中国でシャドーバンキング急拡大、リスクの全容は闇の中

中国のシャドーバンキングと言われますと、いわゆる闇金融的なイメージで、いかにも中国で横行していそうな地下経済的活動という風に軽く見飛ばしてしまい勝ちですが、実際の中国のそれは闇金融ではなくて、主として地方政府の第三セクター向け銀行融資を証券化(オフバランス化)した高利回り運用商品(理財商品)の総体を指しているようです。

換言すれば、中国の理財商品というのは、サブプライムローン担保証券の焼き直しという理解で良いのではないかと思います。融資先が返済能力の低い住宅ローン債務者ではなくて、地方政府の「融資平台」(※2)といういささか曖昧で返済能力不明な債務者ですし、規模的にも拡大しておりますから、いかにもリスキーな感じがします。

S&Pによれば、中国のシャドーバンキングの融資残高は2012年末時点で3兆7000億ドル、と試算しており、これは、オンバランスのローンの34%、国内総生産(GDP)の44%に相当する規模、ということです(※1)。

ロイター記事にある次の記載は、無責任さが横行してバブル化したサブプライムローン証券組成時期の米国を彷彿とさせるものです。審査も何も、格付けさえもありません。

「ある信託会社の幹部はロイターに対して「リスクも責任もないカネだ。誰もが稼ぎたいと思うだろう。最も熱心なのは信託会社だ。書類を作って会社の印を押し、カネを受け取る。それで終わりだ」と述べた。」

当局がシャドーバンキングを多少規制しても、いずれまた抜け道が出来てしまうものと思います。我々としては、注意深くその動向を見ておく必要がありますが、仮に「融資平台向け融資崩壊」が発生したとしても、理財商品の出回り先が中国国内限定である限りは、米国発のような世界的激震にはならないものと思います。


[以下、引用]
◆(※1)焦点:中国でシャドーバンキング急拡大、リスクの全容は闇の中/ロイターより抜粋
2013年 04月 8日 15:59 JST
[上海 8日 ロイター] 中国ではいわゆる「シャドーバンキング(影の銀行)」がこれまでにないほどのペースで拡大しており、銀行のバランスシートを見ても、金融システムに忍び寄る実際のクレジットリスクの一部しか分からないのでははないか、との疑念が広がっている。

実際、2012年の中国の経済成長は13年ぶりの低水準だったにもかかわらず、直近の銀行決算では全体の不良債権比率が低下。こうした数値がどの程度、信頼できるのか、あらためて議論の的になっている。

しかし銀行がどのくらいのリスクを負っているかということは、もはや大きな問題ではない。むしろ注目すべきなのは、リスクの高いローンがどの程度、信託会社や証券会社、保険会社などに移転しているかだ。

こうしたシャドーバンキングセクターの信用の質については、データが十分でないため、金融システム全体のリスクははっきりしていない。

専門家は、信託会社や証券会社が直接、多くの不良債権を買っているわけではないと見ている。そうではなく、銀行は信託会社などを介して、返済困難となったローンの簿外借り換えを手配している、という。

こうした信託会社などの存在がなければ、不良債権比率はずっと高くなると見られているが、具体的にどの程度なのかは誰にもわからない。

中国信託業協会によると、信託財産は2012年に55%増加し、7兆5000億元(約1兆2100億ドル)となった。一方、銀行から証券会社に委託された資産は1兆6100億元と、5倍以上に増加した。

フィッチ・レーティングスの中国の銀行担当アナリスト、シャーリーン・チュー氏は「銀行はこうしたチャンネルを通じてローンを切り離す能力を持っている。不良債権の数値にも影響するはずだ」と指摘する。

信託会社はいわゆる「理財商品」を販売して資金を調達し、銀行がバランスシートからの切り離しを望むローンを取得する。理財商品は銀行の支店を通じて、銀行預金に代わる高利回り商品として販売される。

チュー氏は「こうした(銀行)ローンは、借り手が返済するのではない。実質的には(理財)商品の投資家が返済することになる。そのため、本当の返済率がどの程度なのか、まったくわからない」と述べた。

アナリストは2010年から11年にかけ、地方政府や国有企業への巨額融資を懸念し始めていた。こうした融資は08─10年の大規模な景気刺激策に伴い実行されたもので、期限は12年だった。しかしデフォルト(債務不履行)が頻発する事態にはならなかった。それは、銀行が信託会社や証券会社と協力して、借り換え資金を供給したからだ。

業界関係者は、信託資産の少なくとも半分、証券会社に委託された資金の80%が、シャドーバンキングに関連している、と推定している。

シャドーバンキングでは、信託会社と証券会社は、銀行が組成したものの自己資本比率規制などとの絡みでバランスシートに置いておくことのできない融資について、受け皿としての役割を果たす。こうしたローンが理財商品の裏付けとなる。借り手がデフォルトした場合には通常、信託会社ではなく、理財商品の投資家がリスクを負うという仕組みだ。

確かに、銀行が簿外に移すローンのすべてが高リスクというわけではない。実際、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、最近のリポートの中で「中国のシャドーバンキングの融資は、半分以上が、銀行融資よりもリスクレベルが良好である可能性がある」と指摘している。

S&Pは同時に、銀行は、地方政府や不動産開発業者に行った高リスク融資を処理することに熱心、とも警告した。銀行規制当局が、これらセクターへのエクスポージャーを制限するよう、銀行に命じたためだ。

中国の規制当局によると、銀行全体の不良債権比率は2012年末時点で0.95%と、前年比0.05%ポイント低下した。ただこの数字はバランスシート上の融資が対象で、簿外のものはカバーしていない。

S&Pは、中国のシャドーバンキングの融資残高は2012年末時点で3兆7000億ドル、と試算している。これは、オンバランスのローンの34%、国内総生産(GDP)の44%に相当する規模、という。

<当局はイノベーションと認識>

中国の銀行当局はオンバランスの融資の量を規制するため、どの程度の貸し出しを実施すべきかについて、銀行に対して「窓口指導」を行っている。一方、シャドーバンキングは今のところ、規制が緩いままだ。

それは当局者が、シャドーバンキングについて、金利自由化に伴う実験、リスクに基づく資本配分や金融革新のふ化器、と見ているからだ。

関係者は「いろいろ意見はあるが、シャドーバンキングは市場に基づく資金調達システムだ。イノベーション促進の観点から、当局者は、規制しすぎてその芽を摘み取りたくないと考えているようだ」と述べた。

ただ現実には、シャドーバンキングは規制逃れに過ぎない。銀行は、より規制の緩い信託銀行や証券会社にローンを移管。信託銀行や証券会社は、受け皿としての役割を果たし、銀行から管理手数料を受け取る。

ある信託会社の幹部はロイターに対して「リスクも責任もないカネだ。誰もが稼ぎたいと思うだろう。最も熱心なのは信託会社だ。書類を作って会社の印を押し、カネを受け取る。それで終わりだ」と述べた。

<当局の無干渉主義に変化も>

当局者がシャドーバンキングの台頭を許してきた背景には、イノベーション促進のほかに、経済成長を押し上げる必要性もある、とされる。

クレディ・スイスの中国エコノミスト、ドン・タオ氏は最近のリサーチノートで「シャドーバンキングは政府の成長志向に深く根付いている。シャドーバンキングが拡大したのは、銀行が金融仲介者としての役割を果たせないなか、中国が成長を必要としているからだ」と述べた。

当局の無干渉主義は、とうとう変わりつつあるのかもしれない。中国証券監督管理委員会(CSRC)は、「非標準的なクレジット資産」が理財商品の裏付け資産に占める比率を35%に規制する通達を出した。

この規制が厳格に実行されれば、簿外融資向けの資金供給が抑制される可能性がある。そうなれば、理財商品は融資ではなく、社債や短期金利商品など、流動性の高い資産の比率を引き上げることになるだろう。

(Gabriel Wildau記者、Shengnan Zhang記者;翻訳 吉川彩;編集 佐々木美和)
◆(※2)融資平台(日経新聞2013.04.19より)
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[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]