米景気対策法案の次のステップ/米銀の国有化と不良資産分離処理

米国の景気対策は法案は、上下両院で一本化の基本合意がなされましたので、週内にも採決して成立する公算が高くなりました。オバマ大統領は、米経済の危機的状況を踏まえ、2月16日までに法案に署名したい意向ですので、遅くとも16日には署名、発効するものと思います。

その次に問題となるのは、米銀の国有化だと思います。米銀の不良債権処理を避けていては、株価も景気も回復は望めません。結果的には、シティグループを始めとして主要米銀のいくつかは国有化されるものと思います。

バッドバンク構想は、それ単独では、買取価格の問題があるので、実現は大変困難であると思います。買取価格が時価よりも高ければ買取側に含み損が生じますし、簿価よりも低ければ銀行の含み損が表面化してしまいます。そもそも、時価自体が流動的で日々変動していますから、なおさら価格査定に無理が生じます。

そこで、現時点で一番現実的なのは、シティグループを始めとする主要米銀の国有化です。1992年に2行を国有化したスウェーデンの成功事例がありますので、参考になるものと思います。①まず国有化し、②次に不良資産を切り離した上で強力にリストラし、③景気の回復を待つ、という手順となります。

日本でも、2003年5月17日に、りそなグループが2兆円の公的資金投入で国有化されてから日経平均株価が回復軌道に乗ったことは、記憶されている方も多いと思います。この時、りそなグループは、減資せず上場も維持されました。そこがポイントだったと思います。

今回の米財政出動による景気対策で、少なくともマイナス成長は相当程度防止できるはずですので、銀行不良債権問題が片付けば株価も戻り、景気は回復方向に向かうものと思います。景気が回復すれば、グレーゾーンにある半不良債権は一般債権に良化しますので、次第に不良債権は減少します。NYダウの下落によるマーケットの催促なしに国有化が早めに実施されるといいのですが・・・。今度は、ガイトナー長官頑張れ、ですか。

[参考資料]

◆「米上下両院協議会は11日、財政出動や減税を盛り込んだ7890億ドルの景気対策法案の修正案で合意した。」
 (「情報BOX:米両院協議会が合意した景気対策法案の概要」 09/02/12 ロイター)http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-36440420090212

◆「スウェーデン政府は九一年ごろから経営が悪化した準政府系大手ノード銀行への出資比率を引き上げたが、九二年にやはり大手のゴータ銀行が経営悪化に陥ったため、間を置かず両行を完全に国有化した。
また、両行の不良債権は効率的に処理するためバッドバンクに移管した。さらに、経営陣を刷新し、合併による徹底的なリストラを実施して、早期民営化を打ち出した。合併行は九五年には民営化に乗り出し、株式売却は政府に利益をもたらした。他方、バッドバンクも九七年に金融と産業の再生に重要な役割を果たして成功裏に業務を終えた。」
 (「歴史に学ぶ、金融危機の克服(6)日本総合研究所翁百合氏(やさしい経済学)」 日本総合研究所主席研究員翁百合氏 2004/02/05, 日本経済新聞 朝刊, 27ページ)

◆「再生にあたり、焦げ付いた不動産融資など不良債権部分を銀行本体から切り離し、政府が設立した債権管理・回収会社のセキュリコに移管した。その上で、投入された公的資金を使って(健全な)残りの銀行部分のリストラを促進。国内景気の回復にも支えられ、業績は急回復した」
 (「スウェーデンの銀行再生を聞く(上)ノルディアCEOノードストロム氏。」 2002/12/05, 日経金融新聞, 7ページ)

◆2003年5月「政府は十七日夜、首相官邸で初の金融危機対応会議を開き、りそなグループが申請を決めた公的資金による資本注入を認めることを決めた。グループ傘下のりそな銀行に二兆円規模を注入し、実質国有化する。日銀は同日臨時政策委員会を開き、必要に応じて無担保無制限の特別融資を実施して、資金繰りを支援する方針を決定。りそなグループは、川田憲治新社長が率いる経営陣の下で不良債権を分離して集中的に処理し、政府・日銀の支援を仰ぎながら早期再建をめざす・・・(中略)・・・記者会見した竹中平蔵経済財政・金融担当相は「株主責任としての減資は考えられない」と述べ、資本注入と同時に既存の株主資本を減らす減資の実施に否定的な考えを示した。一方、証券取引所での上場を維持して再生に取り組む意向を明らかにした。」
 (「政府・日銀、りそな支援決定――資本注入2兆円、特融も準備、不良債権分離し再建。」 2003/05/18, 日本経済新聞 朝刊)

※新聞記事はいずれも日経テレコン21によります。