米国投資家が円安・日本株高に寄せる期待と不安=佐々木融氏

ロイターコラムに、佐々木融氏による米国投資家の生の声に関係した記載がありましたので、紹介しておきたいと思います。要点としては次の通りです。

①彼らは、新しい日銀総裁の下で4月3―4日に予定されている最初の金融政策決定会合に対する期待が大きく、そこで、かなりドラスティックな緩和策が発表されるのではないかと期待している。
②緩和策の内容としては、2014年初めから予定されている期限を定めない資産買い入れの開始時期を13年5月からに前倒しすること。そして、買い入れる国債の年限を現状の3年から5年に延長することなどが予想される。
③これに対して、米国の投資家からは「それでは不十分だろう」との声が多く、その程度はすでに市場ではある程度織り込み済みで、つまり、何かしら市場が「予想外」と感じるような目新しい政策を打ち出さないと、4月は高まり過ぎた期待が剥落する中で、一定程度の円買い戻しが入る可能性が高い。
④ただし、最も重要なのは世界の金融資本市場がリスクオンになっていること。そして、年後半に向けてもこの状態が続くならば、日銀や政府から出てくる政策がある程度の失望を招いたとしても、円安基調は当面変わらないかも知れない。
⑤半面、リアルマネー投資家だけでなく、ヘッジファンドも、円相場の見通しに比べると実際のポジションはさほど円売り方向に大きく傾いていないのかも知れない。

以上を総括しますと、円安基調は継続するものの、4月の日銀政策決定会合の内容次第では一波乱あり、ということの様です。マーケットは、来週の日銀総裁人事の次をすでに織り込んでいますので、長期国債大幅買入れなどのFRB並みの大胆な政策発動を期待したいところです。

ただし、我々としては、4月の日銀政策決定会合の成り行きを注視しつつ、欲張った買いポジションは回避しておく必要がありましょう。


[以下、引用]
◆コラム:米国投資家が円安・日本株高に寄せる期待と不安=佐々木融氏/ロイターより
2013年 02月 22日 20:54 JST
佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 債券為替調査部長(2013年2月22日)

つい先日、米東海岸に出張し、年金基金やミューチュアルファンドなどの資金を運用するリアルマネー投資家や、ヘッジファンドとの会合を行ったが、日本や円相場に対する関心は非常に高く、予定はびっしりと埋まった。

全体を通じてもっとも強く感じたのは、新しい日銀総裁の下で4月3―4日に予定されている最初の金融政策決定会合に対する期待である。そこで、かなりドラスティックな緩和策が発表されるのではないかと期待している向きが多かった。

筆者からは、4月4日の次の会合日である4月26日になるかもしれないと断ったうえで、次のような追加策が考えられると説明した。まず、2014年初めから予定されている期限を定めない資産買い入れの開始時期を13年5月からに前倒しすること。そして、買い入れる国債の年限を現状の3年から5年に延長することなどだ。

これに対して、米国の投資家からは「それでは不十分だろう」との声が多かった。中には、「そんな政策だけで済むはずがない。それだけだったらドル円も日経平均株価も暴落するだろう」と興奮気味に反応するヘッジファンドもあった。「なぜ日銀は残存20―30年の国債を買わないのか」と迫られる場面もあった。

米国の投資家からの質問は、大きく3つに集約できる。多い順にお伝えすると、第一は「インフレ率を2%に押し上げるために日銀は何をするのか」という質問だった。

彼らの口ぶりから筆者が受けた印象としては、日銀の金融政策だけで、すぐにでもインフレ率が2%になるような、かなり大胆な政策が新総裁の下で発表されるとの期待が多かったように思う。前述の政策は、すでに市場ではある程度織り込み済みだろう。つまり、何かしら市場が「予想外」と感じるような目新しい政策を打ち出さないと、4月は高まり過ぎた期待が剥落する中で、一定程度の円買い戻しが入る可能性は高いのではと改めて感じた。

実際、ドル円のロングポジションをすでに利食った、あるいは徐々に利食っている最中と話すリアルマネー投資家は多かった。彼らも、長期的には円安がもっと進むと見ているようだったが、過去数ヶ月間のドル円の上昇があまりに急激だったので、警戒し始めている様子だった。中には、「遅過ぎるよりは早過ぎる方がいい」として、円ショートを全て利食ったとする投資家もいた。

<ヘッジファンドの思惑>

次にリアルマネー投資家を中心によく聞かれた質問は、「どの程度まで円安が進むと日本経済に悪影響が及ぶか」というものだった。ドル円は上昇しても、日経平均株価が下落を始める日が来るのではないかとの警戒感の裏返しだろう。

他方、ヘッジファンドの多くは、短期的に円の下落余地はまだあるが、ドル円よりも日経平均株価の上昇余地が大きいと予想していた。ある大手マクロヘッジファンドは、ドル円がここからそれほど大きく上昇しなかったとしても、すでにかなり大幅に上昇しているので、今後これが徐々に企業業績の回復につながり、株価を押し上げるのではないかとの期待を示していた。日本の株価に強気な投資家は、日経平均株価と円相場のセンシティビティ(感度)の違いを利用した戦略に興味を持っているように見受けられた。

こうした中で、筆者は次のような見方を披露した。まずアベノミクスや日本の貿易収支の赤字化は円安に大きく影響しているが、最も重要なのは世界の金融資本市場がリスクオンになっていること。そして、年後半に向けてもこの状態が続くならば、日銀や政府から出てくる政策がある程度の失望を招いたとしても、円安基調は当面変わらないかもしれないということだ。

これに対して大方は同意し、一部からは年後半に米国長期金利が上昇し始めることにより、「ドル高」でドル円が上昇するとの予測も聞かれた。しかし、ある大手マクロファンドは帰り際に「ここからさらに円安の動きを追っていくことについては少し慎重だ」と言い残していった。リアルマネー投資家だけでなく、ヘッジファンドも、円相場の見通しに比べると実際のポジションはさほど円売り方向に大きく傾いていないのかもしれない。

ちなみに、3番目に多かった質問は「どのような状況になったら個人を含む日本の投資家はもっと対外証券投資を増加させるようになるか」というものだった。円安への動きを見据えながらも、ヘッジファンドがそれほどポジションを傾けていないとすれば、円安がこの先さらに一段と進むには、これまでのような海外勢主導ではなく、国内勢の参加も必要と考えているからなのかもしれない。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の債券為替調査部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に、「弱い日本の強い円」など。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]