中国「信託商品」、連続デフォルト回避できたか

中国のシャドーバンキング不良債権化問題は、昨年来ウォッチして来ているテーマですが、恐れていた6月(昨年6月には短期金利が急騰した)を何事もなかったかの様に通過しています。しかしながら、日経新聞の報道によれば、どうやら地方政府等の借り換えで不良化が先送りされているだけとも見られます(※1)。

債権が不良化するかどうかは微妙な側面があり、景気が低迷すれば不良化し、景気が上向きになれば不良化解消となる場合もよくある話です。

中国の場合は、GDP成長率が不正確な数値ですので、実態経済の良し悪しの判断も難しいところではありますが、上海総合指数の動向から単純に判断すれば、景気は低迷状態にあると思われます。そうであるならば、かつての日本のように、不良債権は「飛ばし」状態でどこかが引き受けて繰り回していると理解するのが妥当です。「飛ばし」ている間に景気が回復軌道に乗ってしまえば、その飛ばした不良債権は表面化することなく「正常化」してしまうこともあり得、中国としてはそれを期待しつつ腕力で封殺しているというのが実情でしょう。ここはやはり慎重に見ておくのが無難だと思います。

脱線話として言えば、日本の国債残高についても、現在のところ普通の方法で簡単には償還できそうもありませんから、状況としては取り合えず日銀に「飛ばし」ているのと大差は無く、一般的先行きとしては①日本のGDPが着実に成長して対GDP比較で国債残高の比重が縮減されるか、もしくは②税収増加で国債償還が進行するか、あるいは③インフレの進行で国債の相対価値が目減り・下落するかのいずれかで対処するしかありません。それらのどれでもなければ、④トリルズのような「増資」的発想の償却以外には救済策はなさそうです。


[以下、引用]
◆(※1)中国「信託商品」、連続デフォルト回避できたか
環境好転もなお潜在リスク 2014/7/20 6:05 ニュースソース 日本経済新聞 電子版

【NQN香港=長尾久嗣】昨年から中国経済の波乱要因となってきた「影の銀行(シャドーバンキング)」。なかでも「信託商品」は今年半ばに償還が相次ぐため、金融市場の火種になると目されてきた。しかし、債務不履行(デフォルト)はそれほど目立たず、市場の警戒は取り越し苦労に終わった感もある。中国金融市場は危機を回避できたのか。

■償還期迎えた信託商品、意外に冷静な市場
中国信託会社大手の中誠信託。今年1月に同社の信託商品「誠至金開1号」がデフォルト寸前まで追い込まれたが、今月25日に償還期限を迎える「誠至金開2号」にも危機が迫る。山西省の炭鉱会社に出資した同商品について、中誠は投資家に「満期を延長する可能性がある」と連絡済みだ。前回の「1号」では土壇場で匿名投資家が資金を提供し、なんとか元本返済にこぎ着けたが、「2号」はこのままデフォルトするとの観測が市場では強まっている。

もっとも、運用資産額が13億元と小さいこともあり、市場の関心が高いとはいえない。

今年前半までは、信託商品の大量償還が年央から始まると盛んに喧伝(けんでん)されていた。それが大量デフォルト懸念を誘い、市場心理に冷水を浴びせかけていたが、フタを開けてみればおおむね平静を維持している。株価は低位安定。銀行間取引金利も足元は上昇傾向だが、跳ね上がるというほどではない。中誠信託の「2号」のほか、中国民営建設会社のコマーシャルペーパー(CP)も今月23日の期限に償還できない可能性が高まっているが、パニックにはほど遠い状況だ。

■融資や起債で進む資金の借り換え、当局の介入も一役
懸念がひとまず杞憂(きゆう)に終わった理由は、金融市場の資金逼迫がやや緩んだことが大きい。UBSの汪濤氏は(1)銀行融資と債券発行の伸び(2)新しいシャドーバンキング商品による借り換えの進捗(3)中国人民銀行(中央銀行)による緩和政策(4)デフォルト阻止に向けた地方政府の介入増加――の4要因を指摘する。

当局の規制強化もあり、信託商品の組成額は減速傾向。一方で「正規」の資金供給ルートである銀行融資は伸びが目立つ。昨年1年間に残高を3兆元以上増やした証券会社の資産運用商品も、ロールオーバー問題に直面した信託商品の資産を買い取っているとみられている。

汪氏によると、こうした信用環境の改善は「今年10~12月期まで続く」という。ただ、経済を支える不動産相場が下落基調に転じるなか、地方政府の財政悪化も予想されるだけに「市場の懸念はいずれ復活する」と警戒モードを解いていない。

■くすぶる「危機先送り」観測、カギは不動産市況の回復
クレディ・スイスの陶冬氏も似た見立てだ。今年7~9月期に1兆3000億元、10~12月期に1兆4000億元、来年1~3月期には1兆5000億元の信託商品が満期を迎えるが、足元では銀行融資や地方政府による金融支援などでひとまず借り換えに成功するケースが続出しているという。陶氏によると1~5月の信託商品のデフォルトは9件だが、5月だけで少なくとも10件以上がデフォルト寸前で救済されたとしており「今年半ばとされた信託商品の償還ピークは来年初めに先送りされた」と読む。

それでも、景気が勢いを取り戻し、莫大な資金の受け皿になってきた不動産相場が反発しない限り、信託商品の単なる“飛ばし”に終わるリスクは残る。陶氏は「今年後半から来年前半に、デフォルトのニュースが連鎖反応を引き起こしかねない困難な時期を迎える」と予想している。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]