アベノミクス、相次ぐ想定外 経済指標「変調」

やはり、平成25年度補正予算の出尽くし・息切れと消費税増税とのダブルマイナス効果の影響は、漫然とは看過できない様な感じです。朝日新聞では、想定外の経済不振を指摘しています(※1)。

[要点]
①昨年10~12月期の実質経済成長率が年率0・7%に下方修正された。
②今年1月の経常赤字額は過去最大を更新。
③急ブレーキの主因は、景気回復のカギを握るとされる「設備投資」と「個人消費」の力弱さ(?)にある。
④昨年前半は株高で儲かった人を中心に、時計や貴金属といった高額品がよく売れたが、その動きは一服した。年後半は増税前の駆け込みで消費が伸びると見られたが、食料や衣料品の販売が振るわなかった。

⑤賃金が上がらないなかで、円安の影響を受ける食料品や電気代が値上がりしたため、国内消費が盛り上がらない。一方、製造業の拠点が海外に移ったため、円安でも輸出が伸びない。
⑥2月の景気ウオッチャー調査で、消費増税後となる2~3カ月先の景気判断を示す指標が1月時点より9・0ポイント低い40・0で、東日本大震災があった2011年3月(20・6ポイント減)に次ぐ下げ幅となった。

「力弱さ」なる奇妙な単語は朝日新聞で初めて見ました(広辞苑にはありません)が、まあ意味だけは分かります。

それはともかく、円安→株高による資産効果は想定通りだとしても、最大の誤算(?)は、円安→輸出増加という波及経路が不振であることに尽きると思います。長年の円高進行で、製造業は工場の海外移転と現地生産に体制変更してしまっていますので、少しばかり円安に転換したところで、短期間で国内生産を増加させて輸出に励むということは不可能です。

現在のこの円安(1ドル100~105円の水準)が安定的に将来も維持されるという保証はありませんから、仮に1ドル100円で採算が取れるとしても、海外工場の閉鎖と国内回帰を選択する経営判断は困難です。1ドル120円程度の円安になればまた話は別でしょうが、これは米国が容認しない円安水準であるものと思います。

肝心のアベノミクス第三の矢としての規制緩和・成長戦略としては、カジノ法案程度しか残っておりませんので、これだけで消費税増税によるマイナス効果を打ち消してプラスに持って行くのはいささか困難な感じがします。

また、たとえ日銀の追加緩和があったとしても、経済成長率を持続的に持ち上げるのは相当難儀ですし、米国が1ドル100~105円程度を許容範囲としている様子から判断すれば、更なる円安を招来しかねない今以上に踏み込んだ「異次元緩和」も出来ますまい。

当室としては、中国の経済不安もあり、当面様子見継続やむなしというところです。


[以下、引用]
◆(※1)アベノミクス、相次ぐ想定外 経済指標「変調」
朝日新聞 2014年3月11日(火) 配信

安倍政権の経済政策アベノミクスで、想定していなかった経済統計の「変調」が起きている。10日には昨年10~12月期の実質経済成長率が年率0・7%に下方修正されたほか、今年1月の経常赤字額は過去最大を更新した。消費増税を控え、経済政策のかじ取りは一段と難しくなっている。

10日に発表された2013年10~12月期の国内総生産(GDP)の2次速報値では、物価の変動をのぞいた実質成長率(年率)が前期比0・7%増に下方修正され、1%台を割り込んだ。先月発表された1次速報よりも0・3ポイント下げた。4月の消費増税前の「駆け込み需要」が成長率を押し上げると見られていたが、想定外の急ブレーキがかかっている。

昨年7~9月期の実質成長率も1・1%から0・9%に下方修正された。1~3月の4・5%、4~6月の4・1%に比べると、昨年後半からの減速ぶりが際立っている。

急ブレーキの主因は、景気回復のカギを握るとされる「設備投資」と「個人消費」の力弱さにある。

10~12月の設備投資の伸び率は、1次速報の1・3%から0・8%に下げた。プラスとはいえ、生産を増やすための工場建設などの動きは広がっていない。

個人消費も0・5%増から0・4%増に下げた。昨年前半は株高でもうかった人を中心に、時計や貴金属といった高額品がよく売れたが、その動きは一服した。年後半は増税前の駆け込みで消費が伸びると見られたが、食料や衣料品の販売が振るわなかった。

アベノミクスは、大胆な金融緩和で株高と円安に導くことで、国内では消費を盛り上げつつ、円安の恩恵がある輸出を押し上げるのが基本戦略だ。ところが、賃金が上がらないなかで、円安の影響を受ける食料品や電気代が値上がりしたため、国内消費が盛り上がらない。一方、製造業の拠点が海外に移ったため、円安でも輸出が伸びない。

内外の誤算が足かせとなり、政府が掲げる13年度の実質成長率2・6%の達成は難しくなりつつある。(末崎毅)

■政権、増税後へ正念場

10日発表された1月の国際収支(速報)によると、日本と海外のお金の出入りを示す経常収支は1兆5890億円の赤字だった。日本からお金が出ていく経常赤字が4カ月続き、月間の赤字額としては過去最大だ。

最大の要因は、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の赤字が、2兆3454億円と過去最大に膨らんだこと。火力発電向けの液化天然ガスの輸入額などが円安で押し上げられたうえ、スマートフォンや自動車の輸入も増えた結果、輸入総額は前年同月から30・3%も増えた。

一方、輸出は16・7%増にとどまった。日本企業の海外での稼ぎを反映する「第1次所得収支」は1兆3374億円の黒字だったが、巨額の貿易赤字分を埋めることはできなかった。

安倍晋三首相は10日の参院予算委員会で、経常赤字の拡大について問われ、「急速な変化を回避するためにも、経済再生を進め、デフレ脱却に向けて取り組んでいかねばならない」と答弁した。アベノミクスによる景気回復の「成果」を強調することが多かった安倍首相だが、この日は慎重に言葉を選んだ。

4月の消費増税後は、消費者の買い控えによる一時的な景気の落ち込みは避けられないとみられている。夏場にかけて景気をV字回復させられるかどうかが安倍政権の正念場となる。

経団連の米倉弘昌会長は10日の会見で、消費増税対策として政府が決めた5・5兆円規模の経済対策の効果に期待するとともに、経常赤字縮小に向け「原発を早く安全に再稼働してほしい」と注文した。

市場関係者は、安倍政権が6月にも打ち出す新成長戦略にも着目する。野村証券の木下智夫氏は「日本経済が弱いと、海外投資家は成長戦略をますます注視する」と述べ、大胆な規制緩和など経済政策へのプレッシャーが強まるとみる。(細見るい、山口博敬)

■先行き、震災時に次ぐ下げ幅

2月の景気ウオッチャー調査で、消費増税後となる2~3カ月先の景気判断を示す指標が1月時点より9・0ポイント低い40・0で、東日本大震災があった2011年3月(20・6ポイント減)に次ぐ下げ幅となった。「売り上げの反動減は避けられない」(近畿の百貨店)、「売り上げ減から人員の引き締めが発生する可能性が高い」(東北の人材派遣会社)などの声が出ている。

現状判断も1月より1・7ポイント低い53・0と、2カ月連続の悪化。景気が横ばいであることを示す「50」はかろうじて上回ったが、小売店やレストラン、製造業など幅広い業種で景況感が悪化した。関東などを襲った大雪で客足が遠のいた影響も出た。自動車の駆け込み需要も一部の人気車種ではすでに増税前の納車が不可能となったため、勢いが鈍ったものもあるという。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]