「空き家」を持っていると大損する!? 知らぬ間に法改正されていた

人口減少に伴う家余りと、その住宅価格低落効果については、すでに大方の予測するところではありますが、ちらほちらとその兆しを指し示す記事が掲載されるようになってきています(※1)。

特に、現代ビジネスオンラインで紹介されていましたとおり、「2月末から密かに施行されようとしている、『空き家対策特別措置法』をご存知だろうか。更地の6分の1だった固定資産税の税率が更地と同様になり、空き家を持つ人は従来の6倍の税負担を背負わされる恐れがある新法だ」(※1)ということで、これによって住宅の売却に拍車が掛かれば、住宅価格は一層下落することとなります。

駅から遠距離にある一戸建ての場合、現に所有している場合も相続の場合も今後購入する場合も、立地条件に関する熟慮が必要だと思います。

キーワード:
■「空き家対策特別措置法」
■「家は資産ではなく負債」
■「昨年8月に施行された改正都市再生特別措置法の居住誘導区域」


[以下、引用]
◆(※1)「空き家」を持っていると大損する!? 知らぬ間に法改正されていた
2015年02月27日(金) 週刊現代 週刊現代賢者の知恵

1000万円が8万円に

千葉県郊外に住む両親が亡くなって以来、10年間にわたって「空き家」となった実家を所有してきた、佐野義之さん(67歳・仮名)が嘆く。

「新しい法律ができていたなんて、まったく知りませんでした。私は東京在住で、千葉の実家に戻る気はありません。でも自分が生まれ育った家を壊すのは忍びないと思って、何となくそのままにしていた。でも税制上の優遇措置がなくなるなら、もう空き家のままの実家を持っているわけにはいきませんよ」

2月末から密かに施行されようとしている、「空き家対策特別措置法」をご存知だろうか。更地の6分の1だった固定資産税の税率が更地と同様になり、空き家を持つ人は従来の6倍の税負担を背負わされる恐れがある新法だ。

昨年7月に公表された総務省の統計では、全国に存在する空き家は820万戸を突破。その中には、いわゆる廃屋になっていて、倒壊の恐れがあったり、ホームレスのたまり場になっていたりする住宅も少なくない。

そんな「危険な空き家」を減らすため、というのがこの特別措置法の大義名分だ。国土交通省によると、施行後から自治体ごとに空き家を調査し、5月末を目処に廃屋同然になっている物件を「特定空き家」と認定。所有者に管理をするよう、「指導」を行っていくという。

この「指導」に従わない場合は、いままで更地の6分の1だった固定資産税の優遇措置が外されるのだ。

「何が『特定空き家』の基準なのかは未だ定まっていません。おそらく、その選定は各自治体任せになるでしょう。つまり、毎月のように通ってきちんと管理をしている人を除き、誰もがこれまでの6倍の税金を支払わされる可能性があるんです」(住宅ジャーナリスト・榊淳司氏)

いつの間にか法案が通り、気づけば施行が決まっていたこの特別措置法。だが、この存在に気づいて慌てて空き家を売りに出しても、待っているのは厳しい現実だ。

前出の佐野さんが語る。

「不動産屋を回り続け、ようやく『買ってもいい』と言ってくれる人が現れたのは、10軒目くらいだったでしょうか。でもその買値は、何と8万円。父がいくらで千葉の家を建てたのかは知りませんが、100坪程度の間取りからいって1000万円くらいは間違いなくしたはずです。それが8万だなんて……。しかも、その不動産屋は『家を壊して更地にしてくれなくてはダメだ』と言ってきたんです」

家屋の解体を業者に委託した場合、かかる費用は200万円程度が相場。佐野さんはつてを頼り、何とか安くしてもらえる業者を探したが、それでも150万円程度に抑えるのがやっとだった。

「さらに、解体だけでなく、実家の荷物の整理にもカネがかかる。それも、業者に委託すると200万円近い見積額でした。合計で350万円の費用をかけて、8万円で実家を売る。千葉郊外とはいえ、実家は一応大通りに面し、裏は公民館です。まさかこれほどの大損になるとは、思いもよらなかったですね。

年間6万円程度の固定資産税が6倍になっても、空き家を持ち続けるのがいいのか。それとも、350万円の損を被ってでも売ったほうがいいのか。毎日妻と話し合っていますが、結論はまだ出せていません」

家は資産ではなく負債

少子高齢化が進む一方で、新築物件が年間約100万戸のペースで建築されているのが、現在の日本の不動産業界。それだけに、東京・大阪といった都市部ですら、六本木や麻布といった「超」一等地を除いて、住宅が余りはじめている。

地方ならばなおさら、今後買い手がつかない空き家は増えていく。それをそのままにするべきか。それとも損を覚悟してでも売るべきか。

「もはや迷っている場合ではない」と力説するのは、不動産コンサルタントの牧野知弘氏だ。

「私の知人は、バブル期に1億4000万円で買った横浜市内の高級住宅街の家を3000万円で売りに出したが、1年経ってもまったく買い手がつかない。物件によっては横浜ですらこんな状況なんですから、地方となれば、もう値段を気にしている場合ではない。

また、資産価値のなくなった家をそのままにしておけば、困るのは子供かもしれない。『貸せない』、『売れない』、『自分も住まない』、三重苦の家を相続すれば、維持管理費用と税金を払い続けるだけになる可能性があるからです。

不動産が『資産』だった時代は終わり、これからは郊外の住宅を中心に多くの不動産が『負債』になっていく。空き家を持っている人は、まずその認識を持ち、現実と向き合うことが重要です」

では、どうしても買い手がつかず、売れないというケースはどうすればいいのか。自治体にすら引き取ってもらえない空き家は、すでに多数生まれている。

その場合の手段の一つとして考えられるのが、本当にタダで貸してしまうという方法だ。

前出の榊氏が言う。

「秋田県から出てきた知人がいるんですが、父親が高齢者施設に入ってしまい、土地と家を引き継いだ。広い土地があって大きな家もあるが、駅から遠く、資産価値はゼロ。どうしているかというと、近所の人にタダで貸しているんです。『田んぼで米ができると、4俵送ってもらうんだ』と言っていましたね」

賃料がタダでも、管理者がいるため、このケースならば前述の「特定空き家」には該当しない。つまり、固定資産税は従来どおり更地の6分の1で済む、というわけだ。

タダで借りてくれる人もおらず、本当に身動きのとれない人はどうすればいいのか。前出の牧野氏が言う。

「更地にして野に返すしかありません。ただ畑や野に戻すとすれば、いままで『宅地』として登記されていた土地は、『山林』や『畑』といった地目に戻すべきです。そうすれば固定資産税は安くなります。でも税金を徴収する側の自治体は、財政の約半分を固定資産税によって賄っていますから、すぐに地目を変えることには応じないでしょう。

『貸せない』、『売れない』不動産に対する固定資産税評価額に不満を持つ人も増えるはずです。この議論が、いままでひたすら住宅を造り続けてきた、日本の都市計画全体を見直していくきっかけになるかもしれません」

相続しない選択もある

とはいえ、自分を育ててくれた生家を更地にするのは、感情的に受け入れがたい、という人も多いだろう。そんな人は、ALSOKや東急リバブルといった民間の住宅業者が行う、「空き家管理サービス」を利用するのもいいかもしれない。当然、この場合も「特定空き家」にされることはない。

ただ、業者に管理の代行を頼むにしろ、相応の出費は免れない。富士通総研上席主任研究員の米山秀隆氏が語る。

「民間のサービスですので当然、料金が発生します。その相場は、月1万円、年間で12万円です。固定資産税に加え、この額を支払うのがいいのか。十分に検討が必要です」

売るのは嫌だし、業者に委託するのも厳しい。その場合は、自分で定期的に実家に帰ってメンテナンスするしかない。ただ、そのためだけに交通費と時間をかけるのが、合理的か。これもよく考えなければならない問題だろう。

2月末から施行される特別措置法によって、もはや空き家を持っている人が、出費から逃れることはできない。

いまはまだ両親が健在で実家に住んでいるが、近い将来、間違いなく空き家を持つことになる人は何をすべきか。

実家への愛着よりも、損を出さないほうが大事と考える人にとって最も有効なのは、相続しないという選択だ。

「家屋と土地の相続だけを放棄するのは、現行の法律上はできません。その場合は、家だけでなく、親の資産すべての相続を放棄しなければならないんです。

兄弟がいる場合は、兄弟のうちの誰かが、『住んでもいい』と言ってくれるケースはある。また、自分が相続した後に売ろうと思っても、『思い出があるから嫌だ』といって兄弟の中で意見が分かれることもある。誰が相続し、管理するのか。事前に家族でよく話し合っておくべきでしょう」(ファイナンシャルプランナーの横川由理氏)

昨年8月に施行された改正都市再生特別措置法も見ておくべきだろう。これは、広域にわたってバラバラに住んでいる地方の住民たちを一つの場所に集め、まとまって住んでもらおう、という計画だ。

「その場所を居住誘導区域と呼びますが、これは各自治体によって決められている。その中心区域は、建物の容積率を上げたり、あるいは税制優遇もされるようになる。これから空き家を持つ人は、家のある場所が居住誘導区域になるかどうか、よく見ておいたほうがいい。もし入るなら、将来的に資産価値は維持されますからね」(不動産コンサルタントの長嶋修氏)

親の実家が負債としてのしかかる時代は、すでに来ている。そのとき考えるべきは、得をする方法ではなく、いかに損を出さないか、なのだ。

「週刊現代」2015年2月28日号より
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]