FRBは米国債をどこまで買えばいいのか?

これほどの不況の中にあっても、将来のインフレリスクという心配を盾にしてどうしても通貨供給量を抑制しようとする経済音痴がいるのには困ったものです。単純なIS-LMモデルで考えれば分かりやすいと思いますが、赤字財政政策と通貨供給量拡大とは、セットで実施しなければ意味がありません。赤字財政政策だけですと、どうしてもクラウディングアウトの問題がいつの間にか発生してしまいますので、金利が少しずつ上昇を始めます。

現段階の10年もの米国債利回りは、先週比125bp上昇して3.6%となっていますが、まだ十分低い水準だと思いますし、4月時点の失業率が8.9%と十分不況状態にありますので、クラウディングアウトによる金利上昇には至っていないと思います(※1)。

米国失業率が今後10%に迫るという状況下では、現在も明らかに不況が継続しており、「米景気後退(リセッション)は終わりに近づいているが、経済は年末までに大幅に回復することはなく、デフレは引き続きリスクとなる」というダラス地区連銀のフィッシャー総裁の見解が正当です(※2)。

FRBの大目標の一つは、住宅価格回復のはずですので、せっかく低下しているモーゲージ債の金利上昇を防止する意味からも国債とモーゲージ債のさらなる追加購入は不可避だと思います。住宅市場が回復するまでは、バーナンキ議長は必ず米国債とモーゲージ債を柔軟に購入してマネーサプライを増やすはずです。

FRBの舵取りは難しいとは思いますが、失業率が7-8%台のうちはまだクラウディングアウトを心配する必要はないと思われ、10年債利回り3%台を維持できるような米国債買取り規模、あるいはまた4%台のモーゲージ債利回りを維持できるようなモーゲージ債買取り規模で良いのではないでしょうか。「FRBは、長期国債3000億ドルの買い入れに加え、年内にMBSを最大1兆2500億ドル、政府機関債を最大2000億ドル買い入れる方針」(※3)ということですので当面は現状の金利水準が維持されるものと思います。

やがて今後の米景気回復によって失業率が6%レベルに低下し、米住宅市場の回復にメドが立ってきた時点で、FRBは今度は米国債の売却を開始して金利上昇をある程度容認するとともに、米財務省は景気回復で増加した税収でもって国債の償還を進めることとなります。

ただし、ポイントは、発行した赤字国債すべてを無理に償還しようとはしないことです。国債償還重視ではなくて、GDP成長率と金利水準のバランス調節の方を重視するべきでしょう。経済規模(GDP)が拡大した分だけの通貨供給量拡大は不可欠ですので、それに見合った国債の存在もまたFRBの資産として必要となります。国債も経済規模とバランスの取れた一定の底溜り部分は、ずっと借り換えても、つまりは永久国債でも最終的には支障はないわけです。

なお、投資スタンスは変更なく、低PBR高配当利回り株、および高分配金利回り投信を対象としたドルコスト平均投資法による選別投資とします。GMはおそらく軟着陸で、NYダウへのマイナス影響は軽微でしょう。

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◆(※1)「米国債市場では、長期金利の指標となる10年物米国債の利回りは3.6083%で、前日NY市場終盤の3.612%付近から若干低下したものの、値動きは限定的なものにとどまっている。米国債は供給過剰懸念から、27日までの過去6週間で10年物の利回りが125ベーシスポイント(bp)上昇し、価格は大幅に崩れた。」
 (以上、「米ドルは弱含み、豪ドル・NZドルの上昇目立つ」(09/05/29 ロイターより抜粋) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-38291120090529?sp=true

◆(※2)「「米経済が年末までに持続的成長を実現できれば、喜ばしいが驚きでもある」と述べた。失業率は10%までの上昇も予想されるという。 
4月の米失業率は8.9%。リセッションが始まった2007年12月は4.9%だった。米経済には多大な緩みがみられ、近いうちにインフレが問題となることはない見込み。 
同総裁は「世界的に経済に緩みがみられ、目先のインフレ見通しは弱い。最近はデフレサイドの圧力がみられる」と述べた。」
 (以上、「UPDATE2: 年内の本格的景気回復は見込めず、米国債保有意欲は強い=米ダラス地区連銀総裁」(09/05/29 ロイターより抜粋)http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK838575620090529

◆「[ニューヨーク 27日 ロイター] 米抵当銀行協会(MBA)が発表した22日までの週の住宅ローン申請指数は低下し、3月上旬以来の水準となった。住宅ローン金利が2カ月超ぶりの水準に上昇し、借り換え需要を圧迫した。
30年住宅ローン金利(固定、手数料除く)は前週から0.12%ポイント上昇し4.81%。3月下旬には、過去最低水準の4.61%をつけていた。ただ依然として、前年同期の水準を1%ポイント超下回っている。」
 (以上、「米週間住宅ローン申請指数は低下=抵当銀行協会」 09/05/27 ロイターより抜粋)http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-38242720090527

◆(※3)「[ワシントン 28日 ロイター] 米長期金利の上昇を受けて、連邦準備理事会(FRB)が国債やモーゲージ債(MBS)の買い入れ増額を迫られるとの見方が出ている。アナリストの間では、買い入れを増やすのであれば、大規模に実施しなければ効果は期待できないとの指摘もある。
金融市場では米財政悪化に対する懸念が強まり、長期金利が上昇した。
2009年度の米財政赤字予測は1兆8000億ドル、財務省は今年約2兆ドルを借り入れる計画だ。
イールドカーブは大幅にスティープ化しており、2年債と10年債の利回り格差は27日、過去最大を記録した。巨額の国債発行が続くなか、投資家は米国債の購入に慎重になっている。
FRB内部では、国債買い入れを増額すれば、バランスシートが肥大化するとの懸念もあるが、長期金利の上昇が進めば、民間への低利融資の流れが断ち切られ、景気の回復が妨げられる恐れがある。
FRBは6カ月間で最大3000億ドルの長期国債を買い入れる方針だが、現時点ではまだ半分弱しか買い入れておらず、増額にはFRB内部の意見調整が必要になる。
FRBでは、買い入れを増額すれば、将来のインフレリスクが高まるとの懸念が出ているほか、FRBが財務省と結託して財政赤字を穴埋めしているとの見方が広がる恐れもあり、FRBの独立性を脅かすとの批判も出ている。 
米国債の売りが一気に膨らむなかで、FRBが国債を買い入れる事態になれば、FRBは大きなリスクを抱えることになる。
クランダル氏は、期間10年のスワップスプレッドが今週急拡大しており、信用収縮が悪化していると指摘。
「もし、純粋に経済ファンダメンタルズに基づく動きであれば、買い入れ増額の可能性は高まらない。ただ、現実にはリスクプレミアムが乗り、スワップスプレッドが拡大しており、増額の可能性が高まっている」と述べた。
FRBは、長期国債3000億ドルの買い入れに加え、年内にMBSを最大1兆2500億ドル、政府機関債を最大2000億ドル買い入れる方針。
長期国債の買い入れ額は27日時点で1305億ドル。MBSの買い入れ額は21日時点で4815億ドル。
コーン副議長は23日、FRBの資産買い入れについて、今後数年で国内総生産(GDP)を1兆ドル(インフレ調整後)押し上げる効果があるとの試算を明らかにした。
マイヤー氏は「現在の金融政策は適切とは言えず、なぜもっとも積極的な行動に出ないのか不思議だ。おそらく、内部に意見対立があり、効果に限界があるとの見方が出ているのだろう」と述べた。
FRBのバランスシートの規模は現在2兆ドルで、昨年9月のリーマン・ブラザーズ破たんから2倍に拡大している。
FRBは金融危機対策を適切な時期に縮小する方針を示しているが、バランスシートが肥大化すれば、それだけ圧縮が難しくなる。 
国債買い入れを大幅に増額すれば、市場のインフレ懸念をあおる可能性があるため、FRBが長期金利に一定の目標を設定して大規模な買い入れに踏み切る可能性は低いとみられる。」
 (以上、「米FRB、長期金利上昇で国債買い入れ増額も」 09/05/28 ロイターより抜粋) http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-38293520090529?sp=true