインデックス・ファンドへの資金配分割合が高い投資家のことであり、アクティブ投資家は、インデックス・ファンドへの資金配分割合が低い投資家という解釈もできます。アクティブ選好度の強い当室とて、インデックス・ファンドへの資金配分がゼロというわけではありませんし、同様に、インデックス投資家といえども、少なからず自己流のアレンジでアクティブ運用部分をポートフォリオの中に組み込んでいるものと思います。

ところで当室は、証券口座を2つ(SBI証券と楽天証券)持っていまして、楽天証券の方はすでに開示しましたように毎月分配型リート投信専用の運用実験口座です。もう1つのSBI証券の口座は、毎月分配型リート投信以外にも個別株などをアクティブ運用している主力口座ですが、運用成績の方は、楽天証券の口座(つまり買いっぱなしの消極的アクティブ口座)の方が、SBI証券の口座(積極的アクティブ口座)を上回っているのが実態です。

すなわち、アクティブ運用するにしても、「投資方針が固まったら実行して後はむやみには動かない」という鈍重な消極的スタンスの方が、どうも運用効率が良さそうに思います。

そうしてみますと、今さらながら、「投資配分の判断こそが運用成績を決める要因のほとんど全て」ということになりそうです。

さて、2011年は無難に発進し、日本株の強気予想が多いようです。米国の景気回復、日銀のETF買い取り、外人買い越し(※2)等の支援材料があり、日本株インデックス・ファンドに傾斜投資するのも適切な選択かも知れません。


(※1)「投資の大原則」(バートン・マルキール、チャールズ・エリス著、日本経済新聞出版社刊 2010.11.22)

(※2)外国人9週連続買い越し、12月第5週、日本株、業績回復期待で。(2011/01/08, 日本経済新聞 朝刊)
「株式市場で海外投資家(外国人)の日本株買いが続いている。海外投資家は昨年12月第5週(27~30日)まで9週連続で日本株を買い越した。米国の金融緩和や日本企業の業績回復期待などを背景に投資家心理が好転し、他の先進国に比べ出遅れ感のある日本株に投資資金が流れ込んだ。海外投資家は年間でも2年連続で買い越した。一方、個人投資家は9週連続の売り越しと動きが分かれた。
東京証券取引所が7日発表した昨年12月第5週の投資主体別売買動向(東京・大阪・名古屋3市場、1部・2部などの合計)によると、海外投資家は518億円の買い越しで、前の週(284億円)より約8割増えた。9週連続は2009年11月から10年1月まで以来。
昨年1年間でみると、海外投資家は日本株を3兆2104億円買い越した。買い越しは2年連続で、前年(1兆7775億円)より約8割増加。日経平均株価が1万8000円台まで上昇した07年以来の高水準だった。月間ベースでは、4カ月連続で買い越した。」(以上引用)

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               (日経平均1年間:SBI証券による)