アベノミクスの「終わり方」を想像する/山崎 元氏による

掲載が遅れましたが、山崎元さんがダイヤモンド・オンラインで、アベノミクスの終了形態を予測するという形で今後の日本の景気動向・株式相場動向を予測しています(※1)。

山崎さんは、「現在の状況は、1987年くらいの状況に似ている」として、今後の資産バブル発生を一番確率が高いと見ています。我々個人投資家にとっては好都合な予測ではありますが、この点について一抹の不安を持つ当室の見解を一言で言えば、来年度2014年度の予算編成内容次第で、良くも悪くもなるということです。

しかしながら、山崎さんが指摘するように、財務省が2015年の消費税8%→10%への引き上げを必達目標としていることは明白ですので、2014年中の景気腰折れはどうあっても回避する方向で対策を打つはずです。そうであるならば、2014年の相場は基本的に安心できる局面を維持しそうです。

[当室の見解]
①クロダ緩和の継続→円安→日本株高
②米国景気の回復→QE3手仕舞い→米国金利上昇→円安→日本株高
③ECBドラギ緩和継続→欧州景気下支え→欧州株高
④日本国財務省の思惑(2015年消費税10%達成)→少なくとも2014年度中の積極財政政策→日本株高
⑤2020年東京オリンピック開催→公共投資・建設投資拡大→日本株高
⑥カジノ法案成立(?)→建設投資拡大→日本株高
⑦日本株高→実質試算残高効果→消費需要拡大→景気拡大→日本株高
⑧2015年消費税引上げ→2014年中の駆け込み需要→消費増税(5%→8%)の影響相殺

以上により、環境的にはプラス面が多いように思います。ただし、山崎さんの言う資産バブルが2~3年後に発生するかどうかは不明であり、当室としてはもう少し慎重に考えたいと思います。


全くの蛇足ですが、当室のブログ記事は、(A)投資方針や株価見通しなどを中心とした記事と、(B)マクロ経済トピックスを中心とした記事とに大きく区分けできます。読者のアクセスカウント数で見ますと当然のように前者(A)に関する記事へのアクセスが多数であり、(B)へのアクセス数は残念ながらその約半分程度です。しかしながら、マクロ経済トピックスの方が実は重要であり、そちらの記事に関するコメントの中で、重要な投資方向判断を説明しているケースもありますのでご注意ください。


◆(※1)【第307回】 2013年12月4日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

アベノミクスの「終わり方」を想像する/ダイヤモンド・オンラインより引用

いささか手荒な株価調整は完了
アベノミクスの「終わり」は?

5月23日に株価・為替レートが乱高下し、「調整」と一言で言うにはいささか手荒な株安・円高局面があったが、約半年を経て、株価も為替レートも戻ってきた。こうした「気がついたら高値に戻る」といったリズム感は、大規模な金融緩和を背景とした相場としては普通のものであるように思う。

さて、現段階で筆者は、相場・景気・経済政策いずれの点でも「アベノミクス」の「終わり」が近いとはさらさら考えていない。これは予め強調しておきたい。

景気と物価には、目下だいたい想定通りに金融緩和の効果が表れているが、失業率がもっと下がって賃金上昇につながり、物価がはっきりとかつ継続的に上昇する条件が整うのは、早くとも来年の後半以降だろう。それまで、金融緩和を中心とした政策パッケージとしての「アベノミクス」は継続するだろうし、株価は現在「バブル」にはほど遠いし、円安にもまだまだ余裕がある。

とはいえ、相場にも景気にもいつかは「終わり」が来る。アベノミクスの終わりがどのような形で来るのか、考えておくことは無駄ではあるまい。

先のことなのでまったく自信はないし、全く見当違いのことを書くかもしれないとお断りした上で、考えてみたい。

相場の世界には次のような言葉がある。「予測は難しい。特に、将来の事に関しては」。

アベノミクスが終わる形について、筆者には起こりそうだと感じていない選択肢も含めて、現段階で5つほどの可能性が思い浮かぶ。

アベノミクスの「終わり」5つの可能性
筆者の本命は「バブルの形成と崩壊」

起こりそうな確率を棚上げして、想像される時間的な近さの順に並べると、以下の通りだ。

(A)消費増税での景気失速(早ければ来年)
(B)海外要因での失速(来年、再来年のどこか)
(C)インフレ高進による引き締めへの転換(再来年以降だろう)
(D)バブルの形成と崩壊(2、3年後か)
(E)国債暴落による継続不能(かなり先だろう)

読者は、上記のどれが一番起こりやすく、実際に何が起こると予想されるだろうか。あるいは、それ以外の可能性があるだろうか。しばし思いを巡らせてみていただきたい。

先の5つの可能性について、筆者が「起こりそうだ」と思う順に並べる。

筆者の予想を競馬風にいうと、本命は(D)バブルの形成と崩壊で、対抗は(C)インフレ高進による引き締めへの転換、だ。

アベノミクスは、「インフレ目標2%」を掲げることで、将来の金融緩和を期待させ、これを「異次元緩和」で裏書きすることによって、将来の実質金利の予想を低下(マイナスの実質金利に)させて、円安・株高・不動産高を導き、景気拡大、ひいては物価上昇を実現しようとする政策だ。

「2%の物価上昇率まで、金融緩和を止めることはない」という約束がもたらす期待が、政策効果の鍵を握っている。政府も日銀も、これを壊すことはしないだろう。

だとすると、何が起こるか。

本欄でも何度か書いたように、現在の状況は、1987年くらいの状況に似ている。

1985年のプラザ合意による円高がもたらした不況に、1986年から金融緩和(同年、公定歩合は4回下がった)で応えて、株高が始まり、1987年には米国でブラックマンデーと呼ばれた株価大暴落が起こり、1987年、1988年と金融緩和・内需拡大を止めることができなくなってバブルが起こり、1989年末にその頂点を迎えた、というのが1980年代後半の顛末だった。

5月の暴落をブラックマンデーになぞらえると、現状は1987年から1988年に入るくらいの段階だ。「今後もしばらく金融緩和を続けざるを得ない」という条件が共通である。

これを丸ごと当てはめようというのではないが、日経平均で見ると1988年には39%、1989年にも29%株価が上昇している。

首都圏を中心に地価・不動産価格が高騰
オリンピック3年くらい前にバブル崩壊?

株価に関して、1980年代末期の状況と今の違いは、1980年代はブラックマンデー前に株価は2万5000円を超えており、株価がすでに割高だったことと、しかし当時の方が日本経済の成長率が高かったことだ。

たとえば、来年中に消費者物価上昇率が2%に達しなかった場合、再来年に入っても日銀は金融緩和政策を続けているに違いない。株価・不動産だけのバブルでは何やら寂しいが、今後東京オリンピック関連の開発が現実化してくると、「東京オリンピックまでは、大丈夫!」とのかけ声の下に、借り入れを伴う不動産開発が大規模に行われて、首都圏を中心に地価・不動産価格が高騰することは大いにあり得る。

しかし、相場の世界で「何々までは大丈夫」という場合、そのかなり手前で大丈夫ではなくなることが普通だ。東京オリンピックの3年くらい前に、バブル崩壊が本格化する、といった展開になる可能性は小さくないと考えていいのではないか。

それにしても、あまり先の不確かなことを心配しても仕方がないが、東京オリンピックの後に、どんな経済的な「目玉」があるのかは少々心配だ。使い切れない施設やインフラをつくったあげく、長い「宴の後」を高齢化した社会が後片付けするような沈滞状況は嬉しくない。

将来バブルが起こる可能性があるからと言って、今金融緩和を止めるべきではない。しかしさりとて、将来資産価格が上昇して金融政策が緩和的であれば、「貸し込む対象」を見つけて過剰な信用供与が行われるのが金融ビジネスの常であり、これを制御し切ることは難しい。

そのスケールはいまだわからないが、「バブル」というしばしの宴を迎えて、その後に二日酔いに悩む、といった展開を繰り返す可能性は大きい。人間の酔っ払いも進歩しないのだから、社会が進歩しなくても不思議はない。

日銀は物価目標3%のシグナルを?
インフレ率が上がったらどうなる

主に円安やエネルギー価格の上昇によって、消費者物価は前年比プラスに転じて来たものの、物価はなかなか上がらない、というのが大方の実感ではないだろうか。また、世界の先進国が緩和的な金融政策を行っているにもかかわらず、米欧共に物価はあまり上がっていない。

物価には、ある種の「慣性」が働くので、当面消費者物価が急上昇することは想像しにくいが、たとえば来年末から再来年くらいなら、物価上昇率が2%を超える状況になるのは、あり得ぬことではない。

「2%前後」を定着させるために、また過去のデフレの穴埋めの意味も含めて、日銀は消費者物価上昇率が2%に近づいた段階で物価目標を3%に上げるか、少なくとも3%に近づくまでは金融緩和を継続するというシグナルを送ることが、望ましいだろう。

しかし、物価がさらに上昇する場合がないとは言えない。

こうした場合、日銀は金融政策の舵を引き締めに切らなければならない。その場合、実体景気はそれなりに改善しているはずだから、「直ちに」と言うことではないかもしれないが、株価も不動産価格も、金融引き締めの前には「ひとたまりもない」下落に転ずる可能性がある。

「マイルドなインフレ」は目指すべき経済環境なのだが、そこに至る過程は平坦ではないかもしれない。相場を張る人が密かに恐れるべきは、「お腹いっぱいのインフレ」だ。そうした状況が近づいたとき、誰しもがそう思うはずなので、引き締めの「気配」だけでも暴落の引き金を引くかもしれない。

ともあれ、資産価格暴落と金融システム不安の関係を断ち切っておくことを含めて、金融政策を差配する当局の「腕」が問われる。

「海外」は未知数だが
「消費税」「国債暴落」は乗り切れる?

あやふやな将来の事柄について確率を語っても仕方がないかもしれないが、筆者の想定する実現確率は「バブル化」が6割、「インフレでの頓挫」が2割、というところだ。残りの要因は、見落としている他の可能性も含めて、合計2割というくらいを想像している。

日本経済、特に資本市場が、海外の影響を受けやすいことは周知の事実であり、この傾向は今後も続くだろう。2006年まで続いたミニバブル的な状況が、米国のサブプライム問題でつるべ落としに悪化したように(加えて、日銀はこの状況の「フォワード・ルッキング」に失敗してゼロ金利政策を解除した)、海外で本格的な不況や資本市場の暴落が起きた場合に、日本経済だけが単独で順調ということは考えにくい。

たとえば、米国が金融緩和を終えて引き締めに転じた場合、米国だけでなく、新興国の市場と経済は大幅に悪化するだろう。このマグニチュードは未知数だ。

ただし、新しいFRB議長になったジャネット・イエレン氏は、急激な引き締めには慎重だろうという「希望的予想」と、米国の実質金利が上昇した場合にドル高・円安になるので、日本が金融緩和を続けている限り日本経済及び日本株へのショックは緩和されるはずだという「理論的期待」はあり得る。

消費税率引き上げの悪影響が大きく出て、景気がすっかり失速して、アベノミクスが頓挫する、というストーリーも考え得る。

ただ来年の時点では、財務省は何としても10%への引き上げを実現したいだろうから、金融緩和の追加を要請すると共に、財政出動にも遠慮はするまい。需要吸収による失速が真に怖いのは、「10%実施決定後」だろう。

また、消費税率引き上げによって景気が失速した場合、次の政策は何かと考えると、追加的な金融緩和を中心とした「アベノミクス2.0」とでも呼ぶべき第二幕だ。この場合、相場的にはそれなりに深い調整があるかもしれないが、「まだ終わらない」公算が大きい。

アベノミクス終了のきっかけは
一に「バブル」、二に「インフレ」

一部で心配する向きのある「国債暴落」はどうか。経済活動が順調に拡大して物価も上昇すれば、長期金利が3%、4%と上昇して、長期国債が大幅に値下がりすることはあり得る。しかし、これは望ましい状況であり、将来の税収増、過去の債務の実質価値の減価などを通じて、長期的には財政は改善するはずだ。

また、いち早く金融緩和に転じた米国の長期金利の動向を見ると、中央銀行であるFRBが長期債を買い入れ続ける状況下で、長期金利は十分落ち着いている。日本の場合、預金や保険、年金など、円ベースの安定した利回りで確実に運用したいライアビリティ(負債)は大きいにもかかわらず、国債以外の債券市場が未発達だ。

銀行のリスク管理に関するルールで、国債をリスクにカウントするようにでもしない限り、利回りが上昇すれば国債に対する需要はあるはずだ。「国債暴落」でアベノミクスが終了する、というシナリオの実現性が高いとは思えない。

かれこれ考えると、今の段階でアベノミクスが将来終了するきっかけは、「バブル」の可能性が最も大きく、次いで「インフレ」かと思うのだが、いかがだろうか。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]