国家による「GDP株」発行と永久国債/ロバート・シラー教授

■ロバート・シラー教授による「トリルズ」(GDP株)発行の提案

米国イェール大学経済学部のシラー教授が、今週の週刊東洋経済の中で、「トリルズ」(GDP株)という面白い提案をしていましたので、紹介しておきたいと思います。
掲載文の要点としては、次の通りです。

①世界銀行の最近の研究では、日本の3つの災害(地震、津波、原発)による損害額は、人的被害を除いて最終的に2350億ドルと推定され、これは日本の2010年のGDPの約4%に相当する。

②しかしながら、この3大被害も、1990年以降の失われた20年の経済的損失に比較すれば被害額は少ない。80年代の日本の1人当たりGDPの平均伸び率は3.9%だったが、90年以降は1.4%にまで低下している。もし90年以降も80年代と同率で成長が続いていたならば、日本のGDPは現在よりも60%大きくなっていたはずで、その「経済的損失」は数兆ドルに及ぶ。

③自国のGDPや同様の経済指標にリンクした国債を発行していれば、日本はGDPの変動リスクを回避できたはずだ。最も簡単なのは「GDP株」である。

④それは「トリルズ」という名称で、GDPの1兆分の1に相当する額を毎年配当として自国通貨で支払うというものだ。

⑤日本政府が国債の変わりにトリルズを発行し、世界の投資家から得た資金で財政赤字の大半を賄っていれば、赤字の比率はかなり低くなっていた可能性がある。

(以上、週刊東洋経済2011.6.18号より)

■シラー教授の発想は大胆で面白いが欠点もある
シラー教授の提案は、大胆で大変面白いとは思いますが、「GDP株」は「株式」とはいえ、株主議決権が付与されていないとするならば、普通株ではなくて優先株ということになりますし、そうであるならば、以前当室で検討しました永久国債のような究極の劣後債とそれほど意味合いは変わりないこととなります。

「GDP株」のポイントは、①返済不要の資金調達であることと、②配当がGDP成長に連動して増額されること、の2点です。しかしながら、「株式」と称してしまいますと、株主議決権の付与や、優先株であるならば普通株への転換権などがどうなるのかとか、将来的に困りそうな課題が発生します。多分、相当に強引で口うるさい近隣もしくはその他の外国政府が買い占めて、軍事力を背景に議決権を要求して来たような場合は、対応が困難なのではないでしょうか。

また、配当金額がGDPの成長とともに増加するのでは、将来的に負担が大きくなってしまいそうですし、はたまた逆に最近の日本のように名目GDPがマイナス成長ですと、購入者から苦情が来てしまいそうです。

その点、永久国債であれば、議決権や転換権の話は初めから該当しませんので、「返済しないのは最初から双方の了解事項だ」という主張をするだけでこと足ります。また、コスト面も相応のスプレッドを上乗せする永久国債の方が、「GDP株」よりは、将来負担が軽そうです。

さらに言えば、永久国債の場合は、スプレッドがやや小さくて利回りは低くても、かつての割引金融債のように「無記名」扱いとすれば、贈与・相続対策として購入者が続出するかも知れません。それは富裕層への実質的な「資産課税」に他ならず、むしろ好都合とも言えましょう。

当室としては、財政赤字補填策として、消費税増税の前に、やはり無記名のものも含めて永久国債発行を再度提案しておきたいと思います。もっとも、この程度の事柄は、財務省キャリアは百も承知であり、言い出す機会を伺っているだけなのかも知れません。ただ、もうそろそろ言い出さないと駄目なような気がします。

[ 参考 ]
永久国債発行の是非(1) http://toshukou.at.webry.info/200907/article_2.html
永久国債発行の是非(2) http://toshukou.at.webry.info/200907/article_3.html
永久国債発行の是非(3) http://toshukou.at.webry.info/200907/article_4.html