スペイン国内銀の不良債権比率、過去最高/日経新聞WEB刊より

失業率の高いスペインは、不況の只中にありますので、まだ銀行の不良債権額は確定段階に至っておらず、さらに増加中であると見なすのが妥当です。日経新聞WEB刊の小さい記事で、そうした進行中の事実が報道されています(※1)。

いわく、「スペインの国内銀行の融資全体に占める不良債権の比率が6月に9.42%となり不良債権の額は1644億ユーロで、前月から5%増えた。」

すでに公表されているEUからの銀行支援規模は1000億ユーロであり、報道の様に不良債権額が1644億ユーロであるならば、これをカバーするのには不足しています。欧州債務危機の解決までには、まだ紆余曲折がいくつもありそうな予感がします。

8月17日までは株価は比較的堅調な推移でしたが、このままするすると上昇することは、おそらくは困難であり、8月中旬までは主要参加者が夏休みであっただけで、夏休みから戻る下旬以降からは経済実態を示す本当の動きが出てくるものと思います。

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 (Trading Economics:http://www.tradingeconomics.com/より)The unemployment rate in Spain was last reported at 24.6 percent in the second quarter of 2012.

◆(※1)スペイン国内銀の不良債権比率、過去最高/日経新聞WEB刊より
2012/8/17 18:53

【パリ=竹内康雄】スペインの国内銀行の融資全体に占める不良債権の比率が6月に9.42%となり、過去最高となったことがスペイン中央銀行が17日公表したデータで分かった。不良債権の額は1644億ユーロで、前月から5%増えた。スペインの銀行は不動産バブル崩壊による不良債権処理が遅れており、経営を圧迫している。

5月の不良債権比率は8.95%で、1994年4月以来の水準だった。6月はこれを上回りデータが公表されている1962年以降で最も高かった。


◆COLUMN-前途多難なスペイン問題、ユーロ安再燃も=山下えつ子氏/ロイターより
2012年 08月 16日 19:08 JST
 --本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラム(here)に掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています--

山下えつ子 三井住友銀行 チーフ・エコノミスト

[東京 16日 ロイター] マーケットに潮目の変化が訪れたようだ。グローバルに株式相場が底堅く推移し、出遅れ感が指摘されていた日本株もついに日経平均株価が9000円台に乗せるところまで回復した。

一方で、これまで安全資産として集中的に選好されてきた米独国債が売られ始め、日本国債の利回りもこれに連れるかたちで上昇中だ。為替相場もユーロが反発し、ドルも上値を追い始め、今まで水準的には近いが戻れなかった80円が少し視野に入ってきた。

5月初旬のギリシャ総選挙後の同国のユーロ離脱リスクに始まり、その後はスペインの銀行セクターの資本不足および自治州の財政問題とスペインが中心となって欧州危機が強まった。前述の相場の流れの転換はスペインを巡る動きに変化があったことが一因で、一時は7%を超える水準まで上昇していたスペイン10年債利回りも現在は6%台へ低下している。

<スペイン問題へECBが出動>

これまで欧州では、ギリシャに続いて、アイルランド、ポルトガル、キプロスが欧州連合(EU)に対して金融支援を要請しているが、スペインは銀行セクターに限った支援を要請したのみだった。

しかし、銀行セクターへの支援は未済ながらEU側からは最大1000億ユーロが用意されており、これはスペインの国内総生産(GDP)の約10%にも相当する規模である。スペインが銀行セクターに限って支援要請したのは、財政全体へ支援を受ける場合、その条件として厳しい財政緊縮策を要求されるのが嫌だったからだ。実際には、スペインは、財政・景気・銀行の三つ巴で悪循環に陥っており、問題は決して小さくはない。欧州内で最も深刻な問題を抱えた国と言ってもよいだろう。

そのスペイン問題に対して、ついに欧州中央銀行(ECB)が動いた。ECBはすでに7月5日の理事会で利下げを実施していたが、8月2日の理事会でも、周辺国の国債市場におけるリスクプレミアムに対して流通市場で短期債を購入すると発表した。その詳細は未発表だが、限られた情報から推察すると、ECBはこの手段の決定によって、EUにも動くことを暗に要求し、かつ支援要請国にも財政再建を進めることを要求している。なぜならば、ECBは実施条件として、EUがEFSF/ESMを利用し周辺国債を発行市場で購入すること、また、そのさらなる前提条件として当該国が財政再建と構造改革を約束して国債購入を自ら要請することを挙げているからだ。ECBは各国の財政再建および構造改革、そしてEUの制度改革に関するコミットなしに国債市場に介入することを強く拒否しているのである。

<ECBとスペイン政府のスピード感は違う>

今回のECBの決定をこのように眺めると、スペイン問題がここですっきりと片付くのか疑問に思える。ECBは9月6日の次回理事会までに詳細を決定するだろう。しかし、EUあるいはドイツをはじめとする各国政府が、EFSF/ESMの機能について早期に合意・実行することは恐らく無理だろう。

また、スペインは国債購入を要請するだろうか。銀行セクターへの支援要請の際にも、かなり渋った経緯があるが、今回のように財政への支援を要請するのは、出来る限り避けたい選択であろう。スペイン政府が動かなければ、次の展開もない。
 
するとどうなるか。現在のマーケットはスペインがECBの仕組みに乗って国債購入を要請すると考えている。それによって、スペインのソブリン問題は相当に安定し、かつ不要なプレミアムが乗らない分、国債利回りは大きく上昇せずに済む。その発想が現在のマーケットの楽観的なムードを誘っているが、ひとたびプロセスが想定するほどスムーズに行かないことが明らかになれば、マーケットは再びスペイン国債を売り始め、10年債利回りはあっという間に7%を上回ることになろう。

そのようにマーケットに追い詰められてから、結局、国債購入を要請することになるのだろうか。たとえECBの動きが速くても、スペインやEUの政治の動きは遅く、現在期待されているほどスペイン問題の解消への展開は速くはないと筆者は考える。

<長続きしそうにない国債購入の効果>

また、国債購入がそれでもスタートすることになった場合、その効果はどうだろうか。スペインの発行する国債が発行市場で買い入れられれば、財政ファイナンスをEUレベルで肩代わりするという仕組みとなり、自力でファイナンスするよりもコストは低くなって、財政問題は軽減はされるだろう。

だが、EUレベルでのファイナンスの資金源は何かということになると、結局はドイツの負担の増加となる可能性が高く、マーケットはユーロに対する信認を高めるとは限らない。さらに、スペインが国債購入を要請すれば、マーケットは「次はイタリア」と連想するだろう。そうした飛び火を防ぐことは難しい。

したがって、周辺国債の購入という手段はソブリン問題の解消に役立つ部分はあるが、結局のところ、速やかに、根本的に、問題を解決することは出来ず、そこから派生する問題のネガティブ・インパクトの方が結果的には大きくなるリスクも考えられる。

為替市場はECBの今回の決定を好感し、今のところ、ユーロは堅調に推移している。スペインの国債購入要請もポジティブに受け止められるかもしれない。だが、それは長続きせず、派生する問題に焦点が移ると、ユーロは再び売り圧力にさらされることになるだろう。

*スペイン問題については、筆者の6月20日掲載コラム「スペインのギリシャ化懸念」を参照(here)

*山下えつ子氏は、三井住友銀行のチーフ・エコノミスト。東京大学経済学部卒。1990─2000年ロンドン駐在エコノミスト、2003年より現職。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]