スイス「安全通貨の乱」 介入終了に市場動揺

スイスフランの迷惑な為替政策の終了決定について、備忘のため日経新聞の記事を掲載しておきたいと思います(※1)。

急激なスイスフラン高の余波で、予定外に円高→株安に振れてしまい、みんなが迷惑しました。

それにしても、こうした波乱含みの情勢下では、何ゆえか日本円の信任は厚く、米ドルよりも円が買われてドル円相場までも円高に振れてしまうというのは、単純に喜んで良いのかどうか、日本株が下落するのでいささか複雑な心境ではあります。日銀は量的緩和中で当面それを継続する方向であるのに対して、米国FRBは量的緩和を終了して利上げを探る段階にあるという、日米両国の金融政策の効果相違を無視した円高となっています。

ただ1月16日にはドル円は元に戻っていますので、混乱も来週にはまた収束に向かうことでしょう。

スイスフラン/円 買・売 137.11-137.27↓(15/01/17 06:38)
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(5年間チャート:SBI証券より引用)
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(ドル円10日間:SBI証券より引用)

◆(※1)スイス「安全通貨の乱」 介入終了に市場動揺

2015/1/16 23:04日本経済新聞 電子版

 世界の金融資本市場は16日、スイス国立銀行(中央銀行)が前日に打ち出した無制限の為替介入政策の終了決定で大きく揺れた。スイスフランが対ユーロで急上昇した影響で、円相場も急激な円高・ユーロ安となり、輸出採算の悪化懸念で株安につながった。大幅な原油安で市場はもともと不安定だったが、相場の下支え役だった中銀の突然の政策変更に虚を突かれた格好だ。

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スイス国立銀は欧州債務不安が広まった2011年から、自国通貨スイスフランの急上昇を抑えるため、通貨ユーロに対して1ユーロ=1.20スイスフランを上限として無制限に為替介入してきた。主要国中銀としては極めて異例の通貨高対策で、ユーロ安が進んだため介入時に買い入れたユーロに含み損が発生していた。

スイス国立銀の15日の介入終了は「市場の誰も予想していなかった」(クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司氏)ため動揺が広がった。大きく売られたのはユーロだ。

無制限介入によってスイスフランが実勢相場よりも割安だったため、ユーロ売り・スイスフラン買いが殺到し、ユーロはスイスフランに対して30%も下落した。ユーロは対ドルや対円でも引きずられるようにして全面安となり、16日の東京市場では円相場が対ユーロで4円近く上昇して一時1ユーロ=135円を上回った。上昇幅は約1年ぶりの大きさだ。

対ユーロで急激に円高が進んだため、欧州向け輸出の採算が悪化するとの懸念が浮上した。株式市場では輸出企業株を中心に売られ、日経平均株価は下げ幅が一時500円を超えて1万6600円を割り込む場面があった。欧州で積極的に事業展開するヤマハとソニーの株価は5%下げた。

震源地であるスイスでも、時計メーカーなど輸出企業の株価が大きく下落した。スイスは金融市場が安定して世界的な優良企業も多かったが、スウォッチグループの株価は15日に16%も下落し、ロシュなど医薬品企業の株価下落も目立った。株価だけでなく、同国の10年物国債利回りは0.06%まで急低下し、日本(0.24%)を下回る史上最低の金利をつけた。

市場の動揺を増幅したのは、震源地が「安全通貨」とされるスイスフランを管理するスイス国立銀だったためだ。08年のリーマン・ショック以降、主要国中銀は国債だけでなく住宅ローン担保証券や社債などリスク性資産まで買い入れて、市場を立て直してきた。スイスの突然の政策変更は「中銀の政策をどこまで信用できるか市場が不安になった」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏)。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が15日のテレビ番組で「私に連絡がなかったのは驚きだ」と苦言を呈するなど、政策当局にも動揺が広がった。

もっとも市場では、スイス・ショックによる為替相場や株式市場の混乱は一時的との見方もある。HSBCグローバル・アセット・マネジメントのビル・マルドナド氏は「米景気は減速せず、世界経済は正常化する。欧州中央銀行(ECB)や日銀の追加金融緩和も見込まれ、資金が縮小する懸念も小さい」と指摘する。16日の為替市場ではスイスフランの上昇が一服し、対ユーロでも横ばい圏内だ。

市場は今月下旬に開くECB理事会や日銀の金融政策決定会合を注視する。ECBが量的緩和を決定するなど中銀が市場を支える姿勢を示せば、再び株価は緩やかな上昇基調に戻るとみる。


◆(※2)スイスフラン、なぜ上限撤廃? 介入継続に限界(Q&A)

2015/1/16 23:14日本経済新聞 電子版

スイス国立銀行(中央銀行)は15日、対ユーロで設定していたスイスフランの上限を撤廃すると突然発表し、直後にスイスフランが急騰するなど世界の金融市場に波紋が広がった。スイス中銀が採用していた制度を再点検した。

Q なぜ上限があったのか。

A スイス中銀が1ユーロ=1.20スイスフランの上限を設定したのは2011年9月だ。上限を超えてスイスフランが高くなりそうなら、中銀が無制限のスイスフラン売り介入をするとも宣言した。主要通貨で人為的に相場を抑える仕組みは異例で、当初から長続きしそうにないとの声も多かった。

それでも上限を設けたのは、08年秋の金融危機(リーマン・ショック)に、ユーロ安を招く欧州債務危機が続き、投資家がスイスフランを「安全な資産」として買う動きが強まっていたからだ。スイスは永世中立国で金の保有も多く、紛争など有事の際は景気に関係なく資金が向かいやすい。医薬品や時計など輸出が国内総生産(GDP)の過半を占めるスイスで、通貨高が経済を冷やすとの警戒感も広がった。

Q 「無制限介入」をうたったのはなぜか。

A 「徹底して介入を続ける」と表明することで口先介入の効果も狙った。実際、当初はあまり介入しなくても通貨高は収まっていた。だがギリシャのユーロ離脱が危ぶまれた12年に介入額が増え、スイス中銀の外貨準備はGDPの7割を超える規模に達した。

Q なぜ突然、上限を撤廃したのか。

A 欧州中央銀行(ECB)が量的緩和に動くとの観測に加え、原油安を受けた新興国通貨の下落もスイスフラン買いの材料になり、市場の圧力に耐えられなくなったようだ。ヨルダン総裁は「国際情勢の変化から持続可能でないと判断した」と語った。市場の流れに抵抗して介入を続ければユーロ建て資産の含み損が膨らみ、中銀の健全性を損なう恐れから焦りを深めたとみられる。

(ジュネーブ=原克彦)
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]