緩和効果は「量」で測れないと日銀総裁が強調、「金利」が大事/ロイターより

金融緩和の効果を測るのは「量でなく金利」だ、と日銀の白川方明総裁が発信し始めたとロイターが記事にしていました(※1)が、この転倒した見解は、日銀の伝統的な思考方法と言えます。本件も含めて、今週はブログに書きたいことが多数発生してしまい、土日がゆっくりできません。

当室管理人の記憶では、昔から日銀は、金融政策は通貨供給量ではなくて金利調節で行うのだという考え方をしています。普通に考えれば、通貨供給量を調節することで金利が上下に動き、金利調節されるのだと思いますが、日銀はそうではなくて日銀のオペシグナルがマーケットに伝わって金利が上下に動くのだと見ています。

つまり端的に言えば、金利は日銀が直接動かすものであり、通貨供給量は余り関係ない、というのが日銀の考え方です。

現在のような「流動性のワナ」状態であれば、確かに金利水準自体は直接調節できるものなのかも知れませんが、通貨も需給関係がある以上は、基本的には通貨供給量が金利水準を動かすと考えるのが当然です。マクロ経済学でもマネーサプライの増減で金利水準を調節するという考え方が基本ですし、事実、金利水準を低下誘導する場合には、日銀は買いオペ量を増加させています。

それでもなお、過去の実例でもって、「2001年3月から06年3月まで実施した量的緩和政策の経験を踏まえ、「マネタリーベースが増えている時に円高になり、量的緩和解除後にむしろ円安になっている」と指摘」して言い訳にしていますが、そもそも直近の忘れもしない2月14日のバレンタイン緩和でインフレターゲット1%を提示した折に、為替介入以上の円安効果が生じたことを無視するのはフェアではありません。マーケットは一層の量的緩和を期待して円安・株高に動いたわけです。

各国が量的緩和を実施している現状では、緩和効果は量で或る程度計測できると言い得ます。時間軸効果も、量的緩和の結果として生じています。

また、「「量」を求めて基金の額を増やしていくことが、財政ファイナンス(財政支援)とみなされるリスクを今まで以上に警戒しはじめた可能性」もありますが、その心配は必要ありません。円高である以上は、円貨需要があるわけですから、素直に供給すれば良く、あるいはまた対外的に或る程度の円貨決済額の拡大を展望するのも日本経済の規模からすれば自然で無理のない話です。円貨供給の資産的見合いは、以前にも説明しましたように、外貨でも問題はありません。


[以下、引用]
◆(※1)緩和効果は「量」で測れないと日銀総裁が強調、「金利」が大事/ロイターより
2012年 05月 24日 19:56 JST
[東京 24日 ロイター] 日銀の白川方明総裁が金融緩和の効果を測るのは「量でなく金利」だと発信し始めた。

日銀は基金による国債などの資産買入を導入した2010年当初から、基金の「量」が目的ではなく、資産の買い入れで結果的に金利や各種プレミアムを引き下げるのが主眼と説明しており、日銀の姿勢に変化はない。しかし市場や政府・与野党関係者の間では量の拡大による緩和効果を期待する声が多く、総裁の発信意図が注目されている。

白川総裁は24日午後の衆院社会保障・税一体改革特別委員会で「実質ゼロ金利政策と金融資産の買い入れなどで強力に金融緩和を推進していく」との方針を改めて強調。その上で、ゼロ金利下では日銀が大量に資金を供給しても、資金はそのまま当座預金に預けられる「のれんに腕押し」の状況になっているため、「量では金融緩和の度合いは測れない」と指摘した。総裁は23日の金融政策決定会合後の会見でも、同じ内容の発言を行っている。

また総裁は24日の衆院特別委員会で、2001年3月から06年3月まで実施した量的緩和政策の経験を踏まえ、「マネタリーベースが増えている時に円高になり、量的緩和解除後にむしろ円安になっている」と指摘、量と為替に明確な相関を見出せないとの認識も示している。

量的緩和政策について白川総裁は京大教授時代に執筆した著書「現代の金融政策」で、「景気・物価に対する刺激という点で中心的な効果は時間軸効果であり、量の拡大はほとんど効果を発揮しなかった」としている。2010年10月に開始した基金による資産買入を軸とした「包括緩和政策」も、量でなく金利および社債などリスク性資産のプレミアム圧縮に働きかけることを主眼とすることで導入が決まった経緯がある。

一方、市場や政府・与野党関係者の間では基金の量を緩和効果の目安とみてきたのも事実。これに対し、政府の為替介入と平仄を合わせて追加緩和を実施した昨年8月4日の決定会合では「十分な緩和を行うという日銀の政策姿勢を明確に示す観点から、インパクトのある金額とすることが適当との見解で一致した」(議事要旨)との記述があり、量を示すことが必要という認識が政策委員の間でも共有されていた。

ここに来て総裁があらためて「量より金利」と強調し始めたのは、1)4月27日の追加緩和以降の長期金利の大幅な低下、2)国債買い入れでの札割れ発生、などで金融緩和の手詰まり感が出ていることが背景と考えることもできる。

また2月、4月と相次いだ追加緩和で年間での国債買い入れ額が43兆円と2012年度の新規国債発行額44.2兆円に匹敵する水準となっており、「量」を求めて基金の額を増やしていくことが、財政ファイナンス(財政支援)とみなされるリスクを今まで以上に警戒しはじめた可能性もある。

(ロイターニュース 竹本能文:編集 石田仁志)

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[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]