安倍首相「2020年にはGDP600兆円達成できる」、その根拠を推定する

安倍総理が2020年までに達成する目標として掲げたGDP600兆円とは、どこから出てきた数字なのでしょうか(※1)。現在のGDPは500兆円レベルですので、安倍総理の言う通り、毎年3%以上成長すれば、2020年には600兆円に到達できなくもありません(3%ずつですと無理ですが)。

問題は、これから毎年3%以上の成長率が本当に確保できるのか、ということですが、現状で掲げられている政策内容を眺める限り、到底無理という判断にならざるを得ないと思います。

先の黒田緩和第3弾(マイナス金利0.1%)は、3日ほどでマーケットからNG評価を受けてしまい、株安・円高に逆戻りしてしまいましたし、財政的手当ても目立つものがなく、金融・財政ともに3%以上の経済成長率を裏打ちするものが見当たりません。

それよりもむしろ、(a)国内では少子高齢化による需要低迷と社会保障支出の増大という経済問題を抱え、(b)国外では中国を始めとする新興国経済の不振、および原油価格の暴落などに表象される供給過剰・需要低迷という難題があり、それらの日本経済へのマイナス材料の方が巨大に聳え立っているという印象が強くあります。

そうした状況の中で、突如として安倍総理が持ち出したGDP600兆円目標というのは、いかにも唐突、いかにも不可能という印象の強い政策目標ですから、仮に今年H28年7月の参院選で自民党が大勝したとしても、さすがに何らの根拠もなしに発言しているのでは、安倍総理自身がのちのち自滅して恥をかくだけの結果となります。

当室は、以前から外為特会の米国債120兆円を日銀買取によって財政投入(5~6年の分割投入)すれば良いという説を述べていますが、この120兆円という数字は、不思議に500兆円+120兆円=620兆円と考えますと、妙に符合する数字のように思えて来ます。つまり、安倍総理はこの外為特会の米国債を何らかの方法で流用する意図があるのではないかと思います。そうした確たる根拠の存在なしには、GDP600兆円の達成はほとんど画餅に過ぎません。

金融政策面では、異次元緩和と称するレベルの緩和を実施していますので、残るは財政政策であると、安倍総理も認識しているものと思います。問題は財源です。その財源を思い切り良く、(ア)建設国債を増発して調達するのか、それとも(イ)米国債購入に回って外貨のまま眠っている資金を日銀買取で円転して財政支出の別枠として使用するのか、そのどちらかを安倍総理はすでに決心しているのだと思います。

それらのいずれかの財政政策が実施されるとしたならば、日本経済はGDP600兆円へ向けて確実に成長しますが、具体的に政策決定されるのは、おそらくは夏の参院選(おそらく衆参同時選挙)の後ということとなりましょう。

我々投資家としては、それまではタネ銭は温存しておき、政策発表と同時に全力投下という作戦で良いのではないかと考えます。本当にGDP600兆円に向けて思い切った政策が打たれた場合には、リターンは相当に大きくなるものと予想されます。仮に何も政策が打たれなくても、我々としては特に損も出ませんので、また別なことを考えたいと思います。


[以下、引用]
◆(※1)【安倍首相講演詳報(4)】「2020年にはGDP600兆円達成できる」
産経ニュース
2015.11.6 16:38

読売国際経済懇話会(YIES)で講演する安倍晋三首相=6日午後、東京都千代田区の帝国ホテル(宮崎瑞穂撮影)

「1億総活躍の実現に向けて、私は新しい三本の矢を放ちます。今回の新たな矢には、それぞれ明確な的があります。第1の的は、戦後最大のGDP(国内総生産)600兆円。これに向かってこれまでの3本の矢を束ね、より強固な希望を生み出す強い経済という第1の矢を放ちます。アベノミクスによって成長率がマイナスからプラスに転じた結果、足元で500兆円まで回復しています。ここから毎年名目3%以上成長が実現すれば、2020年ごろにはGDP600兆円は十分達成することができます。名目3%成長なんてここ20年で一度も実現していないじゃないか、とそういう批判が皆さんからも聞こえてきそうであります。しかしそもそも、この20年間デフレだったんですから、名目で成長するわけがないのです」

「デフレを当然の前提として、デフレ発想で推し量ること自体が、既に間違っています。今年日本を訪れる外国人観光客は恐らく2000万人近くまで増える見込みです。しかし、たった3年前は、800万人ほどでした。総理就任以来、ビザの緩和などを戦略的に進め、1年目で1000万人突破、2年目で1300万人余り、そして今年いよいよ2000万人に近づいています。これだけの急速な伸びを誰が予測したでしょう。足元の7~9月期では外国人旅行客の国内での消費は初めて1兆円を越しました。昨年の同じ時期と比べてほぼ2倍です。私自身も正直申し上げて、ここまで伸びるとは思いませんでした。安倍政権が発足してから、海外から日本への投資は10倍以上増加しました。少し前までは、外国企業の方々にアジアのどこに投資しますかと聞けば、中国という答えが一番多かった」

「しかし、直近の調査では、R&D(研究開発)拠点を置くなら日本だという回答がトップになりました。日本のアジアにおける存在価値は確実に高まりつつあります。例えば来年の春にはアップル社がアジアで初めての研究開発拠点を横浜でオープンする。こんな心強い朗報もあります。このような事態を3年前、誰が予測したでしょうか。これまでの想定を超える大胆な政策を実施すれば予想を超える成果が生まれる。これは当然のことであります。ですから私はこれからも皆さまの期待を上回る改革を次々と断行していきます」

「法人実効税率を数年で20%台にまで引き下げる。国際的に遜色のない水準へと法人税を改革する。この目標の下に今年4月から2.5%引き下げました。さらに来年は0.8%引き下げていると既に決めています。来月決定する税制大綱では、これを確実に、これに確実に上乗せを行い、来年4月からさらに引き下げを実現します。今後の道筋をつけていきたいと考えます。そのことによって。国内外からの日本への投資を促し、生産性革命を進め、イノベーションを起こしていくと考えています。経済界の皆さんにも積極果敢に設備や人材への投資を行っていただきたいと思います」

「先般の日中韓首脳会談での最も大きな成果の一つは日中韓FTA交渉の加速化であります。中韓両国からの強い期待感を感じました。これはTPPという強い礎ができたからこそであります。さらに経済の好循環を回し続け、内需を拡大する。働き方改革を進め、女性や高齢者の皆さんのチャンスを広げる。既存の規制制度の改革を断行する。あらゆる政策を総動員していけば、日本の潜在成長率は確実に押し上げることができる。そしてGDP600兆円を実現できる。私は極めて現実的な目標であると確信しています」
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[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]