毎月分配型投信に関する「新・分配金の誤解」の誤解

モーニングスターのホームページの「アナリストの視点(ファンド)」(2010-09-02付)で掲載されておりました「新・分配金の誤解」に、毎月分配型ファンドの欠点が5つにまとめて掲載されていました(※1)。投信の専門家が挙げた欠点ですので、これで毎月分配型ファンドの持つ欠点の全体像は尽くされていると見ていいでしょう。要約すれば次のようになります。

①分配金はファンドの純資産を取り崩して支払われるため基準価額の下落要因となる。
②分配金を受け取ってしまうと複利効果が期待できない。例えば、年間10%の利息がつく金融商品を10年間保有すると100%の利息が得られる計算になるが、税引前の分配金を全額再投資することができれば159%の利息が得られる。
③分配金は課税される。
④分配金は将来的には増減する可能性がある。
⑤高い分配金が維持されていたとしても、基準価額が分配金の累計額以上に下落した場合、トータルで考えるとマイナスとなってしまう。
⑥毎月分配型ファンドのコストは高めに設定されている場合もある。信託報酬等(税込み)をみると、毎月分配型平均は1.21%。

当室ではこれらの問題点については、すでに過去のブログで概ね検討を完了しておりますが、念のため論点をここで整理しておきまして、毎月分配型投信の欠陥問題に関する議論はひと区切りとしておきたいと思います。なお、当室で想定しているのは毎月分配型REIT投信です。

①の蛸足配当問題・・・毎月分配型投信の分配金には、投資対象資産からの「上がり」に加えて、投資対象資産自体の時価上昇部分が含まれる仕組みとなっています。これは「蛸足配当」だという解釈も成り立つ仕組みではありますが、実質的に「蛸足配当」になってしまうかどうかは、投資対象資産の価格が上昇するかしないかに依存していますので、投資対象資産時価が上昇すれば「蛸足配当」には該当しないと解釈できます。したがって、基準価格がマーケットで維持されているかどうかを厳密に監視しておく必要があることは、以前すでに説明した通りです。

②の複利効果問題・・・分配金を受け取らないで分配金相当額を投信会社がそのまま運用すれば複利で大層な運用益が得られるように書いていますが、投信会社に運用を任せていて実際の運用利回りが順調にプラスになるとは限りません。投資家自身が分配金を受け取っておいて、それを同じREIT投信に再投資する方が、投資家にとって確実に「複利運用」が出来ます。

③の分配金の課税問題・・・すでに以前説明しましたように、たとえば元金が7.5%で毎年成長するケース(インデックス投信イメージ)と、毎月7.5%の分配金があってそれに10%の天引き課税がなされてそれを再投資したケース(REIT投信イメージ)とを利回り比較してみましたが、大きな差異は現れませんでした。その理由は、インデックス型が単純に毎年7.5%平均で成長するのに対して、REIT毎月分配金型が税引き後とはいえ毎月再投資複利運用ができるからです。税率が20%に引き上げられた場合は毎月分配金型が不利になると思いますが、現実には分配金利回りが10%をはるかに超えていますので、現状が維持されるのであれば依然として毎月分配金型の有利性は否定できません。

④の分配金変動問題・・・これは投資全般に言える不確定性ですので、当然想定しています。株式の配当金なども業績次第でいかようにも増減しますので、毎月分配型投信の分配金が変動してもそれが問題点、あるいは問題視するほどの注意点とまでは言えません。

⑤の基準価格下落問題・・・これも投資全般に言える不確定性ですので、当然想定しています。株式の価格も配当金でカバーできないくらい下落するのはよくある話ですから、毎月分配型投信でだけ特別に注意が必要というわけではありません。収支トータルを考慮した上での基準価格動向の監視は当然で、それは投資行為すべてに共通です。

⑥の信託報酬等の高額・割高問題・・・毎月分配型投信の購入手数料や信託報酬等がインデックス投信に比較すれば高額・割高なのは事実です。ただし、毎月分配型投信は利回りも高いので、現状では十分おつりが来ます。そのあたりのコスト計算は十分考慮する必要があるのは投資家として当然で、これもすでに過去のブログで述べました。

以上をまとめますと、結局はすでに述べていた通り、①投資資金が目減りしないように投信基準価格が維持され、かつ②高い分配金利回りが維持されていれば、効率よく資産運用が出来ているという当たり前のことに帰着するだけのことです。

なお、REIT投信基準価格の変動は、このたびのリーマンショック以降の落ち込みでは株式インデックス投信よりも大きく、かつ低迷しています。もちろんREIT投信基準価格の変動に先行性や遅行性の要素、あるいは不動産特有のリスクはあるとしても、今後の基本的なマクロ経済的変動リスクの予測可能性はインデックス投信と同程度ではないかと思います。基準価格の動向をよくよく監視して行く予定です。

資産運用の選択肢の一つとして、毎月分配型REIT投信は世間で言われるほど不利な商品ではなく、当室としては引き続き運用の主力対象とする予定です。

■当ブログの過去の記事:「毎月分配型投信は特に不利な商品ではない」→http://toshukou.at.webry.info/201004/article_6.html
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           (ワールド・リート・オープン(毎月決算型)と日経225の比較:ヤフーファイナンスより引用)
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◆(※1)新・分配金の誤解(モーニングスター ホームページより)
「このように人気が一段と高まっている毎月分配型だが、「分配回数(ファンドの決算回数)が少ないファンドよりも、分配回数が多いファンドの方が得」と考えていたとしたら、誤解である。以下の5つのポイントに注目したい。
第1に、分配金はファンドの純資産を取り崩して支払われる。つまり、元本にプラスして支払われる預貯金とは異なり、分配金は信託財産が一部現金化されて手元に戻って来たものに過ぎない。そのため、分配金の支払いは基準価額の下落要因となり、分配金が多いことは投資家にとっては必ずしもプラスとならない場合がある。
第2に、毎月分配型などの分配回数が多いファンドを購入する投資家の多くは分配金の受取を目的としていると推測されるが、分配金を受けとってしまうと複利効果が期待できない。例えば、年間10%の利息がつく金融商品を10年間保有すると100%の利息が得られる計算になるが、税引前の分配金を全額再投資することができれば159%の利息が得られる。
第3に、分配金は課税される。具体的には、普通分配金と特別分配金があるが、普通分配金には一律20%の源泉税が課される(ただし、2011年12月末までは10%の軽減税率)。
第4に、分配金は将来的には増減する可能性がある。直近では、分配金利回り(分配金÷基準価額)の高さから、グローバルREITや新興国債券ファンドが人気を集めたが、今後の経済状況等の影響を受けて変動する可能性があり、当初に期待していたほど分配金が得られない可能性もある。
第5に、高い分配金が維持されていたとしても、基準価額が分配金の累計額以上に下落した場合、トータルで考えるとマイナスとなってしまう。モーニングスターでは、基準価額の騰落率ではなく、分配金(税引前)を再投資したと仮定して計算したトータルリターンをみるように薦めているのはそのためだ。
これらに加え、投資対象や設定時期によっては、毎月分配型ファンドのコストは高めに設定されている場合もある。モーニングスターの類似ファンド分類「国際債券・グローバル(為替ヘッジなし)」に属するファンドの信託報酬等(税込み)をみると、毎月分配型平均は1.21%と、年1~6回決算型平均の1.04%を上回る(図2参照)。」

http://www.morningstar.co.jp/fund/analyst/2010/3q/MFA120100902.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+co%2FfArh+%28%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC+%5B+%E7%B7%8F%E5%90%88%E9%87%91%E8%9E%8D%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%80%80%E6%8A%95%E8%B3%87%E4%BF%A1%E8%A8%97%E3%83%BB%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E3%83%BBETF%E3%83%BB%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AA%E3%82%AA+%5D%29