ギリシャがユーロ離脱なら、実はこんな展開も-混乱のプロセス

ギリシャ問題に動揺する欧州経済という情勢は、相応に織り込み済みとはいえ、決着が付いているわけではありませんので、不安要素としていまだに尾を引いています。ブルームバーグに、ギリシャがユーロを離脱した場合を想定した予測記事が掲載されていましたので、全文引用しておきたいと思います(※1)。

当室としては、日経新聞(※2)が伝えるように預金流出(=実質上の取付け)が続いている以上は、預金封鎖→新通貨とユーロが並行して流通→やがて離脱、という下記B2のチェックアウトの可能性が一番高いものと思います。いくらドイツがしぶちんでも、さすがにギリシャをロシアに差し出すことはしないでしょう。


[以下、引用]
◆(※1)ギリシャがユーロ離脱なら、実はこんな展開も-混乱のプロセス
2015/03/27 07:03 JST ブルームバーグより

(ブルームバーグ):ギリシャをユーロ圏に残す闘いも6年目となり、誰もが疲れてきた。そして何よりも、チプラス政権下のギリシャは資金が底を突きつつある。

ウニクレディト・バンクのエリック・ニールセン氏など、ギリシャのユーロ圏離脱は時間の問題だとみるエコノミストも出てきた。ユーロ導入は選択すれば戻ることのできない一方通行の道だと思われてきたため、離脱のロードマップはない。このため、正式な発表や明確な決議を待っていては、待ちくたびれるだけかもしれない。

ギリシャの選択肢としては、ユーロ圏にとどまる、破滅的な別れを選ぶ、あるいは複数の通貨を流通させるシナリオなど、さまざまだ。さらに離脱する場合、誰がどのようにそれを世界に宣言するのかという問題がある。チプラス首相か欧州中央銀行(ECB)か、トゥスク欧州連合(EU)大統領か、それともユンケル欧州委員長なのか。以下に、今後想定し得るギリシャのシナリオを示した。

A:ギリシャの離脱(GREXIT)回避

チプラス首相が降参して債権団の要求に従う。ユーロ離脱か緊縮かの選択を迫られた首相は後者を選んでギリシャは現金を手にし、ECBも同国の金融システムを支え続ける。この場合、チプラス政権への反発が国内で強まり、首相は欧州寄りの政党と新たな連立を組んで政権を存続させるか総選挙実施となる。

B:ホテルカリフォルニア

ギリシャのバルファキス財務相はユーロという通貨同盟への参加を、いつでもチェックアウトはできるが決して去ることができないと歌う米ロックバンド、イーグルスの1976年のヒット曲「ホテルカリフォルニア」に例えたことがある。チプラス首相がドイツ政府や自身の急進左派連合(SYRIZA)内の強硬派を含め全当事者が受け入れられるような妥協策を見つけられない場合、このシナリオは現実となる可能性がある。つまり、救済融資は引き続き実行されず、政治指導者も行動を渋るので、ECBはギリシャの銀行の頼みの綱である緊急流動性支援(ELA)を制限。資金は十分ではないので、資本統制が必要になる。銀行の実質閉鎖もあるだろう。

さて、このシナリオBはここからB1「どんでん返し」とB2「チェックアウト」に別れる。

B1:どんでん返し

預金の引き出しや送金を制限する資本統制が、チプラス首相に妥協を余儀なくさせるという劇的な結果につながる。首相は欧州寄りの野党議員らと新たな連立を組み、資本統制と銀行閉鎖の環境下で国民投票を実施する。国民は首相に方向転換へのお墨付きを与え、挙国一致内閣ができる。ギリシャはユーロ圏にとどまるが、まずリセッション(景気後退)に陥る。

B2:チェックアウト

銀行閉鎖で政治情勢は悪化し市民の抗議行動が強まる。ドイツを標的とした反感が強まり、世論はユーロ離脱へと傾く。政府は資本統制を敷いている間に、国内の決済のための新紙幣または借用証書を印刷する。ユーロ圏諸国はギリシャ経済の完全崩壊を避けるために融資を提供する。公的部門へのギリシャの債務は再編され、国際通貨基金(IMF)の融資は返済される。新通貨とユーロが並行して流通し、ギリシャはユーロ圏を正式に離脱したわけではないので戻る道は残されるが、国内の金融は混乱を極める。

C:大惨事

ギリシャが無秩序なデフォルト(債務不履行)を起こしてユーロ圏を離脱する。デモが発生し、国民の多くはますます困窮、政府は全てをドイツのせいにする。新通貨を支えたり国債やIMF融資の利払いや返済をするための支援は得られない。政府と銀行が破綻し、新たな枠組みができるまで何年もかかる。ギリシャは大恐慌に陥り、資本主義始まって以来の大規模デフォルトの打撃で欧州もリセッションに逆戻り。ギリシャはEUも離脱する羽目になる。国内では極右ないし極左勢力が政権を握り、逃げられる者は国を後にする。北大西洋条約機構(NATO)加盟継続にも疑問符が付き、不安定な新ギリシャはロシアに頼って、プーチン大統領に地中海への足場を提供する。    

原題:A Murky, Sloppy Muddle: How Greece’s Exit From Euro Could Happen(抜粋)
更新日時: 2015/03/27 07:03 JST


◆(※2)ギリシャで預金流出加速 大手4行、不良債権重く
ユーロ離脱不安で
2015/3/28 23:16日本経済新聞 電子版

【ロンドン=小滝麻理子】債務問題に直面するギリシャで金融機関の苦境が深まっている。ユーロ圏からの離脱不安を背景に、預金の流出が加速し、資金繰りに懸念が向けられる。不良債権も経営の重荷だ。

銀行の資金繰りが一段と悪化すれば、ギリシャ財政にはさらに影響が出る(アテネにあるギリシャ中銀)=AP

同国の四大銀行の2014年12月期決算は、景気低迷を受けて不良債権関連の費用が前の期に比べ2割以上増えた。最大手ナショナル銀行やピレウス銀行など大手4行の最終損益はあわせて34億ユーロ(約4400億円)の赤字と、前の期(51億ユーロの黒字)から大きく悪化した。

バルカン半島で広く事業を手掛けるユーロバンクは、ルーマニアやブルガリア向け債権を中心に引き当てを約2割増額した。4行全体でも貸出債権がらみの引き当ては2割増の約90億ユーロに膨らんだ。

昨秋の欧州中央銀行(ECB)による資産査定では、アルファ銀行を除く3行が資本基準などを満たさず「不合格」となった。今回はこれに沿い、不良債権査定を厳格化した。4行の14年末の不良債権比率はいずれも24~38%と高止まりしている。ギリシャの失業率は26%とユーロ圏で最も高く、個人向け融資の回収に懸念が出ている。

ユーロバンクのカラビアス最高経営責任者は「最優先課題は流動性の確保だ」という。チプラス政権と欧州連合(EU)の支援交渉が難航していることを背景に、預金を引き出す動きが加速している。

ギリシャ中央銀行によると、金融機関の預金残高は昨年12月時点で約1600億ユーロだったが、年明け以降の2カ月間で約200億ユーロと約12%相当が流出した。これは12年の債務危機を上回るペースで、預金残高はこの10年で最低水準に落ちた。

ECBはすでにギリシャ銀向けの特例の低利融資制度を廃止。ギリシャ銀は代わりに利率の高いECBの緊急流動性支援(ELA)の利用を増やしているが、ECBはELAの上限の大幅な拡大には否定的だ。ギリシャは今後短期国債の償還も控えており、引き受け手であるギリシャ銀行の資金繰りが一段と悪化すれば、ギリシャ財政にはさらに影響が出る。

各行は、12年の債務危機時に政府から資本注入を受け、ギリシャ金融安定基金(HFSF)が多くの株式を握る。財政が逼迫するなかで、ギリシャ政府は、今月必要な資金を手当てするため、本来は銀行救済が目的のHFSFの保有資金を活用しようとするなど、なりふり構わぬ状況だ。

ギリシャ政府は27日に金融支援延長を受けるための改革案をEUに提出し、今後本格協議に入る。合意できなければギリシャ救済に疑問府がつき、金融機関にも一段と圧力がかかる恐れがある。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]