市場が怖がる米国の「財政の崖」/日経新聞WEB刊より

米国の財政事情によるマーケットの波乱要因として、日経新聞WEB刊に警鐘記事がありましたので、転載しておきたいと思います。内容の要点は次の通りです。

①米株式市場には「5月に売り抜けろ」という相場格言がある。
②米国内では、年末に訪れる「財政の崖」と呼ばれる問題を警戒する声が次第に高まっている。
③その理由の一つは、ブッシュ政権時代からの大型減税の失効2000億ドル強。
④次に、2013年からの歳出自動的削減1500億ドル。
⑤そして、オバマ政権による医療保険税の増税。
⑥米議会予算局(CBO)の見通しを参考に、国内総生産(GDP)比で3.5%相当の財政緊縮というのが議論の1つの足場になっている。
⑦これらが同時に起き、さらに年末に再び米連邦債務が上限に達する可能性がある。
⑦しかも、米大統領選が11月であるため、年末ぎりぎりにならないとどうなるかわからない状態が続くことになる。
⑧FRBが2014年まで実質ゼロ金利を維持する背景にも、この問題が隠れている。


結構嫌なファクターが重なっておりまして、米国経済までもが要注意状態にあることが分かります。ただし、米国は基本的に頭の良い行動力のある国ですので、あらかじめマイナス要因が判明しているのに政策的に無策ということは考えにくく、少なくとも中立要因程度への転換は何とかギリギリでも上手に行うものと思います。


[以下、引用]
◆市場が怖がる米国の「財政の崖」/日経新聞WEB刊より
米州総局編集委員 藤田和明公開日時(1/2ページ) 2012/4/29

米株式市場には「5月に売り抜けろ」という相場格言がある。特に過去2年は、まさにその格言が生きた。今年もここまでの半年は株価は堅調。主要国の金融緩和策に加え、米企業の業績も予想を上回る内容が続いている。ただ、先行きもこの調子で株高が持続するかどうか。くすぶり続ける欧州債務問題に加え、米国内では、年末に訪れる「財政の崖」と呼ばれる問題を警戒する声が次第に高まっている。

今年末を境に、米国は財政の断絶が起きる可能性がある。大きくは3つの要因がある。1つはブッシュ政権時代からの大型減税の失効。第2に、超党派委員会で今後の財政再建策を具体的に作成できなければ、2013年から歳出が自動的に削減される。3つめはオバマ政権の医療改革が動きだし、が始まる。

4年に1度の米大統領選は11月だ。議会も改選される。その後、年末まではわずか2カ月の間に、減税策の延長などの政治的な手当てができなければ、「自動的に緊縮財政が動き出す仕組みが組み込まれている」(みずほ総合研究所の安井明彦ニューヨーク事務所長)わけだ。

財政の崖については、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が繰り返し懸念を表明。2014年まで実質ゼロ金利を維持する背景にも、この問題が隠れている。ただ実際の影響度とはいうと、エコノミストの百家争鳴状態だ。米議会予算局(CBO)の見通しを参考に、国内総生産(GDP)比で3.5%相当の財政緊縮というのが議論の1つの足場になっているが、各エコノミストの視点や調整を加えると、低い場合で1%、高いと5%という数値まであり、バラバラだ。

バンクオブアメリカ・メリルリンチのチーフ・エコノミスト、イーサン・ハリス氏は、GDP比で4%を超えると深刻に見る。同氏によれば、緊縮のチャネルは6つ。ブッシュ減税の失効で2000億ドル強、自動的な歳出削減が1500億ドル。これに医療改革に伴う増税、失業給付の失効、給与税減税の失効、その他の税控除が加わってくるという。

これが同時に起き、しかも年末に再び米連邦債務が上限に達する可能性がある。「選挙が終わるまで両党派は激しく対立するだろうし、選挙後のレームダック化した議会が、いずれも重要な政策項目をわずか2カ月で決定できるか極めて疑問だ。異例の不透明さが待ち受けている」(ハリス氏)。

モルガン・スタンレーはさらに厳しく、GDP比で最大5%という見立てだ。2月に成立した中間層への税控除や、暦年と財政年度の差の部分などを加味すれば、もっと膨らむという。

ドイツ証券のように「影響は1%に満たない」との楽観派もいる。医療改革に伴う増税は実際は小さく、投資不動産に絡む部分など増税効果に数えないで済むものも多いと見るからだ。

年率2~3%ペースの低成長が続く米経済。もし、メリルやモルガンの指摘するような4~5%規模で財政緊縮に突入する事態になれば、景気後退に陥りかねない。そうなってしまう可能性を完全には排除できない不透明さが漂いつつあるのだ。

もちろん、モルガン・スタンレーも「影響がすべて出ないように、最後には一定の回避策へ動くだろう」とし、実質的には1.5%規模で済むとの見立てにしている。「とりあえずは3~6カ月の延長策をとるのでは」(調査会社ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏)との見方もある。ただそれにしても、年末ぎりぎりにならないとどうなるかわからない状態が続くことになる。思い起こされるのは、連邦債務上限を巡って債務不履行(デフォルト)まで懸念された昨年夏の事態。市場参加者はワシントンの機能不全に、再び神経をすり減らすかもしれない。

バークレイズ・キャピタルのバリー・ナップ氏は、年末のS&P500種株価指数を1330と置く。前週末時点よりも5%低い水準だ。「大統領選の共和党候補が固まって、議論が財政の崖問題に移ってくれば、市場の自信は弱まってくる」と見ているからだ。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]