世界の工場、中国に陰り 「労働コスト」日本を逆転

日経新聞の12月6日の記事では、中国の賃金上昇により、製造業の日本国内回帰、東南アジア諸国への工場分散が進行している様子が伺えます(※1)。円安効果も加わりますので、国内回帰の動きは当面継続することとなりましょう。

「SMBC日興証券の試算では、日中のドル建ての単位労働コストは1995年時点では日本が中国の3倍以上だった。ところが、その差は次第に縮小し13年に中国が日本を逆転。14年は中国が日本を引き離している」とされています。

ドル建て比較ですから、当然円安効果も織り込まれての結果ですが、日中の労働コストは円高が日本の労働コストを押し上げても中国の賃金上昇の影響が上回るので、当面再逆転はしないと予想されているようです。

中国とは水平分業するべき時期が到来していると言えそうです。


[以下、引用]
◆(※1)世界の工場、中国に陰り 「労働コスト」日本を逆転

2015/12/6 1:30日本経済新聞 電子版

「世界の工場」と呼ばれる製造業の拠点である中国の地位に陰りが見えている。神戸製鋼所は米国で自動車部品の増産投資を決める一方、中国での投資を延期。カジュアル衣料大手のアダストリアは生産の中国比率を9割から7割に引き下げる。中国市場の成長鈍化が影響しているほか、人件費の上昇も影を落とす。表面的な人件費に労働生産性も加味した「単位労働コスト」では日本との逆転現象も起き、日本企業の国内回帰も広がりつつある。

画像


神戸製鋼は衝撃を吸収するサスペンションに使うアルミ鍛造部品の増産投資を延期する。当初は今年秋に生産能力を4割高める計画だったのを1年程度延期しており、さらに先に延ばすという。中国の新車市場の成長が鈍化傾向にあるためだ。

一方、新車市場が堅調な米国では、同じ部品で約70億円を投じて生産能力を8割高める。

2014年まで中国市場が急拡大したスマートフォン(スマホ)も飽和感が強まり、関連企業に影響が出ている。スマホ部品の精密加工などに使う小型旋盤大手のツガミは中国で月1500台の生産能力を持ち、今春は月800台程度を生産していたが、足元は300~400台にとどまる。

画像


人件費の上昇を受けて中国生産比率を引き下げる動きもある。「グローバルワーク」などのブランドを持つアダストリアは、今後5年以内に9割から7割に下げる。

代わりにベトナムなど東南アジアを1割から3割に高める。日本への輸送コストは膨らむが、人件費の抑制で全体のコストは1割下がるという。

衣料品国内最大手のファーストリテイリングはかつて9割以上だった中国比率がすでに6~7割に低下したとみられる。

日本国内に生産を切り替える動きも広がる。ダイキン工業は家庭用エアコンの中国での生産を今年度は前年度比約2割、15万台減らし、滋賀製作所(滋賀県草津市)の生産を同20万台増の100万台に引き上げる。

中国などアジア生産を拡大してきたTDKは、日本との人件費の差の縮小を受けて「新たに人件費が安い地域を探すよりも、国内生産で競争力を高める」(上釜健宏社長)という方針に転換。本荘工場(秋田県由利本荘市)などに新しい製造棟を建設している。

中国の人件費は年1割程度の上昇が続き、日本貿易振興機構によると工員の平均月給は北京が566ドル(約7万円)、上海が474ドルとなった。2千ドル超の日本を大きく下回るが、生産性も加味した単位労働コストで比べると様相は変わる。

SMBC日興証券の試算では、日中のドル建ての単位労働コストは1995年時点では日本が中国の3倍以上だった。ところが、その差は次第に縮小し13年に中国が日本を逆転。14年は中国が日本を引き離している。

第2次安倍政権の発足後、人民元に対して約4割の円安が進んだことも背景にある。同証券の渡辺浩志シニアエコノミストは「労働者の高い生産性が求められる高付加価値品ほど日本での生産が有利になる」と指摘する。

日中の労働コストは当面、再逆転しないとの見方が多い。第一生命経済研究所の星野卓也エコノミストは「円高が日本の労働コストを押し上げても中国の賃金上昇の影響が上回る」とみている。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]