中国や韓国での株安/火元は欧州銀の資本劣化

ロイターのコラム記事に、現在のアジア市場と商品市場の動向を上手くまとめた解説が掲載されていましたので、参考までに引用しておきます。脅かすわけではありませんが、「すでに米国は不況突入」("I think we are in it already.")と発言しているソロス氏と同様の、底流で緩やかに進行する危機の予感が当室管理人もしています。

当該コラムの要点としては、次の通りです。

①今週(10月4日の週)に入って中国や韓国での株安が目立っている。
②大元の原因はギリシャ債務危機による欧州系銀行の自己資本毀損である。
③これは、PIIGS(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリア)諸国の国債価格下落で銀行保有国債の評価損が急拡大したことによるものだ。
④自己資本毀損の結果、欧州金融市場における資金調達に支障が生じ、欧州系銀行は手元の現金を厚めにする必要が生じている。
⑤原油や貴金属などの下落にも、世界経済減速を見越した動きとは別に、米欧金融機関やヘッジファンドの換金売りが含まれていると思われる。
⑥今回の欧米マネーの中韓脱出は、アジア経済のパフォーマンスが悪化したからではなく、米欧金融機関のフトコロ事情が悪化したことに原因があるから、欧州での危機回避に向けた解決策の構築が進むまで、中国や韓国、その他の新興市場では、資金流出現象がじわじわ進む可能性が高い。
⑦今回の危機では、大きなショックが走る前に、「静かな危機」とも呼ぶべき金融現象がすでに発生し、多くの人が認識する前に深刻化する危険性がある。

当面は、手探りで慎重に情勢を伺うしかないでしょう。


[以下、引用]
◆コラム:欧米マネーの中韓脱出、「静かな危機」の警鐘か (2011年 10月 4日付け ロイターのコラムより引用)
田巻 一彦  
「[東京 4日 ロイター] 今週に入って中国や韓国での株安が目立っている。韓国ではウォン安も進み、資金流出の兆しも出ている。背景には欧州系銀行だけでなく、米系金融機関やヘッジファンドなどの換金売りがあるようだ。

大元の原因はギリシャ債務危機による欧州系銀行の自己資本毀損であり、欧州で体系的な資本注入のシステムが構築されるまで、中韓両国やその他の新興市場で通貨や株の売りが継続すると予想する。今起きている資本流出は新興国の実体経済とは切り離された動きで、その点が1997年のアジア通貨危機と決定的に異なっている。

 <中韓の株下落、米欧系の換金売りの見方>

今週の中国市場は休場で、中国株は香港市場で取引されている。ハンセン指数は3日に4.38%下げ、2年半ぶりの安値を付けた。ハンセン中国企業株指数も5.71%下落。4日も2つの指数は反発せず、1%超の下げとなっている。

3日が休場だったソウル株式市場は4日に総合株式指数が一時、6%超の下げとなり、韓国ウォンもいったん2010年7月下旬以来の安値を記録。当局がドル売り/ウォン買い介入を実施した。中国の外為市場は10日から再開するが、休日入り直前の9月30日には、ドル・人民元の1年物ノンデリバラブル(NDF)が取引終盤に6.4230元と、前日終値6.4030元に比べてドル高/元安となっていた。

市場では、リスクを積極的に取りに行く「リスクオン取引」で購入された中国株や韓国株が、リスクを取らない「リスクオフ」取引によって売却されるというマネーの逆回転が起きているとの見方が出ている。複数の市場筋によると、欧州系銀行だけでなく米系銀行やヘッジファンドなども中国、韓国の株や不動産などを換金売りしている動きが目立っているという。

 <火元は欧州銀の資本劣化>

欧州系銀行が換金売りの色彩を強めている要因ははっきりしている。PIIGS(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリア)諸国の国債価格下落で保有国債の評価損が急拡大。自己資本の毀損が目立ってきた結果、欧州金融市場における資金調達に支障が生じ、手元の現金を厚めにする必要が生じているためだ。
さらに欧州系銀行のクレジット・デリバティブ・スワップ(CDS)を保有している米系銀行やヘッジファンドの中には、欧州での金融システムの緊張をにらみ、欧州系銀行との取引を手控えるばかりでなく、リスク性資産を売却して手元に現金を集める動きを見せているところも出てきている。

原油や貴金属などの下落には、世界経済減速を見越した動きとは別に、米欧金融機関やヘッジファンドの換金売りが含まれていると思われる。現金化を優先させたい主体にとって、利益の乗っている資産は売却の対象として格好のターゲットになる。韓国の総合株式指数は今年4月27日に上場来高値を更新したが、8月の米債務問題をきっかけに下げが大きくなり、いったん9月には買い戻されたものの、4日は高値から約25%下落した水準で取引されている。

 <経済活況でも株売りの構図>

資金の流出は実体経済にも大きな影響を与える。1997年のアジア通貨危機で経験した現象だ。市場の一部では、アジア通貨危機の時と異なり、韓国や東南アジア諸国の経済力が向上し、資金流出は本格化するリスクが小さいとの見方があるようだ。しかし、アジア通貨危機の際とは、資金を流出させる米欧マネーの“動機”が異なることに注目すべきだ。

今回は、アジア経済のパフォーマンスが悪化したからではなく、米欧金融機関のフトコロ事情が悪化したことに原因がある。したがって、ギリシャ債務危機が解決せず、欧州系銀行の資産劣化が進行するなら、アジア経済の好調さを目の当たりにしながら、その株や通貨を売るという行為が展開されると予想する。欧州での危機回避に向けた解決策の構築が進むまで、中国や韓国、その他の新興市場では、資金流出現象がじわじわ進む可能性が高いと思う。

多くの金融・資本市場関係者は、ギリシャの支払い不能(デフォルト)が無秩序に行われた場合、金融危機のトリガーが引かれると考えているようだ。あたかもリーマンブラザーズの破綻が決まり、その後に世界中の市場が混乱し始めた2008年9月と似た現象が起こると予想しているかのようだ。だが、結果としてリーマン危機と同じような混乱が起きるリスクがあるとしても、そのスタートは違った形で切られている可能性がある。

中国や韓国の市場で起きている現象をみていると、ある仮説が成り立つのではないかと考える。ギリシャを起点にしたショックはすでに欧州域外に波及し、新興国市場に大きな変動を起こす予兆を見せているのではないか、という懸念だ。

今回の危機では、大きなショックが走る前に影響が出始め、それが無視できないところまで広がるリスクが高いと考える。「静かな危機」とも呼ぶべき金融現象がすでに発生し、大きな波紋を形成する可能性があるという点に着目したい。
「静かな危機」は、多くの人が認識する前に深刻化する危険性がある。この仮説ができれば外れてほしいと切実に思っている。 

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。」 
[以上 引用]
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(香港ハンセン2年チャート:SBI証券より引用)