スイス中銀が対ユーロ相場に上限設定

スイス中銀がスイスフラン高対策で、対ユーロ相場に上限設定する動きに出ました(※1)。

賛否両論あろうとは思いますが、為替相場が荒れる展開の場合は、たとえ先進国であっても、為替レート管理は必要だというのが当室の見解です。都合の良い通貨安となっている当事者(欧米)は、他国が介入する場合は自国の利益に反するために文句を言うに決まっていますから、その顔色を伺う必要性は乏しいと思います。その点、今回のスイス政府のスタンスは的確であると考えられます。

日本の場合は、財務省所管の外為特別会計が借金をして円売りドル買いを実施(執行は日銀が代行)しますが、当室のやや乱暴な考えでは、介入原資は借金ではなくても良いと思案しています。借金はいずれ返済する必要があるために安定感を欠きますし、差損が発生した場合の後始末が厄介です。

その点を落ち着いて考えれば、円売り介入は、米ドルという米国の「債務証書」を担保見合いとして円貨を投入するわけですから、単純に日銀が無制限に円貨を発行してドルを購入すれば良いだけで、借入を原資とする必然性は乏しく、いわばドル円両替需要に対する両替円貨供給という単純概念で十分だと思います。

ドルから円への両替需要が尽きるまで、無尽蔵に円貨を供給できる日銀が、無制限に両替に応じてやれば、いかにヘッジファンドといえども資金が尽きるか、あるいは投機が無意味と悟って撤退するものと思います。そうなれば、為替レートは急速に円安に振れることとなりましょう。

極度に円安に振れた場合は、手持ちのドルを豪快に売却すれば調整が付いて適当な需給バランス水準に戻ることとなりますし、そのプロセスの中でおそらくは莫大な為替差益が政府・日銀に発生します。既存の差損との相殺も或る程度可能でしょう。

円安による輸出振興で稼ぐには、日本経済はすでに大きくなり過ぎたとは思いますが、さすがに現在の76-77円のような円高水準はスピード的に進行し過ぎであり、一度1ドル=100円程度に戻してから、中国のように必要に応じて政策的にペッグを緩めて行けば、日本企業も十分対応可能であると思います。

投資家の資産運用と同様に、国家としての産業ポートフォリオの動向を見据えた上での政府の政策的為替管理が、先進国であってもある程度は必要だということです。米国自身、基軸通貨という介入不要で垂れ流せば自然にドル安となる便利な手段での為替安政策を実施中ですし、日本としてもマーケットの動きに身を任せているだけが能ではありません。

それにしても、このドル/スイスチャート60分足は豪快です。

画像
 (ドル/スイスチャート60分足・2011.09.07 外為どっとコムHPより)

[以下、引用]
◆(※1)スイス中銀がフラン高対策で対ユーロ相場に上限設定、日本の反応に注目(2011年 09月 6日ロイターより) 
「[チューリヒ 6日 ロイター] スイス国立銀行(中央銀行、SNB)は6日、新たなスイスフラン高対策を発表した。スイスフランの対ユーロ相場に1ユーロ=1.20フランという上限目標を設定。目標を達成するために、外貨を無制限に購入し、あらゆる手段を講じると強い姿勢を示した。

 スイス中銀は声明で「現在のスイスフランの過大評価は、スイス経済に深刻な脅威とデフレリスクをもたらしている。中銀は最大限の決意をもってこの目標水準を執行し、無制限に外貨を購入する用意がある」と表明した。

 9月15日に四半期金融政策見直しを控えるスイス中銀は、フランが1ユーロ=1.20フランでもなお高く、時間をかけて下落すべきとの見解を示し「経済の見通しやデフレリスクにより必要となれば、さらなる措置を講じることになる」と表明した。

 第2・四半期のスイスの国内総生産(GDP)は前年比プラス2.3%と、健全な成長を達成した。しかし中銀はフラン高が輸出に打撃を与え、今後数カ月に成長が急減速するとの予測を示している。

 発表を受けてスイスフランは対ユーロ、対ドルで下落した。

 欧州中央銀行(ECB)は声明を発表し「理事会はすでにスイス中銀から、対ユーロで1.20フランを超えるフラン高を容認しないとの決定を知らされている」としたうえで「理事会は、スイス中銀が自らの責任で下したこの決定に留意している」と表明した。

 市場では、スイス中銀の目標水準設定を受け、同様に円高進行に悩む日本も追随するのではないか、との憶測が台頭している。

 ニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト、櫨浩一氏は、今週末に仏マルセイユで開催される日米欧7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で日本は円高を議題に提起し、単独介入について理解を求めるようとする、との見方を示した。

 コメルツ銀行のエコノミスト、ウルリケ・ランドルフ氏は「スイス中銀は資金を豊富に保有しているため、スイスフラン相場を目標水準に安定させることはできるとみている」と述べた。

 ただ「ユーロ圏債務危機収束の兆しが見えないなか、市場における先行き不透明感は依然として非常に高い」と指摘。こうした状況の下では、スイスフランが中銀の目標を超えて下落する可能性は低いとの見方を示した。

 またラボバンクのシニア外為ストラテジスト、ジェーン・フォーレイ氏は「スイス中銀が今後数カ月間、スイスフラン相場の上昇を阻むことができるかは、ユーロ圏債務危機の展開次第となる」との見方を示した。

 スイス中銀は、石油危機を受けスイスフランが急騰していた1978年に、1ドイツマルク=0.80フランとの目標を設定。スイスフランの上昇を食い止めることに成功はしたものの、インフレ高進という副作用を招いた。

 これについてバンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)の外為調査部門を率いるシモン・デリック氏は「短期的には効果があったものの、物価の急激な上昇を招き、結果的に非常に高いコストが伴った」と指摘。

 今回の措置に関しても「短期的には効果があるとみられる」としながらも、長期的には、債務危機に見舞われているユーロ圏からの資金引き揚げを模索する投資家に対し、簡単な逃げ道を提供することになると述べた。

 対外的には、ハンガリーの住宅ローンの約3分の2、ポーランドの住宅ローンの約半分がスイスフラン建てとなっていることから、今回の措置は東欧諸国の経済を支援するとの見方も出ている。

 スイスの外貨保有高は中銀による外貨スワップ取引などの結果、急増。8月時点で2534億フランに達している。」
[以上 引用]