S&Pによる日本国債格下げ「AA」→「AA-」は大勢に影響なし

■格下げはすでに経験済みのAA-で影響なし
S&Pが1月27日、日本の外貨建て・自国通貨建ての長期ソブリン格付けをAAからAA-に引き下げました(※1)。

S&Pとムーディーズの格付けは、ことソブリン債に関してやや偏向している点、すでに以前説明した通りです。

国債のリスク度合いから言えば、外貨準備が多い上に経常収支黒字国の日本よりも、恒常的な経常収支赤字国である米国の方が償還リスク大、と判断せざるを得ないのが自然の道理です。

ただし、米国には基軸通貨としてのドル発行権がありますので、その価値をどう評価するかは難しい問題ですし、いざという場合に備えての金保有高も米国がダントツ、輸出可能な食糧生産余力の戦略的価値や国内資源の埋蔵量なども考慮するとなると、単に財政的な問題だけでのソブリン債格付けは困難な一面はあります。

マーケットとしては、そのあたりの日米の実情は十分認識していますので、「AA」ゾーンの中での1ノッチの格下げ変更では、株価や金利に大きな影響はありません。

影響があるとすれば為替相場に対してであり、現在の水準からの円高の進行は、ますます困難になったということになるものと思います。格付けの低下は、円を買い進むという動きに対しては、明らかに抑制効果が働きます。米国としては、まずまずの景気回復状況が確認出来つつありますので、これ以上の極端なドル安は望んでいないはずですから、日本円が一方的に上昇する動きを牽制しているとも解釈できます。

したがいまして、幾分安心して外貨建て投信を買い進むことが出来る下地が一つ出来たこととなります。

■ポートフォリオのポジション調整
1月28日の日本株および米国株は、若干の下げとなりましたが、米国経済と米国株が堅調である以上、ここは基本的に強気対応で臨んで大丈夫だと思います。1月13日以降、当ブログで微妙な言い回しながら、ポジション調整を表明しておきました。当室と一緒に或る程度の利確(利益確定)を実施して現金ポジションを高めた方は、目先の調整過程の中で、チャートを眺めながら少しずつ買い進むという方針でよろしいかと思います。

以前、山崎元さんが、「資金的余裕があるのに少しずつ買い進むのは運用効率が悪い」という内容の発言をされていた記憶がありますが、当室のやり方としては、「売りは一気に、買いは徐々に」というのが基本です。株を一気買いすると、見込み違いで下げた場合に対応できなくなります。

山崎さんはドルコスト平均買いが嫌いなので、期間を空けた分割買いを好まないのだと思いますが、当室の30年来の経験からすれば、投資成果は分割仕込みの場合の方が良好です。また逆に、売る場合は、分割売りよりも一気売り(しかも成り行き売り)の方が成果が良好であり、たまに当室も2度売りにする場合もありますが、2度目の方が株価が下げてしまっているケースが大半です。売る時は思い切り良く1回で売り切り、後は振り返らないで次の作戦を思案するというのがベストであると思います。

なお、ムーディーズは1月27日に米国債についてネガティブ警告を発してはいますが、マーケットは無反応でした(※2)。2年先のことなど分かるはずも無く、実際は格付けを下げるつもりなどないのではないかと見られているのは明らかです。

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 (NYダウ6ヶ月チャート:SBI証券による)
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 (日経平均6ヶ月チャート:SBI証券による)
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 (ドル円相場6ヶ月チャート:SBI証券による)
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 (10年もの日本国債金利6ヶ月:ゴールデンチャート社による)

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◆(※1)日本国債、ダブルAマイナスに格下げ S&P (2011/1/27 〔日経QUICKニュース〕)

「米格付会社スタンダード&プアーズ(S&P)は27日、日本の国債格付けを「ダブルA」から「ダブルAマイナス」に格下げしたと発表した。S&Pは日本の財政赤字の国内総生産(GDP)に対する比率が今後さらに悪化し、大規模な財政再建策を実施しない限り、2020年より前に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の均衡を達成することはできないとしている。あわせて、長引くも日本の債務問題をさらに深刻なものにしているとの認識を示した。短期国債格付けは「A―1+」で据え置いた。格付け見通しは「安定的」としている。
S&Pは2002年4月15日に日本国債の格付けをダブルAからダブルAマイナスに格下げしている。07年4月23日にはダブルAマイナスからダブルAに格上げしていた。2010年1月26日には格付け見通しを「安定的」から「格下げ方向で見直す」と発表していた。」

◆〔日本国債格下げ〕市場に「覚悟」、円安・債券安とも短時間で一服(2011年 01月 27日  ロイターより)

「[東京 27日 ロイター] 27日夕方の東京市場は、S&Pが日本国債格下げを発表した直後、円安と円債安が進んだが、短時間で動きも小幅だった。タイミングにやや意外感はあったが、日本の財政事情は広く知られており、マーケットはある種の覚悟を持って受け止めたためだ。
今回、S&Pが格下げを決めた理由の一つは国内政治への不信だ。ねじれ国会が続くなかで予算案などがスムーズに通るか疑問視している。「民主党政権は債務問題に対する一貫した戦略が欠けている」と指摘されるなかで、市場は今回の格下げが警鐘となり、菅政権が財政再建に本腰を入れるかどうかを注目している。」
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPnTK051712820110127

◆日経平均反落、日本国債格下げで海外勢が銀行株売り(2011年 01月 28日 ロイターより)

「[東京 28日 ロイター] 前場の東京株式市場で日経平均は反落した。前日の日本国債格下げの影響は限定的とみられているものの、海外勢が銀行株を中心に売りを出していることから、全般的に弱含み。
日米の企業業績が好調で景気回復が持続するとの見方や、足元の円安でサポートされている。コマツなど、前日引け後に好業績を発表した銘柄が選好された。
東証1部騰落数は、値上がり247銘柄に対し値下がり1302銘柄、変わらずが115銘柄だった。東証1部売買代金は7076億円。」http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19258820110128


◆日本国債格下げこうみる:長期金利上昇には懐疑的=みずほ証券 高田氏(2011年 01月 27日  ロイターより)

「<みずほ証券 チーフストラテジスト 高田創氏>
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、日本の長期国債格付けを現在のAAからAA-に引き下げたのは、「財政状況の悪化」を理由にしている。これまでの1年は、世界で“ソブリンワールドカップ”のような状態だったが、市場での評価は、財政赤字というより経常収支の状況に左右されていた。
ポルトガルやイタリア、ギリシャ、スペインを指すPIGS問題では、財政赤字の問題であると同時に、より悪影響を及ぼしていたのは経常収支の赤字だった。

日本の財政状況は、潜在的な問題を内包している。しかし、今回の格下げにより、長期金利の指標10年債利回りが上昇基調をたどるかどうかは懐疑的だ。2002年にシングルAまで格下げされた際には、逆に長期金利は低下した。長期金利は年度末にかけ1%ちょうどから1.4%前後で推移するのではないか。」
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPnTK051691620110127

◆(※2)ムーディーズ、米国の格付け見通し悪化の可能性を警告(2011年 01月 28日 ロイターより)

「[ニューヨーク 27日 ロイター] 大手格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは27日、米国の格付け見通しを今後2年以内にネガティブにする可能性が高まっているとの見解を示した。 
ムーディーズは昨年12月、ブッシュ減税が延長された場合、2年以内に米国の格付け見通しが「ネガティブ」になる可能性が高まるとの見方を示していた。27日の米債券市場はムーディーズのリポートには反応薄で、指標の10年債は発表前の6/32高からほぼ動かなかった。利回りは3.39%。」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19257620110128?feedType=RSS&pageNumber=2&virtualBrandChannel=0

◆日本国債の格付け推移(2011/01/30 日経新聞による)
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