長期投資の極意は「不況を買う」

龍谷大学教授の竹中正治氏の投資方法は、当室でも参考としています(※1)。要点としては次の通りですが、なかなか実行は難しいと思いますし、そもそも売買の判断水準が不明瞭な点が厄介です。

①「不況時の株式買い」と「好況時の株式売り」。
②さして、その間の「投資中断」を6~8年程度のサイクルで繰り返す。
③根底にあるのは「上昇相場も下落相場も永遠に続くことはなく、長期でみれば資産価格は必ず平均的な状態に回帰する」という考え方。
④好不況は、内閣府の景気動向指数のうち、景気の山谷を示すCI一致指数(グラフ参照)の方向で判断する。
⑤10年、20年の株価チャートを見て、大きな流れの中で株価の水準を判断するのが有効。

総悲観の中で買い向かうのは、相当な勇気が必要ですし、ほどほどの水準で売却するのもまた実行は困難なのが普通です。現在は、ほどほどの水準なので、日本株の場合は、「不況時に買った」持ち高の半分程度の売却が妥当ということの様です。


[以下、引用]
◆(※1)長期投資の極意は「不況を買う」 マネーの常識・非常識 夏の集中講座(4)
2014/8/29 7:00日本経済新聞 電子版より抜粋

「株式に長期投資するなら不況のときだけ買うべきだ」。龍谷大学教授の竹中正治氏はそう主張する。

竹中氏が日本株投資を始めたのは、日本が消費税率引き上げや金融危機で不況のさなかにあった1998年。株式市場がITバブル崩壊に見舞われた00年以降も、評価損を抱えながら少しずつ買い増していった。損益がプラスに転じたのは03年で、相場が戻り歩調の04~06年には何度かに分けて保有株を売却。その後はいったん日本株投資を休止したが、リーマン危機後の09年に再開し、10~12年の3年間はじっと株価の回復を待ち続けた。そして株価が急反発した昨年は戻り売りに徹し、今は「保有株数を半分程度に減らしたところ」という。

「不況時の株式買い」と「好況時の株式売り」、その間の「投資中断」を6~8年程度のサイクルで繰り返すという気長な投資で、評価損益が水面下に沈んだままの我慢の期間も結構長い。根底にあるのは「上昇相場も下落相場も永遠に続くことはなく、長期でみれば資産価格は必ず平均的な状態に回帰する」という考え方。だから、短期的な株価の変動に一喜一憂する必要はないという。

では、経済の専門家でもない普通の人は、どのように景気の好不況を判断すればいいのだろう。竹中氏は2つの方法を挙げる。

1つは内閣府の景気動向指数のうち、景気の山谷を示すCI一致指数(グラフ参照)の方向で判断する方法だ。一致指数が下げ続けてきたら買いの準備を、上げ続けてきたら売りの準備をする。同指数は株価の遅行指標だが、「長期投資なら慌てずゆっくり反応していい」という。2つめが四半期ごとに日本経済新聞に載る「業界天気図」を利用する方法で、「雨」の業界が増えているのか、「晴れ」の業界が増えているのかを見る。
画像


竹中氏が「好不況の判断以上に大切」と話すのは、近視眼的な思考で株価の水準を判断しがちな、心理的バイアス(アンカーリング効果)の克服だ。例えば、日経平均が8000円台で低迷する時期が長く続くと、多くの人は1万円がとても高く感じてしまう。すると、せっかく8000円台で投資できても、大台に乗ったとたんに喜んで売ってしまい、その後の上昇相場は指をくわえて眺めるしかなくなってしまう。そんな心理的バイアスをコントロールするには、「10年、20年の株価チャートを見て、大きな流れの中で株価の水準を判断するのが有効だ」と強調する。

■総悲観のとき歴史的安値を買う

「株価が下がれば下がるほど、いい株が買える」。そう話す田辺経済研究所の田辺孝則代表も「不況期の株式買い」の実践者だ。竹中氏の投資対象が主に日本株ETF(指数連動型上場投資信託)なのに対し、田辺氏は個別株投資が専門だ。

02年に会社を設立し、運用を始めてから12年。田辺氏が資金のほぼ全額を投資に振り向けた局面はこれまでに3回あった。1回目は日本が信用危機の渦中にあった02年秋から03年春にかけて。2回目はリーマン危機後の09年。そして3回目が1ドル=70円台の超円高に見舞われていた12年だ。いずれの時期も、株式市場は「株価はどこまで下げ続けるのか」「日本経済は崩壊しかねない」と総悲観のムードに包まれていた。

多くの人が怖くて手がすくむとき、どんな方法で銘柄を選んで買ったのか。田辺氏は主に3つを選別基準にしているという。

まずは株価の絶対水準だ。過去30年のチャートをみて、株価が歴史的な安値水準にある銘柄を選ぶ。次が指標面からの割安度。株価収益率(PER)の10倍割れや株価純資産倍率(PBR)の0.8倍割れなど、企業の実力から見て十分に割安かどうかをみる。そして最後が自己資本比率などから、不況期でも潰れる心配のない会社を選ぶという。

■大相場は10年に1回程度

こうした基準で03年に買ったのが住友金属工業(現新日鉄住金)や丸紅など。当時は経営不安もささやかれた両社だが、「これらの会社が潰れたら日本もおしまい」というのが当時の田辺氏の判断だ。平均買いコストはそれぞれ50円台、200円台で、その後に大きな利益をもたらした。両銘柄はすでに売却済みで、現在は超円高の時期に「行き過ぎた円高はいずれ修正場面がくる」と買い向かったソニー(平均買いコスト993円)やNEC(同157円)などが「大きな財産になっている」。

今はこうした含み益の大きな銘柄を大切に抱える一方で、大半の銘柄は昨年の上昇相場で売却し、運用資産に占める現金比率を50%に高めている。「個別株が数倍になる大相場は10年に1回程度」が田辺氏の考えだ。

最後に、これまで会った長期投資の成功者らの話から、不況を買う逆張り投資家の特徴をまとめてみた。「おまえはできるか」と詰められると窮してしまうが、少しでも読者の参考になれば幸いだ。

(1)基本は楽観的。市場がどんなに悲観一色のときでも、日本経済が破綻するなどとは考えない。だからお先真っ暗のような時に買い向かえる。

(2)冷静。悲観の時期も楽観の時期も永遠には続かないと考えて、あまりムードに流されない。

(3)辛抱強い。投資のチャンスは数年に1度と割り切って、「休むも相場」をしっかり実行できる。

(4)株価の大底を買おうとしない。「大底なんて誰も分からない」と思っている。十分に株価が安くなってきたと判断したら、慎重に、少しずつ何回かに分けて買い下がる。

(5)株価の天井も予想しない。上昇相場でも何回かに分けて保有株を売却する。
(編集委員 北沢千秋)
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]