[FT]中国経済、予想を超える急減速か /日経新聞WEB刊より

少し古い5月の記事ですが、李克強氏自身が語った中国経済の実態を示す内容で、重要と思われますので、引用しておきます。

[記事の要点]
①中国の公式GDP統計は「人為的」で当てにならない。
②電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資の実行という3つの統計を重視するべき。
③4月の電力消費量はまだ発表されていないが、発電量は先月、前年同月比で0.7%増えただけだった。これに対し3月は7.2%伸びており、2011年4月の伸び率は前年比11.7%に上っていた。一方、年初から数カ月間の鉄道貨物輸送量の伸びは1年前の同時期の半分程度のペースにとどまり、銀行の新規融資は予想を大きく下回っている。


[以下、引用]
◆[FT]中国経済、予想を超える急減速か /日経新聞WEB刊より
2012/5/16 7:00

(2012年5月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
世界第2位の経済大国の舵(かじ)取り役に来年就任する人物は、2007年に中国の国内総生産(GDP)統計に対する疑念をうっかり漏らした。当時の米国大使に向かって中国の公式GDP統計は「人為的」で当てにならないと語ったのは李克強氏だ。彼は笑みを浮かべ、自分はこの統計を「あくまで参考値」と見なしているとつけ加えた。

■電力や貨物、融資に急ブレーキ

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李克強氏は中国のGDP統計に疑念を漏らしたことがある(5月3日、ブリュッセルで欧州委員会のバローゾ委員長との会談に臨んだ同氏)=ロイター

来年3月に正式に温家宝首相の後を継ぐ見通しの李氏は、経済成長を評価する際にGDPではなく電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資の実行という3つの統計を重視すると述べた。
李氏の評価が正しければ、中国経済はGDP統計がこれまで示唆してきたよりもかなり厳しい苦境に陥っている。
電力や鉄道貨物、銀行融資をはじめ、ここ数日で発表された注目度の低い統計は、いずれも経済活動の急激な落ち込みを示しており、政策立案者たちに不意打ちを食らわせたようだ。

■回復見通しは「希望が理性に勝った結果」
中国のGDP統計は3カ月に1度しか公表されず、今年の第1四半期は過去1年間続いてきた緩やかな減速傾向の継続を示していた。第1四半期の値は前年同期比8.1%増で昨年第4四半期の8.9%増から明らかに減速したが、躍進する中国経済の「ハードランディング」と見なされるほどではない。
比較的力強い結果を受け、大方のアナリストと政府当局者は、経済成長は第1四半期に底入れし、4月には回復し始めると断言した。
「セルサイドのアナリストや中国政府高官は、これが小さな落ち込みにすぎず、経済は勢いよく回復するという物語を信じたがった」。北京にある清華大学のパトリック・チョバネク教授(経営学)はこう指摘する。「だが、こうした予想は主に希望が理性に勝った結果だ」
4月の電力消費量はまだ発表されていないが、発電量は先月、前年同月比で0.7%増えただけだった。これに対し3月は7.2%伸びており、2011年4月の伸び率は前年比11.7%に上っていた。
一方、年初から数カ月間の鉄道貨物輸送量の伸びは1年前の同時期の半分程度のペースにとどまり、銀行の新規融資は予想を大きく下回っている。
「中国は過去3年間、投資ブームに乗ってきた。このブームは持続不能だと誰もが知っていて、今、それがどういうことかを目の当たりにしている」とチョバネク教授。「投資ブームの急減速は、それに代わるものがない中で起きている。中国の行く手には、我々が慣れたものより相当低いGDP成長率が待ち受けていることになる」

中国の不動産投資は急激に落ち込んでいる(北京の住居ビル)=ロイター

■不動産投資が激減、輸入も急減速
減速の大半は不動産市場に由来している。不動産市場では、信用(クレジット)があおったバブルを封じ込めようとする政府の対策が、やや利きすぎのように見えてきた。
GDPの13%前後を担う不動産投資は最近急激に落ち込み、新築住宅の建設床面積は直近3カ月間(2~4月)で大きく落ち込んだ。
だが、中国の景気減速の原因は不動産の減速に限らない。中国の4月の輸出入は事前予想よりかなり弱く、輸入の伸び率はアナリスト予想を大きく下回った。
スタンダードチャータード銀行のエコノミスト、スティーブン・グリーン氏によると、主力コモディティー(商品)の輸入の伸びが急減速する一方、産業機械の輸入は減り、「憂慮すべき産業投資の減速」を示唆している。
「追加の政策緩和が見込めない中で、我々は第2四半期いっぱい成長が減速し続けると見ている」と同氏は言う。

■刺激策の選択肢は限られる
多くのアナリストは、中国政府は減速する経済に刺激策を講じるのが遅すぎたと考えている。共産党幹部だった薄熙来氏が先月解任されて政治的な混乱が生じたことは、政府がもっと早く対策を講じなかった理由の1つだが、一部のエコノミストは政府が成長てこ入れを図る選択肢は以前より限られていると指摘する。
最近の悲惨な統計を受け、中央銀行は12日、融資拡大を促すために市中銀行の預金準備率を引き下げた。
しかし、金融危機後の大規模な低利融資と政府支援による投資の結果、中国政府には今回、限られた武器しか残っていない。一方で、インフレ再燃と国営銀行の不良債権への懸念が高まっている。
来年の首相就任へ準備を進める李氏は、自分の仮説は間違いでGDP統計の方が正しいことを望んでいるに違いない。さもないと同氏は、対処する力があまりないまま問題の悪化に直面する恐れがある。
By Jamil Anderlini
(翻訳協力 JBpress)
(c) The Financial Times Limited 2012. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]