黒田日銀総裁の「追加緩和策は不要」発言の影響

真壁さんの発言を取り上げるのは当ブログでは初めてかと思います。大体において当室と所見の相違がある同氏の発言ですが、今回のコメントは全くその通りだと思いましたので、転載しておきたいと思います(※1)。

要点としては、次の通りです。
①黒田日銀総裁は、1/22、現時点での追加緩和策は必要ないと明言し、消費税率が引き上げられる4月までの追加緩和策の実施の可能性が低下した。
②米国のルー財務長官が、円安傾向の進展に懸念を表明した(1/16)。
③これらは円安ドル高に歯止めをかける。

黒田総裁の発言は、ルー財務長官発言の後であり、ルー長官に呼応した発言とも受け取れます。ドル円相場としては、100~105円程度が、取りあえずは日米両国にとって無難な水準だという判断なのでしょう。当面、円安ドル高トレンドは105円どまりということで、頭打ちとなりそうな印象です。

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(ドル円相場6ヶ月チャート:SBI証券より引用)


[以下、引用]
◆(※1)黒田日銀総裁の「追加緩和策は不要」発言の影響/現代ビジネスより
2014年01月23日(木) 真壁 昭夫

1月22日、日銀は金融政策決定会合で、予想通り金融政策の現状維持を決定した。その後の記者会見で黒田総裁は、景気の先行きに依然として強気な見方を示すとともに、現時点での追加緩和策は必要ないと明言した。

今回の総裁発言によって、消費税率が引き上げられる4月までの追加緩和策の実施の可能性が低下したと見るべきだろう。金融市場の一部に追加策の実施に期待感があったこともあり、株式や為替の市場ではやや肩透かしの感がある。

追加緩和期待がやや剥落することによって、短期的には、株式市場は上値を抑えられ、為替市場ではドルの上値が重くなる可能性が高い。一方、中期的には、株式やドル相場にはまだ上値余地が残っているとの見方が有力だ。

日銀の緩和策温存と米国の思惑

今回、黒田総裁が追加緩和策は不要と言い切った背景には、追加策というカードを温存しておきたいという意図がありそうだ。4月に消費税率が引き上げられて、景気が大きく落ち込むようなケースで、そのカードを切らざるを得ないとの読みも考えられる。

あるいは、中国や欧州などの海外経済のリスク要因が顕在化して、金融市場全体がリスクオフに傾き、円高が進むときにも、日銀は追加緩和策を求められることは明らかだ。その時、日銀は追加緩和策を切り札として使うことができる。

もう一つ気になるのは、米国のルー財務長官が、円安傾向の進展に懸念を表明したことがある。米国が、円安・ドル高を真剣に懸念する段階ではないと見られるものの、財務長官とすれば、ドル高のスピード調整をしておきたいと考えていることだろう。

大きな変化はない中期的な円安・ドル高傾向

日銀の黒田総裁や米国のルー財務長官の発言を見ると、短期的には、ドル買い・円売りを積極的に進めにくい状況になっている。短期売買を得意とするディーラー連中は、取り敢えず大きくポジションを固め受けにくいだろう。

ヘッジファンドなど投機筋は、ドルの買い持ち・円の売り持ちのポジションをかなり保有していることもあり、短期的には若干利益を確定し、一部のポジションを手仕舞ってくると見られる。そうなると、当面、ドルの上値が重くなると予想する。

一方、中期的に日米の経済状況や金融政策を比較すると、基本的にドルが強含み、円が弱含みの展開になると見られる。市場参加者の多くもそうした見方をしており、少し長い目で見ると、まだドルの上値余地は残っていると見るべきだろう。

◆(※2)米財務長官の円安けん制発言、日本政府は真意模索/ロイターより
2014年 01月 17日 21:57 JST
[東京 17日 ロイター] -米国のルー財務長官による突然の円安けん制発言を受けて、日本政府関係者は真意を測りかねている。安倍晋三政権発足以来の円安進行について米国は日本経済を強化するものとして支持してきたとみられるためだ。

ただ米国内には過度の円安を警戒する産業界の動きは根強く、同様の発言が繰り返されれば、安倍政権が理想とする緩やかな円安進行と株価上昇の実現に黄信号が灯る可能性がある。

ルー米財務長官は16日、日本について「為替に過度に依存すれば長期的な成長はない」とし、日本の為替政策を「注視し続ける」と述べた。金融市場で日銀の追加緩和観測が広まっているのを踏まえ、急激な円安・ドル高の進行に懸念を示した格好だ。

これに対して、日本の政府関係者は発言の真意について「よくわからない」(高官)とし、米側の本音を探りかねているもよう。

岩田一政・日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)は17日、都内の景気討論会で、ルー財務長官の発言を注視していると指摘。「政治的な発言がなければ、為替レートは緩やかに(ドル/円)110円まで進む」としつつ、為替に関する条項を環太平洋連携協定(TPP)に盛り込むようオバマ政権に求める書簡に、上下院の半数以上の議員が署名した点を挙げ、今後も同様の発言が繰り返されれば、円安があまり進まなくなる可能性もあるとの見解を示した。

米財務省は「日本の金融緩和は国内政策で、為替相場を政策の目標にしない」との日本の主張を理解している立場だが、議会には日本を為替操作国と批判する米自動車業界と近い声があるのも事実だ。

一方、政府内には米国で日本や欧州に金融緩和により世界経済のけん引役を果たすことを期待する声があるとの見方もある。「かつての日独機関車論と同様」(別の政府高官)で、米国は金融緩和の縮小過程に入る中で、日欧に金融緩和の継続を求めているとの解釈だ。実際、日銀は現時点で追加緩和を検討していないが、4月の消費増税などで景気が大きく下振れ、2%の物価目標達成が難しいと判断すれば、追加緩和も辞さない構えだ。

日銀の金融緩和は為替を目的とはしていないため、米高官発言は政策運営の直接の障害とはならない。ただ市場で円安進行が止まるようであれば、政権が期待する円安・株高は実現が難しくなる可能性もありそうだ。

(竹本能文 編集:内田慎一)
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]