投資の世界で「最も偉い人」はこの人だ!

当室管理人ノーコメントで引用・掲載しておきます(※1)。

[以下、引用]
◆(※1)投資の世界で「最も偉い人」はこの人だ!
山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
2017.11.1 ダイヤモンド・オンラインより

投資の「偉人」が日本にいない理由

大型書店に行って、投資に関する本が並んでいるコーナーを眺めてみよう。投資の方法を解説する実用書(筆者が書いたものを含む)や、内容自体の信憑性が乏しい「儲かります!」とあおる“駄本”に加えて、成功した投資家の投資ノウハウや人となりについて書かれた本の一群が目につく。

題材として最もポピュラーなのは、米国の投資家で、マイクロ・ソフト創業者のビル・ゲイツ氏としばしば世界一の富豪の座を争う、ウォーレン・バフェット氏だろう。Amazonの書籍の売り上げランキングには、「ウォーレン・バフェット」というカテゴリーがあるくらいだ。

日本にも、相対的に成功した投資家はいるし、彼らに関連する書籍が数多くあるのだが、残念ながら、米国を始めとする外国の大投資家と比較すると「小粒感」が否めない。

これは、(1)ホームマーケットである日本株のパフォーマンスが長年さえなかったこと、(2)金融行政が大手金融機関傘下の運用会社を優遇したこと、(3)日本の運用会社が組織運用指向で“スター運用者”を作らなかったこと、などの影響だと思うが、運用ビジネスを振興する上ではいささか残念なことだった(今後に期待したい)。
偉大さの内容で三つのカテゴリー

筆者は、米国の「コーチ」として有名なアンソニー・ロビンズ氏が著した、青い表紙の「世界のエリート投資家は何を考えているのか」と、赤い表紙の「世界のエリート投資家は何を見て動くのか」(共に鈴木雅子訳、三笠書房)の解説を書く機会があった。大部の原書のため、内容で2冊に分けて翻訳が出された。

もともと投資の専門家ではない「コーチ」が書いた投資の本がどのようなものなのか、実は、解説を頼まれた時に大いに心配だった。しかし、著者は、レイ・ダリオ、カール・アイカーン、ウォーレン・バフェット、ジョン・C・ボーグル、チャールズ・シュワブ、リチャード・セイラー、デイビッド・スウェンセン、ポール・チューダー・ジョーンズといった、投資に関連する世界の掛け値なしの「大物」へのインタビューに基づいてこの本を書いている。

ここで、たまたま8人の名前を挙げたが、投資の世界における彼らの「偉大さ」の内容は同じではない。大きくは、三つのカテゴリーに分類することができるだろう。

第一のカテゴリーは、ウォーレン・バフェット、レイ・ダリオ、カール・アイカーンなど、実際に投資して大いに儲けた投資の実践家たちだ。

個人が所有する資産額で言うとウォーレン・バフェット氏が最大の成功者なのだろうが、アンソニー・ロビンズによると、一定の運用期間で見たリターンはカール・アイカーンの方が上なのだという。

第二のカテゴリーは、インデックスファンド大手の運用会社ヴァンガード社を創業したジョン・C・ボーグルや、ディスカウントブローカー大手の証券会社を創業したチャールズ・シュワブのような、投資家にとって大きな環境の改善をもたらしたビジネスのイノベーターたちだ。

日本にもインデックスファンドやETF(上場型投資信託)はあるし、ネット証券を中心にディスカウントブローカーに分類できる証券会社はあるが、残念ながらビジネスモデルは米国からの輸入品だ。
第三のカテゴリーは、今年のノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーのような、投資の世界の理論家・研究者だ。

このカテゴリーには、ハリー・マコーヴィッツ、ウィリアム・シャープ、マイロン・ショールズ、ダニエル・カーネマン、ロバート・シラーなど、意外に多くのノーベル賞受賞者がいる。それぞれの受賞者の業績の軽重には様々な評価があるとしても、実務家の世界と同等、あるいはそれ以上に日本人が食い込むことが難しそうなカテゴリーだ。

誰が一番偉いのか

さて、凡人(筆者を含む)が偉人を「評価」するのはそもそも無理だし、僭越でもあるのだが、投資の世界で「最も偉い人」を選ぶとすると、誰を選ぶべきか。

筆者が選ぶ、投資の偉人ナンバーワンは、ジョン・C・ボーグルだ。次点に、ウォーレン・バフェットを選びたい。

ロビンズの本にも紹介されているが、ボーグルがインデックスファンドを作るに至ったのは、必ずしも本人にとって幸せな経緯から生じたものではなく「たまたま」だったのだが、彼はこの世界を突き詰めた。

その結果、多くの投資家が、有利で分かりやすい運用を(アクティブ運用よりもインデックス運用の方が平均的な成績がいい)、圧倒的に安価な手数料で利用できるようになった。投資家への貢献の点で、ボーグルは他の「投資の偉人」を圧倒していると筆者は考える。

ヴァンガード社、およびヴァンガード社の競争相手たちが運用する安価な手数料のインデックスファンド(ETFを含む)は、それがなかった場合との比較を想像すると、控えめに見ても年間数兆円単位のメリットを投資家にもたらしているように思える。

ボーグルは、インデックスファンドに加えて、ファンド自身がファンドの運営会社を所有して、運用資産の拡大に伴って運用手数料を下げることができる「純粋に投資家本位のファンド」の仕組みをビジネスモデルとして作り上げた。インデックスファンドを扱う業者は他にもあるが(米国には他に2社あって、インデックスファンドは3社の寡占状態だ)、ヴァンガードの仕組みにはアドバンテージがある。

ファンドの投資家がファンドの会社を所有していて、ファンドは投資家のために運用されているという建て付けは、実は相互会社形式の日本の大手生命保険会社とよく似ている。だが、日本の生保の商品と経営は、ヴァンガード的なものとはほとんど真逆にかけ離れている。経営者を含めて、会社に関わる人間の「志」の違いというしかない。会社の仕組みだけが素晴らしいわけではないことが、駄目な例との対比でよく分かる。

もちろん、ウォーレン・バフェットも素晴らしい。長期にわたる運用の好成績とバークシャー・ハザウェイ社の拡大に加えて、仕事を通じて投資の素晴らしさを人々に啓蒙している点が素晴らしい。投資のビジネスで大成功しているカール・アイカーンやレイ・ダリオ、あるいはロビンズの著作では大きなインタビューが載っていないものの、ファンドマネージャーとして成功したピーター・リンチやジョン・ネフのような人々と比較しても、総合的な影響力の点では、頭一つ以上抜けているのではないだろうか。

筆者としては、1位と、2位については、割と自信を持って決めることができるように思うのだが、第3位はなかなか難しい。

アンソニー・ロビンズの前掲書(特に赤い表紙の「世界のエリート投資家は何を見て動くか」の方)に、多くの大物たちへのインタビューが載っているので、興味のある読者は、是非これらを読んで考えてみてほしい。

リターンのレコードで言うとカール・アイカーンなのかもしれないし、現在の影響力ではレイ・ダリオ(大手ヘッジファンド、ブリッジウォーター社の経営者)かもしれない。あるいは、投資家に及ぼした好影響という意味では、ディスカウントブローカー(手数料の安い証券会社)のビジネスモデルを推進したチャールズ・シュワブを評価すべきだろうか。

筆者は、自分自身がネット証券に勤めていることもあり、チャールズ・シュワブに1票入れることにする。彼の人生と、人となりもまた大いに興味深い。

なお、青い表紙の「世界のエリート投資家は何を考えているか」の方は、個人が投資をどう理解し、どう行うべきかについて熱く説かれている運用ノウハウ本だ。前述のように著者は、投資家や学者ではなく「コーチ」なのだが、手数料コスト(運用手数料と取引手数料の両方)の重要性が繰り返し強調されるなど、大変まじめなものになっている。

推測するに、本書の内容が適切なものになった背景の一つに、著者のジョン・C・ボーグルへのインタビューがあったように思われる。今回は、この点からもボーグルを1番に評価したい。
(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
[以上引用 マクロ経済動向と資産運用形成 研究室]