ヘッジ・ファンドの投資動向(2)

■ソロス・ファンドは金ETFを巧みに売却中

ソロス・ファンドは、2009年12月に大幅に増加させた金ETFを、その後の四半期ごとに少しずつ売却しています。次のデータは、同ファンドの金ETFの保有株数と残高の推移です。

①2009.Q3  2,500,000株
②2009.Q4  6,200,000株(+148.0%)  600.6百万ドル
③2010.Q1  5,585,947株(- 9.59%)  608.6百万ドル
④2010.Q2  5,244,697株(- 6.11%)  638.2百万ドル
⑤2010.Q3  4,697,008株(- 8.98%)  600.8百万ドル
ただし、Q1は第1四半期、Q2は第2四半期、Q3は第3四半期、Q4は第4四半期末。
①②は下記(※1)、③④⑤は(※2)による。

しかも、金額の変化を観察しますと、みごとに6億ドルが維持されておりまして、値上がり部分を換金して手堅く利益を確保しつつ、金額的な「リバランス(?)」になっています。この動きは、なかなか出来ない管理手法ですが、現状では金も最高値の1400ドル近辺にあり、かつまた米国金利も緩やかな上昇が予想されますから、いずれ近いうちにポジションを縮小し始めるのではないかと思われます。

付け足しながら、久世雄三さんの次のコメントに通じる一面があります。ここのところは上昇相場ですので、気が緩みがちですが、ソロス・ファンドのような手堅さも必要でしょう。

★「正しい投資とは株が高くなるに従って株を売って保有比率を低くし、現金比率を高くする。株が安くなるに従って、株を買って保有比率を高くし、現金比率を低くする」

★「上げ相場では誰でも儲けられるが、株の上手下手は下げ相場になったときにわかる」

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                       (ソロス氏:ロイターによる)

■バフェット氏は固定金利調達を開始/金利上昇を予測
一方で、ブルームバーグの報道ですと、バフェット氏の経営するバークシャー・ハサウェイ社は、変動利付き債の借り換えで社債15億ドル(約1230億円)を発行し、その新発債の大半が固定金利債だということです。これは間違いなく今後の金利動向を考慮したものであり、現段階の市場金利が上昇局面の入り口にあるということを想定しています。米国経済が堅調に少しずつ回復中であることは事実ですから、今後の金利上昇に配慮した調達方法を採用するのは、経営サイドとしては当然のことです。

ところで、バフェット氏が株式投資で大成功を収めている要因として、バリュー投資や投資先経営者の能力重視、あるいはイベント発生による割安時での購入など、各方面で様々な分析がなされていますが、当室の見るところ、本件も含めてこれまでの同氏の投資動向を観察しておりますと、どうもマクロ経済動向に対する配慮や考察、先読みが投資の背後に色濃く感じられます。同氏のマクロ経済動向に対する推察は、相当に確度の高いものであり、それが株式投資成功の一番の大きな要因であると当室は考えています。

さて、米国金利の緩やかな上昇、ということは米国債券安方向、および円安方向ということです。債券インデックス・ファンドへの投資配分は抑制し、円安メリットの出る外国株、日本株投資への資金配分を少し増加させる投資方向が妥当だと思います。

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◆(※1)米ソロスファンド、第4四半期に金連動型ETFへの投資倍増(2010年 02月 17日 ロイターより)
「[ボストン 16日 ロイター] 米著名投資家ジョージ・ソロス氏のソロス・ファンド・マネジメントは、第4・四半期に、金連動型ETF(上場投資信託)への投資を2倍以上に増やした。2009年末時点の同ファンドの運用資産は88億ドル。
ソロス・ファンドが16日、米証券取引委員会(SEC)に提出した文書で明らかになった。
それによると同ファンドは、09年末時点で、金連動型ETFのSPDRゴールドトラストの株式620万株(6億6300万ドル相当)を保有。第3・四半期の250万株から大幅に増えた。
ソロス氏やジョン・ポールソン氏など著名投資家は以前、インフレや経済混乱、米ドルの価値低下に対するヘッジとしての金の価値を強調していたが、ソロス氏は先月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で「究極の資産バブルは金だ」と発言した。同氏は自身が金への投資を行っているかについては言及しなかった。」
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-13930820100217

◆(※2)ブログ「海外投資家保有銘柄」による。http://tommybrothers.blogspot.com/

◆(※3)バフェット氏が固定金利債発行にシフト-長期的に金利上昇との認識か(2011/01/04)
1月4日(ブルームバーグ):著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイは、変動利付き債の借り換えで社債15億ドル(約1230億円)を発行した。新発債の大半が固定金利債。国債利回りが上昇し、米経済が改善の兆候を示しているときだけに、バフェット氏の固定金利債へのシフトが注目を集めている。
ブルームバーグのデータによれば、バークシャーの子会社は3日、表面利率4.25%の10年債、7億5000万ドルを発行。利回りは米国債を95ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上回る水準。さらに、表面利率1.5%の3年債、3億7500万ドルも発行した。同額の変動利付き債は3カ月物ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を33bp上回る利回りで発行した。
英スタンダードチャータード銀行のクレジット戦略責任者、ビジェイ・チャンダー氏(香港在勤)は電話インタビューで、「市場はバフェット氏の動きを注視している。長期的に金利が上昇するとバフェット氏が考えていることを示すものかもしれない」と指摘。その上で、「米経済が改善しているとのわれわれの見方とも一致する」と述べた。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920008&sid=aADpp71kMNZE