円高構造が大転換 (?) プロの着目点に学ぶ/日経新聞

外為相場の動向については、日経新聞は2011年夏ごろ、購買力平価説に傾倒して円高方向を断言してしまっていたものと記憶しています。この点は以前触れました。→ 中長期的には外貨(外債)投資は儲からないか(1)http://toshukou.at.webry.info/201107/article_3.html

今回の記事は、「円高構造が大転換 プロの着目点に学ぶ」ということだそうで、記事の中に購買力平価説のカケラもありません(※1)。

当室としては、今般の円安・株高は、ガイジンの短期的投機によるものであり、残念ながら衆議院選挙が終了すれば、再び円高・株安方向に転換するものと思います。

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 (日経平均1年間:SBI証券より引用)
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 (ドル円1年間:SBI証券より引用)

[以下、引用]
◆(※1)円高構造が大転換 プロの着目点に学ぶ/日経新聞WEB刊より
2012/12/1 7:00 ニュースソース 日本経済新聞 電子版
 
円安が進んでいる。自民党の安倍晋三総裁が日銀に大胆な金融緩和を求めたことがきっかけだが、全く別の要因で円安を見込む専門家も増えてきた。市場が注目するのは日本の需給構造の転換だ。個人が外貨資産に投資する際に役立つ需給要因の見方をまとめた。

「数カ月間で円は急落する可能性がある」。1995年の1ドル=80円突破を予想したことで知られる米ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのジム・オニール会長が最近出したリポートが話題を呼んでいる。根拠の一つは「経常収支が数十年ぶりに赤字になった」ことだ。

■31年ぶり経常赤字

輸出大国、経常黒字国……。教科書で学んだ日本経済の需給構造が変わりつつある。季節要因を除いた9月の経常収支は31年半ぶりに赤字に転落した(グラフA)。経常収支は主にモノやサービスの輸出から輸入を引いた貿易・サービス収支と、海外との利子や配当の取引を表す所得収支で構成する。経常赤字になったのは、輸出低迷などによる貿易・サービス収支の赤字を、企業が海外で稼いだ利子などの所得収支の黒字で賄えなくなったからだ。
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経常赤字は海外から日本に入るお金よりも、日本から海外に出るお金の方が多い状態を示し、為替取引では円安要因になる。ただそれだけで実際に円安が進むわけではない。需給要因の為替相場への影響は、海外工場の建設や外国企業の買収の状況を表す直接投資収支や、海外の株式や債券の売買状況を表す証券投資収支などで構成する資本収支も見る必要がある。

様々な収支があるなかで為替取引のプロはどこに着目して円相場の方向感を分析するのだろうか。

シティバンク銀行の高島修チーフFXストラテジストは経常収支と直接投資の合計を「基礎収支」と名付けて注目している。金融機関や機関投資家が中心の証券投資は短期間に様々な思惑で乱高下するため、中長期的な為替相場の方向感を探る場合は、除いた方が分かりやすいからだ。

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「基礎収支」を見てみると、最近は赤字傾向が鮮明だ(グラフB)。輸出低迷や福島第1原子力発電所事故後の液化天然ガス(LNG)の輸入拡大で経常黒字が急減。これに対し、長引く円高で日本企業の海外直接投資が急増したからだ。高島氏は「米欧経済が不安でも円高が進みづらいのは基礎収支の赤字による円売りがブレーキをかけているためだ」と指摘する。

動きの早い証券投資にも変化が起きた。この点に注目するのは大和証券の亀岡裕次チーフ為替ストラテジストだ。資本市場が発達した先進国は証券投資が大規模で、足元の為替相場を左右しやすいとみる。

■証券投資、海外へ

11年までは欧州債務不安や米国景気の減速懸念を背景に、海外の投資家がリスクを回避する目的で日本国債への投資を増やし、証券投資は国内への流入超過、つまり円高要因になりやすかった(グラフC)。11年10月末に1ドル=75円32銭の円最高値を記録したのも、こうした円高要因が影響した可能性が高い。

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ところが12年に入ると、お金の流れが一変。証券投資は海外への流出超過、つまり円安要因に変わってきた。欧州債務不安の一服でリスク回避の動きが弱まる一方、日本の投資家がドイツなどの国債を買い始めたからだ。亀岡氏は「欧州債は金融緩和の影響で利回りが低いため、将来の円安・ユーロ高による為替差益を狙った投資が増えた可能性が高い」と指摘する。債券投資には外貨を調達して利回り益を狙う為替相場に影響しない取引もあるが、今回は円安要因になりやすいというわけだ。

最近の需給要因は経常収支も資本収支も円安要因として働いていることが分かる。それでは需給要因でどれくらいの水準まで円安が進む可能性があるのかを予測できないだろうか。野村証券の池田雄之輔チーフ為替ストラテジストはヘッジファンドや個人の外国為替証拠金(FX)取引などの投機的売買を除き、貿易・サービス収支、所得収支、直接投資、投資信託や機関投資家の証券投資などの需給要因だけを指数化した円相場の推計値を算出している(グラフD)。

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■1ドル=90円も視野

これを見ると、推計値も実際の円相場とほぼ同じ軌道を描いていることが分かる。ここに野村証券が推計した13年以降の経済予測を当てはめると、「13年度中に1ドル=90円に到達するシナリオもあり得る」(池田氏)計算になる。

もちろん円相場は需給要因だけで決まるものではない。南欧諸国で債務不安が再び深刻化したり、米国の減税失効と歳出削減が重なる「財政の崖」問題が不安視されたりすれば、リスク回避姿勢が急激に強まり、円高基調に転じる可能性も否めない。個人も需給要因だけに着目して外貨投資を考えるのは危険だ。

日銀が2月に事実上の物価目標の導入などの「サプライズ緩和」を実施したことを機に1ドル=84円台まで円安が進んだ時は、その後の金融緩和姿勢が弱いとの見方から一気に円高に逆戻りした。ただ今回は需給要因が円安方向に傾きつつあるなかで円相場が下落しており、市場では「2月の時ほど急激に円高に逆戻りする展開は考えづらい」(大和証券の亀岡氏)という声が増えている。

(編集委員 小栗太)

[日本経済新聞朝刊 20120年11月28日付]
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]