日本の消費増税めぐる判断は世界に影響

財政赤字の大きさと低成長率との矛盾は、日本が世界の最先端(?)を行く課題です。少子高齢化がその根幹にあるという考え方もあります。

財政のプライマリーバランス確保のための消費税増税ではありますが、目先の景気状態は決して芳しいとは言い得ず、現在の8%から10%への税率引き上げは先送りが無難かと思います。いつまでも増税なしとは申しません。引上げのタイミングの問題だけです。

ウォールストリート・ジャーナル日本版に掲載されていますIMFの見解もどっちつかずの見解であり、経済学的にも論定はできない状況ではあります(※1)。当室管理人としては、まだケインズ政策でよろしいかと思います。ただ、建設業界は資材・人手ともにタイトになっていますので、建築土木工事への支出は有効性が乏しく、別な方面への支出を考える必要がありましょう。


[以下、引用]
◆(※1)日本の消費増税めぐる判断は世界に影響
By Jacob M. Schlesinger  ウォールストリート・ジャーナル日本版
2014 年 10 月 13 日 12:40 JST

4月の消費税増税で消費が落ち込むなか、日本政府が一段の増税に踏み切るべきかどうかに世界が注目している

【東京】国際通貨基金(IMF)は先週、今年4月の消費税率引き上げで予想以上の打撃があったとして、日本の経済成長見通しを下方修正するとともに、25%の確率でリセッションに陥るとの見解を示した。IMFはまた、日本の「非常に高水準の公的債務」を指摘し、来年に予定されている2回目の同税引き上げは「財政節度の実績作りに決定的に重要だ」と述べた。

安倍晋三首相は年末にかけて、同税を現在の8%から10%に再引き上げするかどうかの決定を下すが、これは世界的に先進国を混乱させている議論に似ている。より緊急性があるのは、ある国が債務をカバーしきれなくなるほど年老いる前に、より早いペースで成長することなのか、あるいは債務を返済することなのかという議論だ。

経済協力開発機構(OECD)の財政専門家イバン・ギレメッテ氏は「老化は公的財政に圧力となる」とし、これは退職者が年金と医療費を通じて資金を吸い上げるが、一方で所得や税収をほとんど増やさないためだと説明。「日本は他の国が今後歩む道を示している」と話した。

日本が直面しているジレンマは、財政支出削減は脆弱な経済を再びリセッションに追い込む可能性があるとして、最近フランスとイタリアが財政赤字計画を先送りした欧州の力学に似ている。

米国は現在、底堅い成長を享受し、財政赤字は縮小しているが、一方で日本と共通の条件もある。高水準の政府債務と人口の高齢化だ。

日本の苦境は、ギリシャ―その後はポルトガル、アイルランド、イタリアも―が多額の公的債務のデフォルトの可能性に直面して市場がパニックに陥り、救済を受ける見返りに財政支出を減らし、税金を引き上げることに同意した際にわき上がった議論の延長線上にある。欧州の景気低迷が続いたことから、IMFは2012年には、緊縮戦略が裏目に出たのではないかとの不安を抱き、「過度の」支出削減は「景気回復を一段と損ねるリスクがある」との見解を示した。

欧州の緊縮財政については修正があったにもかかわらず、日本については内外の政策立案者―IMFから日本の財務省に至るまで―のコンセンサスは依然として、短期的なコストは予想以上になるが、日本は増税を続けるべきだというものだ。

その論理は、日本は債務・人口動態のあまりに深い溝にはまり込んでいるからというものだ。政府の借り入れはその経済規模の倍になっている。そして国民の4人に1人は65歳以上だ。いずれの数字もこれまでのところ世界で最も高い。

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左図:各国の65歳以上の人口の比率、右図:公的債務の対GDP比率

日本経済研究センター(JCER)は、19%の消費税を容認するリポートの中で、安倍首相が10%への増税を認めても、「それ以上の税率引き上げがなければ、国債のデフォルトは避けられない」としている。

増税支持派は、世界は日本の苦境から財政問題解決は待ったなしだということを学ぶべきだと主張する。長く待てば待つほど、事態は難しくなる。

彼らは、増税の先送りや増税の見送りは市場の混乱を引き起こすとしているが、投資家はこれまでのところ心配していないようだ。10年物日本国債の利回りは過去1年以上、1%を下回って取引されており、現在は0.5%程度と、世界最低のスイスの水準とほぼ同じだ。

しかし、債券保有者が債務大国はデフォルトの危険があると神経質になれば、こうしたリスクを担保するためにより高い金利を要求し、これは税金のように、一つの国を押しつぶすこともあり得る。こうしたことはギリシャ、アイルランド、ポルトガルの国債利回りが2桁に達したときに起きた。

増税支持派は、日本が増税の約束をしているためにこうした事態を免れていると指摘している。このため約束の撤回は急激な反発を引き起こす可能性がある。市場が政府の債務は「持続不可能」と決めつけたら、なすすべはない。日本の債務はずっと以前に、何の苦もなく危険水域を越えてしまっている。

増税懐疑派は、投資家を落ち着かせ、債務を減らすためのより良い方法は、債務の実質的価値を減らすためにインフレ率を加速させ、新規の収入を生み出すことで、一時的な景気回復を確固としたものにすることだ、としている。

スタンダード&プアーズ(S&P)レーティングス・サービシズの日本アナリスト小川隆平氏は「成長率が全てだ」とし、「景気回復の背骨が折れたら、その方がむしろマイナスだ」と話した。同氏は、日本には少なくとも短期的には債券市場の金利急騰を冷却できるだけの強力なホースがあるとしている。それは経済に資金を注入するために民間部門から年間4600億ドルの国債を購入している日本銀行だ。大手の安定した債券購入者は、それがリターンを目的としていない場合は特に、低い金利を確実にする。

日銀が口にしている債券購入の目的は、より高い成長率とより低い金利であり、浪費家の政治家たちが帳簿の均衡を崩したままにするのを手伝っているわけではない。正統的な経済学は、「景気刺激」と「債務のマネタイゼーション(中央銀行による財政赤字の穴埋め)」を分かつ理論的ラインを越える中央銀行は金融バブルとハイパーインフレに直面する、としている。

日本は市場とインフレがアベノミクス以前の状態に戻らないように苦闘している。インフレ率は1%近くの水準に張り付いていて、日銀が目標とする2%を大きく下回っている。

日本の選択肢を、このように考えることもできるだろう。日本は財政、金融政策の限界がどこにあるのか探っている。増税反対派はこの実験を続けることを求めている。この日本の臨床試験は、最終的に治癒をもたらすにせよ毒となるにせよ、遅々とした成長と低インフレ率に見舞われた世界の国々に、いつ各国が日本のようになるかを知らせることになるだろう。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]