亀井金融相の銀行借入れ返済モラトリアム法案の救済目標はCMBSとJ-REIT

■一般的な中小企業融資対策とは別の目的がある法案
亀井金融相が09年9月に大騒ぎして提案、提出して可決された中小企業救済のための銀行借入れ返済モラトリアム法案について、その評価は分かれるところだと思いますし、一般中小企業融資対策としては無意味という見解で取引銀行(メガバンク)の融資担当者と当室管理人との意見が一致しているところではありますが、よくよく考えてみますと最近になって、はたと思い当たる部分がありました(※1)。

以下、全くの勝手な推測、推定の無責任発言としてお読みください。ネットや経済雑誌などで見る限り、誰も発言や報道していない内容ですので、自信があるわけではありません。

■亀井金融相の真の救済目標はCMBS(商業不動産ローン担保債券)とJ-REIT
当ブログでもすでに触れましたように、亀井金融相が返済モラトリアム法案を掲げて騒ぎ始めたのが、2009年9月16日のことです(※2)。そして亀井金融相は、中小企業による借入金や個人の住宅ローンなど銀行への返済に一定の猶予期間(モラトリアム)を設ける制度の導入について、法案化した上で10月の臨時国会に提出する方針を示しました。

どうしてこのような反資本主義的で理不尽とも見える法案をごり押ししようとしているのか、当室でもその意図が分からず、9月のブログで批判しました。

しかし、CMBSの2010年大量償還期限問題を視野に入れてみますと、その法案の意図するところは、実は中小企業や住宅ローンを抱えた個人の救済というよりも、CMBSおよびJ-REIT債権者の金融機関と債務者自身、そして不動産市場と金融システム全体を救済対象とするものではなかったのか、と思うようになりました。

順を追って説明しますと、まず、亀井金融相が騒ぎはじめる直前の9月11日に、次のような金融庁にとっては、びっくりする内容の公表がなされています。公表したのは、格付け会社のフィッチです。

◆「ハーベスト・ツー信託の3クラスを格下げ、アウトルック「弱含み」2009年09月11 日」(※3)

ハーベスト・ツー信託というのは、このすぐ後に新生銀行が発行金額で買い戻すというウルトラCを演じたCMBS(商業不動産ローン担保債券)で、有名なパシフィックセンチュリープレイス丸の内(PCP)を担保とするノンリコースローンです。それ以前から、フィッチはCMBSの危険度についての警告は発していますので、金融庁もCMBS2010年問題をどのように処理するのかは、かなり前から思案していたものと推測されます(※4)。とはいえ、ハーベスト・ツー信託の格下げは、PCPという丸の内の象徴的な旗艦物件を担保とするものだけに、金融庁に大きな衝撃が走ったことは想像に難くないと思います。

もともとPCPはダヴィンチホールディングスの運用するファンドが旗艦物件として保有していましたが、実際に、このPCP向けのデット部分1700億円強がリファイナンス不能となり、格下げのすぐ後の9月25日にデフォルトしています。ビルの知名度が高いだけに、その影響は甚大です。

日本におけるCMBSの市場規模は3兆円以上と推定され、2010年には06年~07年に大量組成されたCMBSの裏付けローンの償還期限が到来する予定で、ムーディーズによれば、2010年の償還額約1兆2300億円、2011年約8100億円、2012年約7100億円とされています。これらがもし仮にリファイナンス不能となり、次々とデフォルトした場合には、現在のまだ病み上がりの世界経済の情勢下では、間違いなく日本発世界金融恐慌となってしまうことでしょう。

そのための救済対策が、平成21年10月30日提出、平成21年11月30日成立の「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(以下ここでは「返済モラトリアム法」と言います)というわけです。成立のタイミングがまさしくぴったりです。法律の有効期限も平成21年12月4日から平成23年3月31日までの1年4ヶ月で、取りあえずは2010年を乗り切ろうとするものだと言えます。

■返済モラトリアム法の中身を見るとCMBSもJ-REITも救済可能である
(関連法規が長文ですので、以下要点のみ述べます。)
同法の救済対象は、中小企業者と住宅資金借入者ということとされており、中小企業者の定義は次の通りです。

●中小企業者・・・資本金、出資の総額が3億円以下の一般事業会社。または従業員数が300人以下の一般事業会社。ただし、金融業その他の政令で定める業種は除く。なお、サービス業は資本金5千万円以下、または従業員100人以下。

では、肝心の中小企業者の中に、CMBSの発行体(特定目的会社)が含まれるのかどうか、ということになりますが、次の理由から「含まれる」と当室は解釈します。

●特定目的会社は、資産の流動化に関する法律(平成十年六月十五日法律第百五号)(※5)に規定する通り、金融業ではなく一般事業会社だとされている。資本金額、従業員数は通例少額、少数であり、中小事業者と解釈して問題ない。

次に同法では、金融機関の救済対象となる中小企業者の範囲としては、少し制限が付きまして、金融機関や大会社と特殊関係にあり、財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を受ける法人は、救済対象から除外することとなっています。特定目的会社は、その両者とべったり関係がありそうに見えますが、実際の設立の仕組みとしては金融機関や大会社が「財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響は与えること」は出来ないように組成されていますので、本件救済対象としての法律要件を満たしていることになります。

■同法内閣府令の中に「特別目的会社」という語句が登場
同法は、本体、政令、内閣府令と三段構えの構成となっているために、大変分かりにくい内容ですが、最後の内閣府令の中に、金融機関や大会社の「子会社以外の特別目的会社(=特定目的会社)」という語句が出現しておりまして、「財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響は与えることができないことが明らかであると認められるときは、この限りではない」、つまり救済対象として大丈夫だと、わざわざ断り書きがしてあります。ここが同法で一番書きたかった本丸と見て間違いありません。

従いまして、CMBSの発行主体である特定目的会社から救済の相談があった場合には、金融機関は救済に応じてください、そして金融庁に報告してください、ということになるわけです。ようやく返済モラトリアム法の意図が分かりました。亀井金融相の政策に外れはなかった、ということになります。脱帽です。

法律の内容から判断しますと、従業員数が一般的に少ないはずのJ-REIT法人(特定目的会社)も救済対象になります。(※6)

■確かに、CMBSとJ-REITの救済には、返済猶予と追い貸ししかない
金融機関に体力がなくなっている現況と1兆2300億円という返済額の規模の大きさ、巨額の赤字国債に依存する財政状況、デフレに苦しむ日本経済の不振、金融不況からようやく回復しつつある世界経済の情勢等々を勘案しますと、確かに銀行全体での貸し支えしか、事態を打開する方法はありません。とりあえず、最大のヤマ場となる2010年を返済モラトリアムで乗り切り、その間に財政政策で景気を下支えして回復を待つ、という作戦が最良です。亀井金融相の政策は正鵠を射ているものと言えます。

■中南米危機へのボルカー元FRB議長の対応(参考)
今は昔の1982年、かつて米銀が中南米への多額の貸付金焦げ付きを回避するために使ったのが、リスケとデット・エクイティ・スワップと追い貸しでした。その当時のボルカーFRB議長の米銀に対する対応状況は大変参考になりますので、まとまりの良い他のブログから長文ですが引用し、本日のところは一時休息にしたいと思います。どうも亀井金融相は、ボルカーFRB議長の事例を参考にしようとしているように思います。

以下、すべて引用です。

「なぜ、米国の銀行は、中南米諸国に対して、それほどまでに巨額の資金を貸し込んだかです。こういう動きに対してクー氏のいたニューヨーク連邦準備銀行は危機が発生する4年も前から、たびたび大手米銀の役員を呼び出しては、警告を発していたのです。それでも当時の米銀は聞く耳を持たなかったといいます。
それは、1980年代に登場したコマーシャル・ペーパーの普及がその背景にあります。コマーシャル・ペーパー(CP)というのは、企業が短期(1年未満)の資金を調達するために発行する有価証券の一種です。日本では、1987年11月からその発行が認められるようになっています。
このCPの普及で当時の米銀は、それまで伝統的融資先であった企業の運転資金がCPに代替されつつあり、それに代わる新たな融資先を開拓するのに必死だったのです。

それに当時米国銀行界のドンといわれた、ウォルター・リストン・シティバンク会長が、「企業は潰れるが、国は潰れない」というキャッチフレーズで、シティバンク自ら外国の公的機関への投資を積極化させていたことに影響されて、それは一種のブームとなっていったのです。とくに中南米の諸国は、高金利で貸し出せるので、米国のほとんどの銀行が右にならえをしたのです。
しかし、イギリスとアルゼンチンのフォークランド紛争をきっけにして、本当の債務危機が発生したとき、当時、FRB(米連邦準備制度理事会)議長のポール・ボルカー氏が、ニューヨーク連銀に出してきた指示は次のように意外なものだったのです。
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       いかなる手段を使ってでも、銀行が中南米に踏みとどまって
      資金を供給するようにせよ。銀行に逃げ出す口実を絶対に与え
      てはならない。          --ポール・ボルカー議長
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普通こういう事態になったら、外国の銀行は残っているドルをかき集めて逃げ出すところです。ボルカー議長が恐れたのは、一行でも資金を回収して逃げ出そうとする銀行があると、他の銀行もみんな一斉に逃げ出してしまうことだったのです。もし、そういう状況を許したら、借り手はデフォルトの公式発表を余儀なくされ、主要米銀のほとんどは確実に倒産に追い込まれてしまうからです。
ニューヨーク連銀は、中南米諸国に融資していた何百という銀行ひとつ1つに対して資金回収をせず、追加融資をするよう説得して回ったのです。要するに、追い貸しの依頼です。銀行が追い貸しに応ずれば、メキシコ側はそのお金で金利分を支払うことができ、公式なデフォルトは何とか回避できるからです。
倒産寸前の企業に追い貸しをする--このようなことはミクロの世界では、考えられないことです。しかしこういう場合は、マクロで考えて手を打つことが必要なのです。よく国の財政赤字を個人の借金にたとえて、これ以上は借金できないという論法を使うことがありますが、ミクロの常識をマクロにあてはめることは問題があります。

さて、ボルカー議長は、銀行が逃げ出さないようにする手を打つと同時に、米国にある3つの銀行検査当局に対し、そのとき完全に不良債権化していた中南米諸国への貸付を「不良債権として扱ってはならない」と命令したのです。もし、不良債権として扱うと、追加融資ができないことと、株主代表訴訟を恐れて、銀行が中南米から逃げ出してしまうからです。さらに、ボルカー議長を頂点とする米国金融当局は、さらに外国の銀行が中南米から撤退したり、危機的状況に陥っている米銀に対して融資を削減したりしないように要請したのです。当時の前川日銀総裁にボルカー議長が電話したのも、その要請のひとつであったのです。このように考えると、FRB議長がいかに重責かがよくわかります。

さらに、米国金融当局は、米銀経営陣の経営責任を一切問わなかったことです。米銀がそれまでにやってきたことの詳細をすべて把握していたにもかかわらず、あえてそれを問題にしなかったのです。これもミクロとマクロの考え方の違いです。既にシステミック・リスクが発生していて、全銀行の協力と団結が必要なときに、ミクロ経済では当然の正義は、マクロ経済の生存のために棚上げされたのです。少なくとも、経営者の責任を問う状況ではないという高度の判断が行われたのです。

ボルカー議長の危機に対する適切な対応と強力なリーダーシップによって、中南米危機は少しずつ収まっていったのです。そして危機解消といえる状態になるまでに数十年もかかっています。それまで、米国金融当局は、5年もかけて、借り手である中南米側と貸し手である銀行の双方の財政状態を着実に改善していったのです。もちろん、世界銀行やIMFにも借り手側の経済運営面での支援を仰いでのことです。ある程度危機が収まった1987年5月のことです。体力が回復した当時のシティバンクが中南米向け融資を不良債権として処理しようとしたのです。それに対してボルカー氏は公の場で猛反対してをこれを止めています。ボルカー氏が恐れたのは、体力を取り戻した銀行がそのようなかっこいい行動をとると、他の銀行も右にならえをする恐れが十分あったからです。とくにシティバンクは、
中南米危機の原因を作った銀行であり、勝手な行動は許さないというボルカー氏の怒りもそこにあったと思います。

特筆すべきは、この未曾有の金融危機の解決には納税者の負担がゼロであったことです。中南米危機は貯蓄貸付組合(S&L)問題の10倍以上深刻な問題であったにもかかわらず、S&Lが1600億ドルかかったのに比べ、ゼロで済んだのです。日本はこの中南米危機を参考にすべきであるとクー氏はいうのです。
                      ・・・[バランスシート不況/14]」
(以上、インテック・ジャパン・ブログより引用)http://intec-j.seesaa.net/article/42019768.html

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◆(※1)返済モラトリアム法案の正式名称は次の通りです。
「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」
(平成21年10月30日提出、平成21年11月30日成立)http://www.fsa.go.jp/common/diet/173/01/riyuu.pdf

◆(※2)「郵政問題・金融担当相に就任した国民新党の亀井静香代表は16日から17日未明にかけての記者会見で、中小企業による借入金や個人の住宅ローンなど銀行への返済に一定の猶予期間(モラトリアム)を設ける制度の導入について、法案化した上で10月の臨時国会に提出する方針を示した。」(09/09/17ロイター)http://jp.reuters.com/article/foreignExchNews/idJPnTK030788520090916

◆(※3)「フィッチ・レーティングス-東京/シンガポール-2009年9月11日:
フィッチ・レーティングス(フィッチ)は、先に公表された「日本のCMBSのサーベイランスに関する格付基準」に基づき、本日付で、ハーベスト・ツー信託(最終償還期日:2011年9月)の3クラスの信託受益権を格下げ、また全てのクラスについて格付ウォッチ「ネガティブ」を解除した。詳細は以下の通りである。

A号受益権(残高705億円*) 「AAA」に据え置き、アウトルック「弱含み」
B号受益権(残高136億円*) 「AA」から「A+」に格下げ、アウトルック「弱含み」
C号受益権(残高136億円*) 「A」から「BBB-(BBBマイナス)」に格下げ、アウトルック「弱含み」
D号受益権(残高143億円*) 「BBB」から「B」に格下げ、アウトルック「弱含み」
*2009年9月10日現在

B号、C号及びD号受益権の格下げは、サーベイランスの結果を受けてなされたものであり、裏付ローンの回収見通しについてのフィッチの見解を反映したものである。フィッチはまた、全てのクラスについて格付ウォッチ「ネガティブ」を解除したが、これは担保物件の再評価を行った結果、更なる格付アクションを行う可能性が低くなったと判断したためである。一方で、裏付ローンの期限や本件CMBSの最終償還期限(2011年9月)までに残された期間が短くなっていることを反映し、アウトルックを「弱含み」としている。
これまでの担保物件の運営実績はフィッチが当初予想した水準をほぼ満たすものであったが、当該物件の属するセグメントにおいては、2009年初頭以降、市場賃料が顕著な下落傾向にあり、また、不動産投資家が期待するキャップレートの水準も、幾分上昇傾向にある。
フィッチは最近公表した格付基準に基づき、裏付ローンの状況及びローン期日までの期間を考慮して、当該担保物件の評価額の見直しを行った。結果として、ストレスのかかった市場環境下での物件売却を想定し、当初フィッチ・バリューから35%下回る水準を、今回の格付分析のためのバリューとして採用した。

フィッチは本案件に対し、2007年11月に格付を付与している。格付の対象となっている信託受益権の裏付資産は、国内商業用不動産(東京都千代田区に存するクラスAのオフィスビルの区分所有権)を実質的な担保とするローン債権である。
(フィッチ社ホームページより)http://www.fitchratings.co.jp/pressReleaseDetail.ctl.php?id=2610

◆(※4)「日本のCMBSにおける2009年上半期期日到来ローンのデフォルト割合は53%、セクター全般を格付ウォッチ「ネガティブ」の対象に 2009年07月13 日

フィッチ・レーティングス(フィッチ)は本日、日本における商業用不動産担保証券(CMBS)の裏付債権のデフォルトが前例のないペースで増えており、フィッチが格付する日本のCMBSにおいて、2009年6月末までの6ヶ月間に期日が到来した裏付債権の53%がデフォルトしたとコメントしている。高いデフォルト割合は、日本経済の不透明な見通しや商業用不動産全般の価格の不確実性とともに、不動産ファイナンスの供給が相当に限定されている状況を反映していると考えられる。このためフィッチは当該セクター全体のリスクの高まりに対応して、期日に大きな元本返済を予定するローン(期日一括ローン)を裏付債権とするCMBS案件の全てのクラスを格付ウォッチ「ネガティブ」の対象とした。

2009年上半期において、期日が到来した裏付債権(契約上の一定事由の発生に伴い、期日前に期限の利益を喪失したものを含む)のうち、件数ベースで53%(2009年6月末までの6ヶ月間に期日が到来した30件のうち16件)、金額ベースで63%(2009年6月末までの6ヶ月間に期日が到来した923億円のうち586億円)に相当する裏付債権が元本の全額返済に至らなかった。

フィッチのアジア太平洋地区におけるストラクチャード・ファイナンス部門の責任者、ベン・マッカーシーは、「2009年に入ってからの裏付債権のデフォルト割合は、前例のない水準にまで上昇した。主要な不動産レンダーが市場から撤退したことや、残るレンダーも不動産価格全般の先行きを不透明と感じていることなどから、日本の商業用不動産セクターへの資金供給が不足していることがその要因と考えられる。また、これはフィッチが日本の2009年のGDPを6.9%のマイナス成長と予測しているように先進国中最も厳しい経済見通しも背景となっている。期日一括ローンを裏付けとするすべての日本のCMBS案件に対する格付ウォッチ「ネガティブ」の指定は、これらのすべての要因を踏まえたものである。今後、案件レベルの詳細な検討・分析を行ったうえで、格付アクションを実施していく。過半の案件において、一部または全部のクラスの格下げが行われる可能性がある」とコメントしている。

また、フィッチの日本におけるストラクチャード・ファイナンス部門の責任者、工藤仁章は、「フィッチが格付するラージローン型CMBSの裏付債権のデフォルト率は2008年12月末時点で3.7%(件数ベース、金額ベースでは1.6%)であったが、わずか6ヶ月で11.6%(件数ベース、金額ベースでは5.6%)まで上昇した。これらの多くは期日の到来におけるリファイナンス活動が不調に終わったことによる。不動産ファイナンスの供給不足と、これに伴う強制的な物件処分は、不動産市場への圧力となっている。フィッチはこの状況が既存の日本CMBS格付に対して根本的なインパクトを直接与える可能性を想定している。」とコメントしている。

フィッチは、極めて困難なファイナンス環境は当面継続し、結果としてデフォルト率は今後も上昇すると予想している。フィッチが格付するラージローン型CMBSに置いて、今後3ヶ月間で1,355億円、そして2010年末までに5,862億円の裏付債権が期日を迎える予定となっている。今後18ヶ月間で期日が到来する裏付債権は、フィッチが格付する日本のCMBSの裏付債権全体の39%を占めており、米国の7%、英国の9%と比べても非常に高い。極めて厳しい日本の商業用不動産ファイナンス市場の現状を踏まえ、フィッチは、分析上、少なくとも今後12ヶ月間に期日が到来する裏付債権はデフォルトし、ストレスのかかった価格で担保物件処分を余儀なくされる可能性を想定している。

一般的に日本のラージローン型CMBSは、最も遅く到来するローンの期日を予定償還期日とし、CMBSの最終償還期日までの間に2年のテール期間が設定されている。

フィッチは現在46件のCMBS格付を公表しており、このうち36件がラージローン型のCMBSと分類される。いわゆるIOクラスを除く、すべてのラージローン型CMBSのクラスが格付ウォッチ「ネガティブ」の対象となるため、31案件の130クラスが新たに指定されるほか、すでに対象となっている18案件の58クラスについては格付ウォッチ「ネガティブ」が維持される。対象となるCMBS案件はそれぞれ商業用不動産を担保とする1件から28件の期日一括ローンを裏付債権としている。フィッチが格付する日本のラージローン型CMBSには合計で約200件の裏付債権が含まれており、2008年末には件数ベースで3.7%であったデフォルト率が2009年6月末時点では11.6%にまで上昇している。フィッチは分析手法の最終調整及び確認の後、対象となる社債または信託受益権に対する格付アクションを7月中に案件ごとに始める予定である。」
(フィッチ社ホームページによる)http://www.fitchratings.co.jp/pressReleaseDetail.ctl.php?id=2557

◆(※5)CMBS発行のための特定目的会社の根拠法・・・「資産の流動化に関する法律」(平成十年六月十五日法律第百五号)http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO105.html

◆(※6)J-REITの根拠法・・・「投資信託及び投資法人に関する法律」(昭和二十六年六月四日法律第百九十八号)http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26HO198.html

◆参考文献 「炸裂する不動産金融「2010年問題」 デフォルト連発のノンリコースローン」
「フィッチは不動産価格を07年終わりごろと比べ、最大で40%下落したと見ている。その中で、大量の裏付けローンが期日を迎え、リファイナンス不能になり、物件の投げ売りと地価急落を招く--。これが「2010年問題」だが、現状では火を噴くまでに至っていない。これはテール期間に入っているため。通常、CMBSは裏付けローンの弁済期限が到来しても、その後、2年程度はテール期間が設けられ、この間に回収を行うことになる。キャッシュフローを生むオフィスビル等であり、かつ現在の市況を考えると、当然ながら物件は市場に放出されず、当面は売り圧力とはならない。その意味で「2010年問題」は「2011年問題」あるいは「2012年問題」へと後ろ倒しされる可能性がある。さらにサブプライム危機顕在化以来、しばらく消極姿勢を続けてきた邦銀勢が、ここに来て不動産NRLの供給に前向きになったためだ。既存先のリファイナンスについても、基本的に全行とも応じる姿勢だ。全額応じるケースは希有で、担保価格の下落やLTV水準の低下で追加出資を求める、融資条件を厳格化するなどで対応している。」
(東洋経済オンライン 09/11/25)http://www.toyokeizai.net/business/industrial/detail/AC/2526ac6e0a6ad20dafeb659f957fd93b/page/1/