消費増税、駆け込み需要10兆円試算も 反動に警戒/日経新聞WEB刊より

消費税増税の効果については、様々な予測がなされていますが、一番の心配は景気の一層の腰折れだと思います。すでに折れている経済の腰がさらに折れてしまうとどうしようもありません。駆け込み需要とその反動落ちを心配する声もあります(※1)。

ただ、やり方次第では、総体としてそれほどのマイナス効果にはならない場合もあります。最悪のマイナス効果となる場合というのは、増税による増収部分で国債を償還してしまうという場合です。これには、デフレ・ギャップを埋めるための国債発行額を減額するという場合も含まれます。

しかしながら、増税による増収部分は、社会保障費用の増加部分に充当せざるを得ない印象ですので、いわば使い切りでマクロ的には所得移転が発生するだけであり、国民経済としての有効需要の増減にさほど影響はなさそうです。

消費税増税は、我々消費者にしてみれば、総額表示で105円の商品が110円に4.76%値上がりするように見えます。ただ単に値上がりするのであれば、当然ながらそれに応じて消費量は減退します。しかしながら、供給量が過多である現状では、消費増税部分が価格転嫁できない可能性も多分に存在します。野口悠紀雄教授は、インボイス制度の導入を提言していますが、デフレ下では、いずれにしてもやはり価格転嫁は困難で、結局は或る程度業者間で吸収せざるを得ない仕儀となるのではないでしょうか。

消費税増額部分が価格転嫁できないで売り手企業側負担となる場合には、①企業の経常利益が減少するという面と、②コストダウンによる対外的負担転嫁という面が考えられ、②の場合には結局のところ従業員の賃金水準低下効果を持ちますので、デフレ下にあっての消費税増税の持つ経済効果としては、①法人の利益を減少させる意味で
法人税増税、および②従業員の給与を減少させる意味で所得税増税に類似した複合効果を持つと考えられます。

また、駆け込み需要については、おそらくは高額商品についてより強く発生しそうに思います。たとえば、不動産や自動車などです。不動産については、駆け込み需要で市場が盛り上がりそうな予測もありますが、一方で、中小企業金融円滑化法の終了が2013年3月末に迫っているために、銀行借入れの担保物件処分等で不動産供給が増加する可能性があります。駆け込み需要よりも不動産供給量の方が多くなり、市場は値下がり方向に動くのかも知れません。

先頃ゴールドマン・サックスが「日本で不動産投信運用へ、最大3000億円」という記事を紹介しました。同社のスクワイヤーズ氏が「日本の不動産市況の底値は近い」と予想し、「向こう半年か1年以内に底値を打つと考えている」と述べていますので符合しなくもありません。→ http://toshukou.at.webry.info/201207/article_3.html

当室はリート狙いの一面がありますが、欧州情勢も睨みつつ、当面は微速前進というところでしょう。


[以下、引用]
◆(※1)消費増税、駆け込み需要10兆円試算も 反動に警戒/日経新聞WEB刊より
景気への配慮カギに 2012/8/11 1:00

消費税率の引き上げを実行できるかは経済状況がカギを握る。2度の引き上げによる住宅、自動車などの駆け込み需要は10兆円を超え、その約7割が2013年度に集中するとの試算もある。14年度は先食いした需要の反動減と消費者マインドの低下が重なり、マイナス成長に陥る懸念が出ている。デフレ下で初の消費増税は価格転嫁も容易ではなく、景気の耐久力が試されそうだ。

消費税率は14年4月(8%)と15年10月(10%)の2段階で上がるが、この間隔は1年半と短い。このため最初の増税前に、住宅や自動車など高額な耐久財を駆け込みで購入する動きが広がる見込みだ。企業も設備投資を前倒しするとみられ、駆け込み需要は13年度が最も大きくなる。

SMBC日興証券の試算によると、2度の増税前の駆け込み需要は合計10.6兆円に上るが、このうち7.7兆円が13年度に集中する。これが同年度の国内総生産(GDP)を押し上げるが、増税後の14年度は駆け込み分より大きい9.6兆円の反動減が生じるという。

増税は家計の実質可処分所得を減らすので、消費が恒常的に減り、景気に打撃を与える可能性がある。消費税率を3%から5%に上げた1997年は、増税後の5月から景気後退期に入った。日本経済研究センターは増税になれば「14年度は0.1%のマイナス成長に陥る」と予測する。

 消費増税法は経済環境の急変時に増税を見合わせる「景気条項」を盛り込んだ。8%への最初の増税は駆け込み需要が景気を押し上げる13年秋ごろに判断することになるが、10%への増税はマイナス成長下での判断を迫られ、「再引き上げが困難になる事態も考えられる」(ニッセイ基礎研究所)。

 今回は過去と異なり、デフレ下での増税になる懸念もある。政府は価格転嫁のために、不正行為の情報を集める人員を増やしたり、中小企業が横並びで転嫁する「カルテル」を例外的に認めたりする方向だ。努力目標として掲げた「名目3%・実質2%」の経済成長率に近づくため、政府・日銀一体となったきめ細かい経済運営が必要になる。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]