ヘッジファンドの株売り、規制で早まる「Xデー」/2014年は昨年とは逆の動きか

本日の日経新聞WEB刊では、ボルカー・ルールによるヘッジファンドの資産縮小が指摘されています(※1)。

[要点]
①外国人投資家の主役であるヘッジファンドに大きな逆風が吹き始めている。
②ボルカー・ルールによって銀行からの出資や融資が原則禁止されれば、ヘッジファンドの資金源は細ることが予想される。
③日本株に最も大きな影響を与えるのはヘッジファンド。ヘッジファンドは比較的短期間のうちに株価を急騰させ、さっさと利食い売りする傾向がある。
④ボルカー・ルールの実施は4月1日からだが、金融機関に時間的余裕を与えるため、最終的なルール順守期限は15年7月21日となっている。
⑤ボルカー・ルールを柱とする米金融規制改革法の完全実施が近づくにつれ、ヘッジファンドは銀行から借りている資金の返済を迫られるため、投資している国内外の株式や債券、不動産などの売却を急ぐ可能性がある。
⑥これまで日本株高の原動力だったヘッジファンドが、どのタイミングで本格的な売りに転じるのか。ボルカー・ルールが実施される今年から15年にかけて注意が必要。

おそらくは、大方のヘッジファンドが2014年度中にポジション解消売りに動くであろうことは十分に予想できます。当室も2014年度中は、やはり買いポジション増加は控えたいところです。と言っても、売りポジションで利益が出たためしがないため、売りポジションを取る予定もまたありません。


◆(※1)ヘッジファンドの株売り、規制で早まる「Xデー」

経済ジャーナリスト・西野武彦 2014/3/13 7:00 ニュースソース 日本経済新聞 電子版

外国人投資家の主役であるヘッジファンドに大きな逆風が吹き始めています。一つは米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和縮小です。ヘッジファンドはゼロ金利や量的緩和を背景に低コストで大量調達した資金を、世界中の株式や債券、不動産、国際商品などで運用して利益を上げています。

量的緩和が出口に近づけば長期金利が上昇するため、ヘッジファンドの資金調達コストが上昇し、運用成績の足を引っ張る可能性があります。そうなれば年金基金などの機関投資家は、手数料の高いヘッジファンドに運用を委託するより安全な米国債での運用を増やすことも十分に予想されます。

ヘッジファンドに対するもう一つの逆風、というより最大の逆風となる可能性が高いのが「ボルカー・ルール」です。これは米国で2010年夏に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)の条項の一つで、リーマン・ショックのような金融危機の再発を防ぐための、規制法の目玉となるものです。銀行が自己勘定取引で株式やデリバティブ、商品先物などの取引をすることや、ヘッジファンドやプライベートファンドに出資や融資をすることを原則として禁じています。

ボルカー・ルールの実施は4月1日からですが、金融機関に時間的余裕を与えるため、最終的なルール順守期限は15年7月21日となっています。

ボルカー・ルールが規制対象とするのは銀行ですが、最も影響を受けるのはむしろヘッジファンドでしょう。ヘッジファンドは顧客から運用を委託された資金や自己資金のほか、銀行から借り入れた資金を使って運用規模を膨らませ、市場への影響力を高めています。運用資産は現在、約2.5兆ドル(約262兆円)に上るともいわれています。

ボルカー・ルールによって銀行からの出資や融資が原則禁止されれば、ヘッジファンドの資金源は細ることが予想されます。気になるのは、それによって日米や世界の株式相場にどんな影響が出てくるのか、ということです。

日経平均株価は13年の暦年で約6割、12年11月半ばから13年12月末までの期間では約8割も上昇しています。この株高をけん引したのがへッジファンドなどの外国人投資家です。外国人による13年の日本株買越額は約15兆円に上っています。それ以前は10年が約3兆円、11年が約2兆円、12年が2.8兆円でしたから、13年の突出ぶりが分かります。

外国人の中には海外の年金基金や政府系ファンドなども含まれていますが、日本株に最も大きな影響を与えるのはヘッジファンドです。年金基金などは長期投資が基本で、もっぱら株価が割安なときに保有株をコツコツ増やしています。これに対してヘッジファンドは比較的短期間のうちに株価を急騰させ、さっさと利食い売りする傾向があります。先物やオプションなどのデリバティブ取引を得意とするヘッジファンドは売りでも買いでも利益を手にすることができるため、株価の急騰・急落は大歓迎なのです。

2月27日付「『安全資産の円』を疑え 日本株を読み解く新構図」でも触れましたが、ヘッジファンドは日本株に投資する場合、為替差損を避けるため先物市場で円を売ったうえで株を買うのが一般的です。このためヘッジファンドによる日本株投資が増えると、円安・株高を加速することになるのです。

しかし、2014年は昨年とは逆の動きが強まる可能性があります。

1月からFRBが緩和縮小に乗り出したことで、新興国に流れていた資金が米国に回帰し、米国株は高値で推移。新興国は株安・通貨安となっています。新興国では今後、株安・通貨安だけでなく債券安(金利上昇)も招き、景気が一段と冷え込む可能性があります。そうなれば新興国への輸出が減少するため、先進国の景気にも悪影響を与え、株価や債券価格が下落する可能性が出てきます。

またボルカー・ルールを柱とする米金融規制改革法の完全実施が近づくにつれ、ヘッジファンドは銀行から借りている資金の返済を迫られるため、投資している国内外の株式や債券、不動産などの売却を急ぐ可能性があります。

ボルカー・ルールの完全実施まであと1年半近くあるじゃないか、と考えるのは楽観的です。ヘッジファンドは15年7月直前まで待っていては損失覚悟で資産を売却しなければならなくなる恐れがあるため、今年の上~中旬ごろからタイミングを見計らって少しずつ売り始め、年内には大半を手放してしまう可能性があります。

そうなれば世界の株式相場は、1月2日付で見通したように「波乱含みの2014年株価 前半高・後半安に現実味」となる展開が考えられるのです。遅くとも15年前半の早い時期にヘッジファンドから大量の売りが出て、株価が急落することが予想されます。また国債などの債券が大量に売却されれば、世界的な債券安(金利高)を招く恐れがあります。

これまで日本株高の原動力だったヘッジファンドが、どのタイミングで本格的な売りに転じるのか――。ボルカー・ルールが実施される今年から15年にかけ、ますますヘッジファンドの動きから目を離せなくなってきました。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]