欧州の金融不安にも注意

米国経済は比較的順調な回復を見せ、バフェット氏も楽観的な見方を示しているようです(※2)ので、やや安心感はありますが、一方で、欧州経済についてはやや不安な印象があります。

その理由は次の通りです。

①ポルトガルの10年物国債の利回りが7・5%超と上昇していること(※1)。
②2011年から開始される欧州諸国の一斉財政引き締め。
③ユーロ圏各行の「ヘアカット(国債元本の削減)」に伴う損失と信用不安の可能性。
④2011年はユーロ発足以来最大の国債借り換え年。
⑤ドイツ国民の49%がマルク復活支持で、ユーロ存続支持は41%。
⑥「BIGPIS」のユーロ離脱の可能性。
 ①は日経新聞、②~⑥は雑誌「選択」(2011.3)による。

②~⑥の「選択」の記事は、ヘッジファンドの所見を引用している部分が多いので、幾分割り引いて考える必要はあるものの、ことの本質としては十分あり得る事柄ですので、後は可能性の大小と投資家の判断ということになります。

その一端を裏付ける情報が、①の日経新聞の記事です(詳細は下記の(※1))。

ところで、2010年末現在、ソロスとポールソンは、金ETFを処分していませんでしたし、ソロス・ファンドに至っては買い増しの動きが見られました。彼らが予測しているのは、おそらくは欧州経済の混乱なのだと思われます。バフェット氏の企業買収の投資話は、長期投資が同氏の基本スタンスですので、そうしたヘッジファンド的なものではないと思いますが、何らかの値下がりチャンス(極力安く買うのが信条のはずですので)を狙っているものとも思えます。

マクロ経済動向を重視する当室としては、欧州各国の緊縮財政、これによる景気足踏みが一番の注目点であり、不安事項です。その欧州情勢については、2月27日の日経新聞に概略次の内容が記載されています。

●英国・・・2014年度に向けて歳出を年810億ポンド(約11億円)減らす財政再建策を打ち出した。付加価値税を20%へ2.5%引き上げた。
●ドイツ・・・政権公約に掲げていた所得減税を凍結すると宣言し、緊縮財政にカジを切った。今年2011年1月には、国内空港を利用するすべての旅行客を対象にした「航空税」を導入した。
●スペイン・・・公務員の人件費削減で2011年度予算の歳出を15%減らし、高所得者向けの所得税を引き上げる。
●ポルトガル・・・緊縮予算を何とか成立させ、財政赤字をGDP比4.6%まで引き下げる考え。付加価値税の増税や失業手当の減額に踏み込む。

こうした財政面の引き締めの動きと合わせて、3月3日にECBのトリシェ総裁はインフレ抑制のため、4月からの政策金利の引き上げ可能性を示唆しました(※3)。実際に政策金利が引き上げられるかは微妙なところですが、財政再建意識とともにインフレに対する警戒感が、欧州各国は相当に強いため、本当に引き上げるかも知れません。ただし、上げても0.25%程度の小幅なものとなるものと思いますので、実体経済への影響度は軽微でしょう。

以上、米国経済の堅調さに裏打ちされたバフェット氏の楽観論、そして欧州の緊縮政策という相対立するファクターが出てきました。両者を大雑把に合成して考えますと、株価については、横ばいか、やや上昇、というレベルのように思います。事実、米国株は現在のところ調整の動きとなっています。

リビアの内乱も継続していますし、油断のないように全体をウォッチする必要があるでしょうから、全額投資ではなくて、すこし資金的ゆとりを残しておく方が賢明な気がします。

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 (NYダウ1年間:SBI証券より引用)

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[以下、引用]
◆(※1)ポルトガル国債、利回り最高水準、償還資金調達に不安再燃。(2011/02/21, 日本経済新聞 朝刊)

「欧州国債市場でポルトガル通貨ユーロ導入後の最も高い水準に上昇(価格は下落)している。4、6月に控える既発債の償還資金を自力で調達できるかどうか、市場の不安感が高まっているため。緊縮財政や増税による景気悪化も警戒されている。
 10年物国債利回りは18日に前日比0・1%弱上昇。1月末に比べ0・5%高くなった。期限が短い国債への売り圧力も強く、5年債は7・1%超とユーロ導入後で最も高くなった。3年債も6・4%前後と昨年5月以来の水準に急上昇している。
 きっかけは7日の5年債(35億ユーロ=約4千億円)の発行。60億ユーロの応募があり表面上は好調だったが、「最終的な買い手は短期のヘッジファンドばかりで、長期投資家の買い需要は乏しい」(欧州債券トレーダー)との情報が伝わった。
 ポルトガルは4月と6月に合計で約94億ユーロ(約1兆700億円)の国債償還を控える。これまで中国への私募発行を加え半額程度は手当てできたとみられているが、調達条件が悪化するなかで4月までに調達できるか市場は不安視している。(ロンドン=松崎雄典)」

◆(※2)バフェット氏の手紙、市場の追い風となる可能性も (2011年 02月 28日付けロイターより)

「バフェット氏は株主への手紙で、米国の経済や国民性を高く評価。市場関係者は、特にここ数年の手紙と比べ、驚くほど楽観論が目立つと指摘している。
バフェット氏は株主への手紙で「資金は常にチャンスの方に流れていく。米国には数多くのチャンスがある」と指摘。
「悲観的な予測ばかりする人は、極めて重要な点、確かな点を見逃している。人類はまだまだ潜在能力を使い切っていない。潜在能力を解き放つ米国のシステムは健在であり有効だ」と述べた。
バフェット氏は、住宅市場の回復が「およそ1年以内」に始まるとも予想。「米国の全盛期が待っている」とも指摘した。」

◆(※3)トリシェECB総裁:4月利上げの可能性示唆、「強い警戒」に言及 (2) (2011年3月3日 ブルームバーグ)
「3月3日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は3日、インフレ圧力に対抗するため4月にも利上げに踏み切る可能性を示唆した。その場合はほぼ3年ぶりのECB利上げとなる。
同総裁は政策決定後の記者会見で、「次回の政策委員会での利上げはあり得る」と述べた。ECBはこの日、政策金利を過去最低の1%で据え置いた。トリシェ総裁はインフレについて「強い警戒が必要だ」との考えを示した。
トリシェ総裁はECBの四半期経済予測も発表した。今年と来年の成長率予想レンジの下限が切り上げられたほか、インフレ予想は上方修正された。今年の消費者物価は2-2.6%上昇と予想されている。昨年12月の時点では1.3-2.3%と見込まれていた。」

[以上 引用]