アベノミクス相場は終わったか否か

ダイヤモンド・オンラインによる山崎元さんの現時点における相場観として、山崎式経済時計で、「現在の世界経済と資産価格の位置を時計の針の高さ(12時が頂点で、6時がボトム)にたとえると、米国が11時半、日本が10時半、欧州が7時半、中国が2時、くらい」ということです(※1)。

今回の記事の要点は次の通りであり、結論としては、「投資家は、まだパーティー楽しんでいていいが、二日酔いの可能性には気をつけたい」、つまり、「現在直ちに株式投資を縮小すべきだとは思わないが、今後来年の半ばくらいにかけて、ある程度の手仕舞いを徐々に実行すべきタイミングに差しかかっている」ということです。

①米国経済に関して、いくつか弱い数字が出たことから懸念が高まって、米国の長期金利が低下し、為替レートが円高に振れた。
②ヨーロッパ経済が不調で、「日本型」のデフレに至るのではないかとの懸念が台頭。
③不動産価格が下落する中で、中国経済もじりじり成長率を落としている。
④消費増税でケチが付いた国内経済も、今ひとつの状況。
⑤現時点で、日本に影響する海外要因は、米・欧・中を総合してプラス・マイナス・ゼロくらいと見ることができそうだ。日本は、通常であればもうしばらく順調に景気が拡大し、株価も上昇する局面であっておかしくない。株式投資の判断としては、まだ「買い」が基本だ。米景気の弱い指標は、むしろFRBの利上げ判断を遠のかせる点で好材料だとも言える。
⑥今回は世界の景気と株価が米国一国の投資資金に大きく依存しているため、一度目の利上げ、あるいは利上げの気配で株価が崩れる可能性がある。
⑦投資家は、まだパーティー楽しんでいていいが、二日酔いの可能性には気をつけたい。
⑧来年半ばくらいにFRBの利上げが現実化する前に、もう一段階投資を縮小する、というくらいの目処でよい。

中国経済のマイナス影響は、その崩壊プロセスにもよりますが、隣国だけにおそらくは一度甚大な影響を日本の株価に与えるものと思います。


[以下、引用]
◆(※1)アベノミクス相場は終わったか否か?
【第351回】 2014年10月22日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

ダイヤモンド・オンライン 山崎元のマルチスコープより

主因は海外だが消費増税で
ケチが付いた国内経済も今ひとつ

株価が不安定な動きになっている。9月25日には、日経平均で1万6374円の今年最高値を付け、順調に見えたが、その後海外景気への懸念が高まり、為替レートが円高に戻るなどの悪材料が続いて、先週末には1万4532円まで下落した。

高値から11.2%の下落であり、一相場の終わりの目処とされる2割にはまだ至っていないが、昨年5月の波乱局面以来、1万6000円近辺を抜けきれずに跳ね返される展開は、感触が良くない。今週に入ってからも、月曜日に500円高、火曜日には一転して300円安と激しい動きになっている。

主な原因は、海外経済だ。

好調を続けていて、来年半ば頃にはFRB(連邦準備制度理事会)が利上げに踏み切るのではないかとの予想もあった米国経済に関して、いくつか弱い数字が出たことから懸念が高まって、米国の長期金利が低下し、為替レートが円高に振れた。

また、先頃行われたG20の会合でも言及されたように、ヨーロッパ経済が不調で、「日本型」のデフレに至るのではないかとの懸念が台頭している。一時は好調だったドイツ経済も、2四半期連続でマイナス成長に陥る(定義上は「不況」だ)公算が大きく、イタリア、フランスなども低調だ。

不良債権問題は、一般に金融機関が、(1)損失を十分開示し、かつ(2)十分な自己資本を持つようにする、ことが解決の条件だが、各国政府が自国の銀行の面倒を見なければならないヨーロッパでは、(1)の段階がクリアされていないため、まだ信用が順調に拡大できる局面にない。病気に喩えると「慢性病」的な状況にあり、再びギリシア危機のような金融不安が発生してもおかしくないリスクを抱えている。

加えて、不動産価格が下落する中で、中国経済もじりじり成長率を落としている。端的に言って、世界経済はアメリカ一国の好調が頼みの綱だ。

消費増税でケチが付いた国内経済も、今ひとつの状況だ。

実質的な購買力の減少から消費が低迷していることに加え(8月の消費支出は前年比-4.7%)、在庫が積み上がって鉱工業生産にも勢いがない(8月は前月比-1.9%、前年比-3.3%)。景気下降とまで言い切ることはまだできないが、少なくとも景気回復には一服感が出ている。

軽減税率を得たいせいか、新聞各紙は景気に関して悲観的な書き方をしていないように見えるが、「消費増税の反動はなかった」とはとても言えない。

安倍政権の劣化は予想より早い
「公的資金の買い」はどうなるか?

加えて、年末までに消費税率の再引き上げが決まる可能性が、重苦しい圧迫要因だ。今のところ、「景気が良くても、悪くても、結局消費税を上げるのではないか」との悲観的な予想が一般的だが、再引き上げが決まった場合、来年の景気後退が一層現実味を帯びる。

加えて、目玉人事だったはずの女性閣僚2人が早々に辞任するなど、「アベノミクス」を支える安倍政権の劣化が、予想よりも早く始まっている。筆者は、「消費税10%」を決めて官僚集団にとって安倍政権が「用済み」となってからの内閣弱体化を予想していたが、それよりも劣化の進み具合が早い。

一方、市場が期待していた「公的年金の買い」は、塩崎厚労相がGPIF (年金積立金管理運用独立行政法人)の組織体制にこだわりを見せていることで、株式の大幅買い増しを発表すると見られているGPIFの新しい基本ポートフォリオの発表が遅れている。

GPIFの運用計画発表は、事の当否はともかくとして、政府が株価対策として使える有力なカードだが、これがどこで使われるのかが不透明になってきた。

株価の上昇タイミングを遅らせることで、消費税率引き上げの先送りが可能になるなら、塩崎大臣のファインプレーだと考えることもできるが、現時点ではそこまで深読みして期待すべきではないだろう。

ただし、「公的年金の買い」というファクターが今後に控えていることは、意識しておくべきだろう。

「山崎式経済時計」で占う
今後の展開はFRB次第

現在の世界経済と資産価格の位置を時計の針の高さ(12時が頂点で、6時がボトム)にたとえると、米国が11時半、日本が10時半、欧州が7時半、中国が2時、くらいに思える。(下図の「山崎式経済時計」をご参照ください)
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現時点で、日本に影響する海外要因は、米・欧・中を総合してプラス・マイナス・ゼロくらいと見ることができそうだ。日本は、通常であればもうしばらく順調に景気が拡大し、株価も上昇する局面であっておかしくない。株式投資の判断としては、まだ「買い」が基本だ。米景気の弱い指標は、むしろFRBの利上げ判断を遠のかせる点で好材料だとも言える。

だが例外的に、2度にわたる消費税引き上げで、時計の針がしばし逆回りする可能性があることには注意が必要だ。

ただし、逆回り(景気後退)が起こってしまった場合、次の展開は再び金融緩和を動力にして時計が回り始めることになるので、株価が長期的に下げ続けるわけではないことに注意が必要だ。

中央銀行の役割は、パーティーが盛り上がっている最中にパーティーの片付けを始めることだとよく言われる。インフレあるいは景気の過熱のリスクに備えて金融の引き締めが必要であることをたとえたものだが、FRBは後片付けを始める勇気をいつ持つようになるだろうか。

失業率は5.9%(9月)とFRBが一時目処としていた6.5%を下回るところまで改善したが、物価の上昇率は、消費者物価(対前年1.7%、8月)、卸売物価(同1.6%、9月)と2%に届いていない。

今のところ利上げが「必要」な環境ではないが、インフレ率が上昇してきた場合などに「利上げされても、文句は言えない」状況にある。

通常、株価は一度目の利上げで直ちに崩れるのではなく、何度かの利上げの後に天井を打つ形になることが多いが、今回は世界の景気と株価が米国一国の投資資金に大きく依存しているため、一度目の利上げ、あるいは利上げの気配で株価が崩れる可能性がある。

米国の利上げが起こった場合
心配なのは株式よりも債券

ところで、米国の利上げが起こった場合に、心配なのは株式よりもむしろ債券だろう。低利の短期資金で資金を調達して、信用リスクのある債券で利回りを稼ぐポジションが世界的に巨額に積み上がっており、これが投げ売りされて大きなロスが発生し、混乱が起こるかもしれない。銀行が直接ポジションを持っていなくても、銀行システムに影響が出る可能性はゼロではない。

一方日本の景気は、消費税率の10%への再引き上げが決まった場合、来年10月の引き上げ直前に軽い駆け込み需要が発生した時点あたりをピークに、下降局面入りする公算が大きい。

投資家は、現在直ちに株式投資を縮小すべきだとは思わないが、今後来年の半ばくらいにかけて、ある程度の手仕舞いを徐々に実行すべきタイミングに差しかかっているのではなかろうか。

ただし、株価の水準自体は、東証一部平均でPER(株価収益率)が15倍台、PBR(株価純資産倍率)が1.25倍見当と、懸念に値するほど高くはない。「手仕舞い」と言っても、多くの投資家にとって株式を全て売り払うことが適当な行動にはならないだろう。

まずは、たとえばGPIFによる買い支えで株価が上昇するような局面があれば、アベノミクスに期待して上乗せした投資分を引き上げる程度のイメージだ。次に、来年半ばくらいにFRBの利上げが現実化する前に、もう一段階投資を縮小する、というくらいの目処でいいと考える。

投資家は、まだパーティー楽しんでいていいが、二日酔いの可能性には気をつけたい。
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[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]