米シェール、大量倒産ない ハーバード大マウジェリ氏に聞く

シェール層の多くで採算ラインは1バレル30~40ドルだということです。


[以下、引用]
◆米シェール、大量倒産ない ハーバード大マウジェリ氏に聞く
2015/1/22付日本経済新聞 朝刊

原油安の背後でどんな力学が働き、価格は今後どう動くのか。米シェール産業やサウジアラビアの内情に通じ、2012年に原油価格の崩壊を予想したハーバード大のレオナルド・マウジェリ氏に聞いた。

――原油安を容認したサウジの狙いは。

「政治面では核開発を進めるイランや、イランを支援するロシアの力を弱めることだ。より大きいのが米シェール産業をくじくという経済面の狙い。ロシアとイランを標的にした米・サウジの結託を勘繰る声もあるが、サウジの戦略では米国も敵だ」

――サウジの動きは唐突にも映りました。

「当初サウジは米シェール革命を一時的な現象とみていたが、誤りに気づいた1年前に2つのシナリオを立てた。一つが1バレル60ドルのシナリオで、9000億ドルある外貨準備を使わず4~6年は耐えられると判断した。もう一つは45ドルのシナリオ。年1200億ドルの外貨準備の取り崩しが必要だが、やはり価格戦争は可能と判断した」

――シェール企業の倒産も出てきました。

「生産量が少ない小粒の会社で、大量倒産はない。大手は時価総額が数百億ドル(数兆円)あり、優良な油井を持つ。シェール層の多くで採算ラインは1バレル30~40ドルだ。最大のバッケン頁岩(けつがん)層では生産全体の8割が42ドル以下で、28ドル以下の油井も3割強ある」

「開発会社は15年の生産量の半分を1バレル90ドル前後でヘッジしている。原油安でも生産が続き、下げが加速する一因になっている」

――弱った開発会社をメジャーは買いますか。

「関心はあるが怖がってもいる。エクソンモービルがシェールガス大手を買った後、天然ガス価格が急落した失敗例が念頭にある。メジャーが以前の市場支配力を回復する日は来ないだろう」

――3年前、原油価格の暴落を予想しました。

「シェール油井も含めた大量のデータを積み上げた結果、世界的な生産能力の急増で需給が大きく緩むと判断した」

――下値のめどは。

「サウジが価格戦争を続ける限り原油安は続くが、1バレル50ドル台の価格が2~3年続いても米シェールの生産はそう減らない。だから価格をより下げるしかないが、外貨準備を使うとなるとサウジ国内の政治力学は読みにくい。40ドルを割れば価格の維持に動いていくだろう」

「ただサウジにとって大事なのは代金として受け取るドルの購買力。直近のドル高により、1バレル45ドルの価格には耐えられる可能性が増した」

――原油安は天然ガス安にも波及しています。

「米国では液化天然ガス(LNG)の輸出基地計画が40以上あるが、採算を考えれば20年に実現するのは5~6カ所だろう。日本からの投資も多いが、原発事故を受けた『根拠なき熱狂』だった可能性がある」

(聞き手は米州総局編集委員 西村博之)
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]