強気相場も終盤、投資家は「降り方」を考えよう

山崎元さんの大勢的相場見解は的中率が高いので参考となります。今回ダイヤモンド・オンラインに掲載されていたコラムでは、手仕舞いの時期を探るべし、という内容でした(※1)。

①今年の後半か来年から株価が「一相場の終わり」を迎えてもおかしくない。

②「一相場の終わり」とは、例えば、PERが17倍から14倍くらいまでの2割くらい、あるいは最大で12倍まで3割程度下がるくらいのイメージだ。

官製相場となっている日本株についても、米国株が調整すれば連れ安となるのは当然の成り行きですから、安心は禁物です。
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(NYダウ10年間:SBI証券より引用)


[以下、引用]
◆(※1)強気相場も終盤、投資家は「降り方」を考えよう

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第369回】 2015年3月11日 ダイヤモンド・オンラインより引用
今は「まだ88年」か、「もう89年」か
1980年代バブルとの類似を振り返る

投資家も、そろそろ「大相場の終わり」を意識した方がよさそうだ。

経済と相場の歴史は単純に繰り返す訳ではない。しかし、資産価格のバブル形成を中心とした循環のパターンはよく似ている。

ここ2、3年本連載でも取り上げてきたように、アベノミクスのここまでの展開は1980年代後半の日本のバブル時代に似ている。

過去はおおむねこんな感じだった。1985年、プラザ合意があって円高になり不況となる。1986年、公定歩合が4回下がる日銀の金融緩和を背景に株価が急上昇し、1987年はブラックマンデーによる株価下落があったが、かえってそのおかげで「世界経済に対する責任」から日本は金融緩和の維持と拡張的な財政政策を行うことになり、1988年を通じて株価・地価が本格的にバブル化し、株価は1989年に最後の仕上げをして、1990年初から急落しバブル崩壊が始まる、というのが大まかな流れだった。

今回はどうか。民主党政権が終わる頃まで続いたデフレ的金融政策による円高・不況が85年に相当しよう。アベノミクスの大規模金融緩和による株高はまさに86年の感じだった。その後、「2%のインフレ目標」達成まで継続が約束されている(と解釈される)金融緩和に基づいて買い上がる現在の株価と不動産価格上昇、といった流れが1988年あたりの状況に対応している。「世界経済に対する責任」と「2%のインフレ目標」といった理由の違いはあるが、金融緩和状態の継続と長期金利の低金利(それぞれの時期の前後と比較して)がもたらされていることは同じだ。

異なるのは、日本経済の成長率の低下と経済のグローバル化・資本市場の世界的連動の強化だ。

特に株式市場の参加者にとって問題なのは、現在が1980年代バブルの時期に換算して、まだ1988年なのか、もう1989年に相当するのかだ。「もう」であるとしても「まだ」であるとしても、強気相場はいずれ終わる。金融緩和から始まった一相場の終わり方がどのようなものになるか、そろそろ考えておくべき時期ではないか。天井はまだ先かもしれないが、「転ばぬ先の杖」の意味もある。

ちなみに筆者は、個人的には「早めに降りたくなる」タイプだが、大きな盛り上がりには欠けるものの、相場はそろそろ1989年相当の時期、つまり終盤に差し掛かっているのではないかという判断に傾いている(「株屋の勘」ほどアテにならないものはないので、読者は気にしないでほしい)。以下、そう思わない読者もご一緒に考えてみてほしい。

米国利上げで何が起こるか?
示唆的だった先週末の相場

先週末、米国の雇用統計が発表されて相場が大きく動いた。米国の雇用統計は、近年、日本の株価、為替レートにとって、時には首相交代以上の影響を及ぼす相場的には大イベントだが、今回の動きはなかなか示唆的だった。

既報の通り2月の米雇用統計は、非農業部門の雇用が29.5万人増と市場予想の24万人を大きく上回った。失業率も5.5%に低下し、米国の経済の好調が裏付けられた。これらを受けて、ドル高が進み円は一時121円を付けたが、他方、米国の株価は、FRBの早期の利上げ観測を受けてニューヨークダウで前日比278ドル安(終値は1万7856.78ドル)の急落となった。

日本の株価にとって、円安は株高要因だが、米株安は株安要因だ。翌週の日本株の反応がどうなるか注目されたが、121円絡みの円安となったにもかかわらず、日経平均は下落した。日経平均の3月9日の終値は先週末比180円安の1万8790.55円だった。

まず、先週の米国の株価だが、経済が好調であることを評価するよりも、市場は利上げを怖がっていることが分かった。

通常、金融引き締めに至るのは経済が好調で企業業績が良い状態だから、FRBの利上げ1回目でいきなり株価が下げ相場に転じることは少ない。しかし、今回の株価上昇は、異例に大規模な金融緩和を背景に生まれ育った相場なので、この前提条件が逆転したときにどのような影響があるのか、市場参加者は前例とできる経験が乏しい。経験がないから、心理的には恐怖感が生じやすい。

米国の金融政策の転換によって、世界の資金の流れが変わる公算が大きい。最終的に金融引き締めに勝つ上昇相場は無いはずなので、いずれは「降りる」ことを考えなければならない(機関投資家にとっては完全に株を売却するのではなく投資比率を少し下げることを意味する)。今回は、通常よりも早めに、つまり1回目の利上げの前後に米国株が大幅に下げに転じる可能性を視野に入れておくべきだろう。

一方、強い雇用統計発表から米国の早期利上げ観測が強まってドルが買われるのは、普通の動きだ。

問題は日本の株式市場の反応だった。円安と米株安のどちらを大きく評価するかが興味深かった。

今回は、円安による企業利益(円ベース)の改善とビジネス競争上の有利性を評価するよりも、米国の利上げで資金が世界的に株式から債券等に回帰して、グローバルに運用する機関投資家が日本株も売る、といった資金の流れに対する心配が勝ったように見える。外国人投資家の資金が、株式から現金・債券に回帰する大きな流れには、日本株も抗しがたいのではないかという理解だ。

米国は引き締め、日本は緩和
金融政策のズレがどう働くか

「米国が金融引き締めに入っているけれども、日本はまだ金融緩和の最中だ」という金融政策のズレが生じたときに、(A)ドル高・円安になるので日本の株価は上がるのか、(B)世界的な投資資金が株式から債券に向かうので日本の株価も下がるのか、ここの判断が問題だ。この「ズレ」は今年の後半に起こる可能性が大きい。

今週初めの株式市場は(B)の判断に傾いた。この解釈でいいのだとすると、米国の利上げがカウントダウンに入る、今年の夏頃から日本の株価が下落に転ずる可能性が大きいのではなかろうか。現在、相場を下支えしている公的年金のリスク資産買い入れも、この頃までには、大きな動きを終えている可能性が大きい。これが、残念ながら、一番ありそうなシナリオではなかろうか。

他方、(A)が起こる可能性も全く無い訳ではない。

120円を超える円安がキープされた場合、日本の景気自体はまずまず良好に推移するだろう。また、FRBと日銀の金融政策に明らかなギャップが生じるので、さらに円安が進む可能性はある。この場合に、ポイントになるのは、日銀が国債買い入れをどの程度続けるかだろう。

政府の「中長期の経済財政に関する試算」(内閣府・2015年2月12日・経済財政諮問会議提出)によると、経済が順調に推移する「経済再生ケース」では2016年度の消費者物価上昇率と名目長期金利を共に1.8%と見込んでいる。一方、現状の延長線上で推移する「ベースライン・ケース」では2016年度が消費者物価1.1%、長期金利が1.5%との見立てだ。

現在、長期金利は実質マイナスで推移しているが、どちらのケースでも、来年度くらいから実質長期金利がプラスに転ずると見ていることになる。「いつ・いくら」に関して、政府の経済見通しをあてにしてはいけないが、物価目標の達成が視野に入ってくると、長期金利が上昇し実質ベースでプラスに転じるというストーリーは頭に入れておく方がいいだろう。

ちなみに、長期的には、経済再生ケースで実質2.6%、ベースライン・ケースでも1.5%程度の実質長期金利を見込んでいる。ベースライン・ケースで見込む長期的な実質GDP成長率は0.9%に過ぎないので、PERは12倍から14倍くらいが適正だろう。現在の東証一部平均で17倍のPERは維持できまい。

今年後半から来年には
「一相場の終わり」で株価下落

米国の利上げの後まで相場がもつケースもあり得ない訳ではないが、その場合には、日銀の国債買い入れがどうなるかに注目が集まることになるのではなかろうか。

いずれにせよ、今年の後半か来年から株価が「一相場の終わり」を迎えてもおかしくないと筆者は考えている。

ちなみに、「一相場の終わり」とは、例えば、PERが17倍から14倍くらいまでの2割くらい、あるいは最大で12倍まで3割程度下がるくらいのイメージだ。さらに大きく下がると想定できる材料は、現時点では見当たらない。

「最後はバブルだ」と考えると、可能性としては平均PERが20倍を超えるような「大盛り上がり」があるかもしれないが、投資家は慎重であり、現時点では想定しにくい。

もちろん、確実にそうなるという予測ができるものではないので、投資家は、株式の組み入れ率をある時にゼロに落とすような極端なオペレーションをしない方がいい。「高値で少し売っておこう」と考えるのはいいが、「株式投資は資本への参加なのだから、下がってもある程度は持ち続けよう」と考え、行動することがより基本的だ。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]