貿易黒字を維持し、最終的には外国との物々交換も想定が必要

東北関東大震災以降、当ブログへのアクセス数が半減しています。内容が特殊だということもありまして、アクセス数の多寡はそれほど気にしていませんが、半減しているとなりますと、株式市場や資産運用、あるいは経済活動水準一般に対する皆さんのエネルギー低下の方を心配してしまいます。

このところ日本の株価が低迷して含み損の生じている投資家が多数いるであろうこと、および被災者の存在と対比して、いわゆる「お金儲け」に関する罪悪感のようなものがあり、個人が投資面で萎縮している面はあるものと思いますが、すでに説明しましたように、普通に経済活動を行って経済活動水準を低下させないことが肝心ですし、それが一番の被災地支援となります。もどかしいようですが、直接現地の救済に関われる人以外は、現地への経済的復興波及効果をじっと待つ以外にはありません。

さて、前回はドル円相場の動向を通じて、日本経済の需給構造の方向性を若干探る展開でした。様々な異論反論はあることと承知していますが、「物資の輸入を確保する意味からの貿易黒字維持」という前回の命題について、週刊東洋経済に野口悠紀雄教授が正反対の論説を提示されていましたので要点を紹介しておきます。

◆野口教授の主張(※1)
①「生産拠点が海外に移って日本の輸出が減ると、国際収支が悪化する」という心配は時代遅れである。
②すでに2005年ごろから経常収支黒字の半分以上は所得収支の黒字で実現している。
③外国からものが買えなくなると心配するならば、輸出を増やそうとするのではなく、対外資産の運用効率を高めて利回りを上昇させ、所得収支の黒字を増加させるべきだ。
④悪化する客観的条件下で国内生産に固執すればじり貧状態に陥る。
⑤海外生産拠点で効率のよい生産を行い、その利益を日本に送金することこそが、日本の目指すべき方向である。
⑥生産拠点の海外移転で生じる国内の雇用減少は、国内にサービス産業を成長させることで解決できる。

確かに理屈の上では野口教授の主張の通りであり、反論の余地は少ないように思いますが、どこか無理のある印象が少しあるのも事実です。サービス産業として育成を図るべき対象業務内容や具体的方法も今ひとつ明確ではありません。

経済関係、国際取引関係が正常な範囲内で、ルールが遵守されている秩序立った情勢下にあれば、海外生産で稼いだ利益で物品原材料輸入を確保するという考え方で良いと思います。しかしながら、今後どのような無秩序情勢への変化が待ち受けているかは予想できません。

事実、、第二次大戦中の物資不足の情勢下で、どのようなことが起きたか、あるいは今回の東北関東大震災下の一部で何が起きたであろうかと言いますと、物々交換です。貨幣はたとえ金貨であっても、究極の状況下では役立ちません。究極の状況下と言える先の大戦中は、家財道具や衣類などと交換で必要な食料品を農家から「購入」していました。

その場合の「農家」が、この先「食糧輸出国」に置き換わらないという保障はありませんから、物々交換に対応できる日本国としての体制整備が究極の国家安全保障対策であり、そのためには日本の得意とする工業製品生産体制は維持しておく必要があります。混乱により、進出先の国情によっては、日本の現地資本が現地国に接収されることもあり得ます。日本の食糧自給率の低さについても、輸入ストップという最悪の事態を想定して対策を講じておく必要は十分にあると思います。

野口先生は、「一時的混乱があっても、食糧の輸出側もそれを売らなければ生活できないから、市場が落ち着けば輸入の可能な状態にやがて戻る」という発想だったと記憶していますが、輸入食品なしでそれほど長期間生活出来るわけではないので、輸入停止が現実に発生すれば、解決するのは口で言うほど簡単ではないでしょう。

また、「脱工業化で現状以上にサービス産業中心の産業構造に転換すべし」という主張は、口で言うのは簡単ですが、実現にはやや無理があると感じますし、それよりは農業の工場生産化や、バイオ技術を応用したリサイクル・エネルギー生産などによる輸出品目増強に注力する方が日本的ではないでしょうか。ドラえもんではありませんが、食用プランクトンの製造販売(もちろん、カニカマのような適切な加工と味付けが必要。)というような、資源と土地面積に限りのある日本でも、ありふれた物質から工場管理で生産が出来そうな産業発想の方が、無理にサービス産業を創造するよりは対応が容易ではないかと思料します。

基本的に、食糧とエネルギーの自給率を高め、輸出可能な製品あるいは商品を多数確保し、貿易黒字を維持する国策は必要であると考えます。

◆(※1)週刊東洋経済 2011.4.23による。