債務残高2600兆円 借金大国中国の危機

大前研一氏の言説がNEWSポストセブンに掲載されていましたので、引用しておきます(※1)。

概ね妥当と思いますが、ただし、同氏による「日本は、オーストラリアやブラジルなどの資源国に比べれば対中輸出に依存していないし、元安によって中国から輸入している食料品、電気製品、衣料品などが安くなり、中国に進出している日本企業のコスト競争力も強くなるから、日本にとってはマイナスよりもプラスのほうが大きいだろう。」という結論的所見は、相当に能天気であるとしか言えません。このあたりが、同氏の同氏たるゆえんのものでしょう。

世界第二位の経済規模の国民経済が破綻した場合、マイナスの波及効果は理屈上直接的には日本にはそれほど及ばないとしても、外人投資家や外為市場、株式市場を経由して間接的には必ず波及しますし、おそらくはその規模は相当に大きなものとなります。資源国だけでなく欧州も中国依存度は高いですし、欧州の銀行は今すでにキナ臭いわけですから、そうした金融事情も含めて、世界経済は一体化が進行していることを忘れてはいけません。

まずは、真っ先に急激な円高となりますから、株式市場は暴落、輸出は急減、国内需要は激減、といったデフレ化が急速に進行するはずです。資金力を温存している投資家のみ、バーゲンセールの利得を享受できることとなりますので、そういう意味でチャンスが到来すると言うのであれば正しい発言となりますが、そうでなければ経済情勢の理解不足ということでしょう。

いずれにしても、中国経済は注視が必要であり、次回ではないとしても、米国の利上げがその破綻の端緒となる可能性大と思います。


[以下、引用]
◆(※1)債務残高2600兆円 借金大国中国の危機は日本のチャンス
NEWSポストセブン
2016.09.02 16:00

中国の経済実態は、発表と現実がかい離していて本当のところがわからないと言われるが、最近、よく言われるのは経済危機を迎えつつあるということである。経営コンサルタントの大前研一氏が、中国の危機は日本にとってどんな意味があるのかについて解説する。

 * * *
いま中国では、習近平国家主席と李克強首相の間で、経済政策をめぐる対立が激化しているという。
 
国有企業保護政策を維持して権力掌握を進めたい習主席に対し、李首相が「ゾンビ企業(経営の行き詰まった国有企業)の淘汰」など「痛みを伴う構造改革」を提唱しているからで、習主席の側近が「今年前期の景気は良好」とする李首相の見解を真っ向から否定し、「(このままなら)中国経済は『V字回復』も『U字回復』もなく『L字型』が続く」と痛烈に批判したと報じられたのである。

この景気判断については習主席のほうが正しいと思う。たとえば、今年6月に中国社会科学院の学部委員で国家金融・発展試験室の理事長を務める李揚氏が「2015年末の時点で、中国の債務残高は168兆4800億元(約2600兆円)で、GDP(国内総生産)の249%に達し、うち企業分が156%を占める」と発表した。

発言の趣旨は、中国の債務はコントロール可能な範囲で、債務リスクに対応するための十分な資金があることを理由に「債務危機は存在しない」と強調するものだったが、この数字は経済規模が違うとはいえ日本の借金1000兆円の2.6倍だから、やはり寒気がするような規模である。

李氏は「借金より資産のほうが多い」から安心と言うが、実は中国の借金が正確にはいくらあるのか、誰もわかっていないと思う。

中国の借金には、大きく四つの要素がある。「国営企業」「民間企業」「地方政府」「国」である。249%のうち企業分が156%ということは、地方政府と国が残りの100%近く、という計算になる。

だが、すでに本連載で指摘したように、これまで地方政府の富の源泉だった農地を商業地や工業団地に用途変更して利益を得る不動産開発やインフラ整備などの投資プロジェクトはことごとく行き詰まり、地方政府は莫大な借金を抱えて収拾がつかない状況に陥っている。

おまけにアリババ(阿里巴巴)などのネット通販隆盛の影響で多くのショッピングモールはテナントが入らなくなって「鬼城(ゴーストタウン)」化しているため、地方政府が商業地などの開発によってけるという従来の仕掛けは、もはや機能しなくなっている。

では、これから中国はどうなるか? これもすでに本連載で書いたように、中国政府が人件費を市場に委ねず強制的・人為的に毎年15%ずつ引き上げてきたせいで中国企業の競争力は低下したのだが、だからといって賃下げは人民の反発が怖いからできない。

となると、おのずと為替は元安に向かうので、変動相場にするしかなくなる。変動相場制にしたら一気に元安が進み、現在の1ドル=6.6元が半分の1ドル=13元くらいまで下がらざるを得ないだろう。そうなれば輸出競争力は回復するかもしれないが、経済はハイパーインフレになって人民の生活は困窮する。

実際、長い休止期間を経てトレーディングを再開したアメリカの著名投資家ジョージ・ソロス氏も「中国経済は危機を避けられない」と明確に予測している。

中国経済が破綻すれば、世界経済は大混乱する。もしかすると、1929年に当時の新興経済大国アメリカのバブル崩壊が引き起こした大恐慌のような状況になるかもしれない。

ただ日本は、オーストラリアやブラジルなどの資源国に比べれば対中輸出に依存していないし、元安によって中国から輸入している食料品、電気製品、衣料品などが安くなり、中国に進出している日本企業のコスト競争力も強くなるから、日本にとってはマイナスよりもプラスのほうが大きいだろう。

中国経済の破綻に備えつつ、危機を好機に転じるという発想と準備が重要だ。

※週刊ポスト2016年9月9日号