ユーロ圏を崩壊させ得るオランダの債務危機

かなり激震の走りそうな深刻な内容の記事が、ウォールストリート・ジャーナル日本版に掲載されていましたので引用しておきたいと思います。ユーロ圏の不況はかなり深刻であることは、すでにこのブログでも述べた通りですが、中核国としてのオランダが想定外の巨大債務国として浮上している様です(※1)。

ギリシャやキプロスは、想定内の危ない過大債務国とも言えますが、オランダはそうではない穏当な優等生的国家と見なされていますから、それが今後問題の表面化しそうな巨大債務国という認定に至るのであれば、予想外の大きな心理的マイナス影響が発生しそうです。

もっとも、ウォールストリート・ジャーナル日本版の記事内容では、オランダの場合は財政的過剰債務の問題ではなくて、家計の過大な債務問題として指摘されています。ですから、国家の債務問題から国債の暴落、そして銀行の損失発生から金融危機となったギリシャやキプロスとは毛色は異なりはしますが、個人の住宅債務不履行から銀行の不良債権が増加するという点では金融危機としての本質は同様です。

同記事にいわく、
①オランダの家計債務は可処分所得の250%に達した。これは世界でも最高レベルであり、スペインでさえ、それが125%を上回ったことはない。
②すでに1つの銀行が政府の救済を受けたが、住宅価格はまだ下がり続けているので、そうした銀行はさらに増えるだろう。
③現在のオランダの不動産価格はバブルがピークに達した2008年より16.6%も低くなっている。英国不動産業者協会(NAEA)の予測では今年さらに7%下落する。
④価値が急落している不動産に対するオランダの銀行の融資残高は6500億ユーロもある。金融市場について確実なことが1つあるとすれば、それは不動産市場が暴落すると、金融市場も早晩それに続くということだ。
⑤オランダは、導火線が少し長かったことを除けば、アイルランド、ギリシャ、ポルトガルとまったく同じ形での破綻に近づいている。

現在のところ世界の株価は、比較的堅調に上昇傾向を示してはいますが、オランダ経済の動向は注視が必要であり、当室としても今以上のポジション積み増しは停止する方針です。

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 (オランダの失業率推移:http://www.tradingeconomics.com/)
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(オランダのGDP成長率:http://www.tradingeconomics.com/)
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(オランダ5年国債CDSレート・チャート・・・http://www.bloomberg.co.jp/apps/cbuilder?T=jp09_&ticker1=CT425574:IND)

[以下、引用]
◆(※1)ユーロ圏を崩壊させ得るオランダの債務危機/ウォールストリート・ジャーナル日本版より

【ロンドン】ユーロ圏で最も大きな債務を背負っている国はどこか。国費で気前のいい年金を支払っている浪費家のギリシャか。いかがわしいロシアの資金をその銀行に預かっていたキプロスか。景気後退に見舞われているスペインか、それとも好況後の不況に陥っているアイルランドか。

そのいずれでもない。実は節度と責任感のあるオランダだ。

オランダの家計債務は可処分所得の250%に達した。これは世界でも最高レベルであり、スペインでさえ、それが125%を上回ったことはない。

オランダは世界でも最も重い債務を抱えた国になってしまった。景気後退に陥り、そこから脱却する兆しはほとんど見えていない。3年にわたってだらだらと長引いてきたユーロ危機だが、これまでに感染してきたのはユーロ圏内の周辺諸国だけだった。しかし、オランダはユーロ圏と欧州連合(EU)の中核国である。オランダがユーロ圏で生き残れなければ、このゲームは本当に終了となる。

これまでオランダは欧州でも最も裕福で安定した国であり続けてきたし、最も親EU的な立場をとってきた。EUの原加盟国であり、単一通貨導入を最も支持した国の1つだった。豊かな輸出志向の経済を持ち、多くの成功した多国籍企業を抱えるオランダが、ユーロの順調な導入で出現するはずだった単一経済圏から得るものは多いと考えられていた。

ところが、オランダがたどり始めたのは悲しくなるほどおなじみの筋書きだった。導火線が少し長かったことを除けば、アイルランド、ギリシャ、ポルトガルとまったく同じ形での破綻に近づいているのだ。

主にドイツ経済に有益なように設定された低金利と潤沢な低利融資資金が、不動産ブームと債務の急増につながった。オランダの住宅価格は、ユーロの導入から市場がピークに達するまでに2倍になり、世界で最も加熱した不動産市場の1つとなった。

その市場が今、大暴落している。オランダの住宅価格は、米国の住宅バブルが崩壊したときのフロリダと同じぐらいの速さで下がっているのだ。現在の価格はバブルがピークに達した2008年より16.6%も低くなっている。英国不動産業者協会(NAEA)の予測では今年さらに7%下落するという。つまり、2001年以前に家を買っていなければ、現在の住宅の価値は買ったときよりも下がっており、下手をすると住宅ローン残高よりも低くなっているかもしれない。

欧州中央銀行(ECB)は2014年からユーロ圏域内の銀行を監督する

その結果、オランダ国民は債務でおぼれかけている。家計の可処分所得の250%以上の負債というのは、アイルランドよりも多く、ギリシャの水準の2.5倍となっている。すでに1つの銀行が政府の救済を受けたが、住宅価格はまだ下がり続けているので、そうした銀行はさらに増えるだろう。価値が急落している不動産に対するオランダの銀行の融資残高は6500億ユーロもある。金融市場について確実なことが1つあるとすれば、それは不動産市場が暴落すると、金融市場も早晩それに続くということだ。

通常はこうした状況への反応が遅い信用格付け会社でさえ気付き始めている。今年2月、フィッチ・レーティングスはオランダ国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。「トリプルA」格はかろうじて維持している。同社は見通し引き下げの理由として、下落基調にある住宅価格、増加している政府債務残高、金融制度の安定性に対する疑念を挙げている。要するに、危機に見舞われた他のユーロ圏諸国と同じ有害な組み合わせである。

その経済はもはや景気後退に陥っている。

失業率も上昇しており、過去20年間で最悪となっている。失業者数はわずか2年で倍増し、失業率は今年3月だけで7.7%から8.1%に上昇した。この上昇のスピードはキプロスのそれよりも速い。国際通貨基金(IMF)はオランダ経済が2013年に0.5%縮小するとみているが、こうした予想には過度に楽観的な傾向がある。

昨年10月に厳しい緊縮措置を発動したばかりであるにもかかわらず、オランダ政府は財政赤字目標を達成できなかった。他のユーロ圏諸国同様、オランダは今や失業率の増加、税収の減少、より厳しい緊縮措置の悪循環にはまってしまったようだ。そしてこれがさらなる歳出削減と失業率の悪化を招くことになる。一国がひとたびこのレールに乗ってしまうと、そこから脱出するのはかなり難しいが、ユーロ圏内においてはなおさらだ。

単一通貨ユーロが抱える問題の答えとして欧州全土に緊縮措置を課すという考え方において、オランダは最近までドイツの重要な味方だった。しかし、状況が悪化していけば、終わりが見えない緊縮や景気後退、そしておそらくはユーロそのものへのオランダの支持は蒸発し始めるだろう。

ユーロ圏におけるこれまでの深刻な危機は周辺諸国で起きてきた。そうした影響力の低い国々での問題は、ユーロ成立過程におけるシステム上の欠陥の露呈としてではなく、むしろ事故として扱われてきた。

ギリシャは浪費し過ぎた。アイルランドは不動産市場を暴走させてしまった。イタリアは最初から債務が多すぎた。ところがオランダには何の言い訳もない。すべてのルールに従ってきたのだから。

中核国が危機に瀕すると、ユーロ危機は終末期を迎えるということは以前からわかっていた。アナリストの多くはフランスがその中核国になると思い込んでいた。確かにフランスにも問題は多いが、依然として豊かな国である。債務レベルは高いかもしれないが、まだ制御不能に陥ったり、金融制度の安定性を脅かし始めたりはしていない。

ところがオランダはそうなり始めている。そこに至るまでにはあと1-2年かかるかもしれないが、経済不況は加速しつつあり、金融制度は日に日に安定性を失っているように見える。それどころか、オランダは最初に破綻する中核国になるはずで、そうなればユーロにとっては危機の領域を超えてしまうだろう。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]