「GPIFの買い」の時期と影響

株価の政策的維持、引上げのためにGPIFの資産構成を変更して日本株を買い支えるという政府の「成長戦略」が取り沙汰されています(※1)。一般的には、「GPIFが買ったら我々は売って逃げてお仕舞いにするのが得策だ」といった目論見が投資家のメイン・シナリオの様ですが、理屈からすれば、案外日本株再上昇の妙手なのかも知れません。

GPIFの運用資産構成の改定方向は、日本国債の売却および日本株・外債・外国株の購入という図式です。当室は、その政策的効果を次のように考えます。

①GPIFが日本国債を売却した場合の買い手は、日銀という不動の存在がありますので、国債価格の維持は問題ありません。
②GPIFが日銀に売却した国債代金でもって、日本株を買うとするならば、それは日銀が間接的にETFを買っているのと何ら変わりなく、しかもその購入した株は短期的な売却はせずに中長期的にホールドされますから、マーケットの流通株数が減少することで、株価は維持され易くなります。
③GPIF保有国債の日銀による肩代わりは、日銀がマーケットから国債を購入してマネーを供給するのと同じですので、それだけでも幾分かの円安効果をもたらすものと思われます。
④さらに、GPIFが国債売却代金で外債・外国株を購入するのであれば、当然円売り外貨買いとなりますから、円安効果があります。

以上をまとめますと、GPIFの国債売り・日本株買いまたは外債・外国株買いは、円安効果と日本株高効果を合わせ持つ有効な経済政策手段ということになります。

欧米から見ましても、この政策は完全に日本の国内政策である上に、欧米の外債・外国株を購入するのですから、GPIFの資産構成変更でもって円安に振れたとしても文句の付けようがなく、ありきたりで見え透いた毎度の株価維持政策と見せかけつつも、結構本格的な経済効果を持つ政策かもしれません。

当室としては、ゆるやかに進行するであろうこのGPIF政策には、今から少しずつ乗る予定です。GPIFの資産構成変更が、円安効果を持ち、かつ流通株数を減少させるということであれば、その株価へのプラス効果は案外長持ちしそうな印象を持つからです。要注意なのは、中国経済の悪化の影響度合いだけと思われます。

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(日経平均2年間:SBI証券より引用)


[以下、引用]
◆(※1)日経平均2万円を狙う?安倍政権

キーワードは、3つの「G」

山崎 元:経済評論家 /東洋経済オンラインより抜粋

「GPIFの買い」の時期と影響は?

いささかこじつけめくが、「GⅢ」のこのレースを検討する前に、当面の安倍政権の経済政策に目を転じると、3つのGがポイントになっている。安倍政権は株価を強く意識する「株価連動政権」だが、Gを意識した3つの政策が、それぞれ株価上昇のためのメニューとして用意されている。

第一に成長(growth)戦略、第二に企業のガバナンス(governance)、第三にGPIFの運用方針見直しによる株価買い支えだ。

ここで、前の二つのGを小文字の「g」で書いたのは、タイプミスではない。目下、市場の注目が三番目のGである、GPIFに偏っているからだ。前の二つには、性質上株価に対する即効性が乏しい分、市場の注目度が小さいのだ。

現在最も注目度の高い「G」である、GPIFの運用方針見直しよる株価買い支えについて、簡単にまとめておこう。前回の筆者の番のコラムで心配した通り、政策としての善し悪しは明らかに「悪し!」なのだが、情けないことにGPIFに運用方針を見直させて株式や外貨建て資産を買わせることが「成長戦略」の一環として登場することが、ほぼ確実な情勢だ。ここは善悪判断を離れて、「予想」に割り切って物事を考えよう。

GPIFの運用方針見直しが発表されるのは、今の情勢では9月だろう。GPIF自体は、それまで大きくは買い増しに動くことができない。現在、GPIFの基本ポートフォリオで、「国内株式」は11%が標準組み入れ率で「許容乖離幅」(バカみたいに大きくて運用計画としては粗末なのだが)は6%であり、目下の国内株式組み入れ率は上限の17%に近いレベルにあると推測される。

GPIFの国内株式標準配分比率は22%に!?

これをどの程度まで見直すかだが、現状を17%と見ると、新たな基本ポートフォリオの標準配分比率で「20%」を切る数字では、インパクトが乏しく、下手をすれば発表後に失望売りが出かねない。最低で20%、政府筋からの圧力次第では、これまでの倍増の22%くらいまではあり得るか、と筆者は予想している。

アセットアロケーションの仕組みから考えて、国内株式が増える場合、外国株式や外国債券も増える公算が大きい。この場合、外貨の買いが発生するので、株価に対しては、円安のアシスト効果もあり得る。

単純化して考えよう。17%を基準に、「国内株式」1%の配分増に対して日経平均1000円上昇と考えて、「20%」なら1万8000円、「22%」なら2万円、と仮置きしておこう。ただし、これは計画発表後に動くのではなく、すでに今から情報の折り込みが始まっているし、何よりも、新計画発表前に「情報漏れしないわけがない!」と考えられる。

相場の機微を皆まで説明するのは無粋だからやめておくが、(1)新計画が発表される段階では相当程度相場に織り込まれている可能性が大きいこと、(2)GPIFやGPIFを意識する資金(45兆円くらいある)の買いは「じわじわ」出るので、売っても相場が下がりにくい「巨大なプット・オプション」が株価に付いたような状態となって株価を押し上げる、しかし(3)「買い」の弾が尽きるとだらだらと株価が下がる、という程度の「展開のアヤ」を、投資家は今の段階から想定してゲート・インして欲しい。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]