消費増税見送り解散&総選挙には大義がある

衆議院の解散・総選挙が確実な情勢になったと、新聞各紙が報道し、投票日は12月14日で確定というような内容ともなって来ています。

長期政権の確立により、日本経済の回復、および米国依存からの部分的脱却に向けた様々な法改正を目論む所存であろう安倍政権としては、解散環境としては確かに最良な情勢となっています。経済環境はいま一つだとしても、内閣支持率は48%と比較的高い水準を維持していますし、先日の日銀のQE2発動・援護射撃で株価も堅調です。

今回の解散の直接的理由は、確かに長谷川幸洋さんが言うとおり、消費税先送りについて国民の信を問うという点でしょうが(※1)、それ以外にも、長期政権確立という大目標が背後に存在することはほぼ間違いありません。長期政権の確立により、日本の戦後政策の整理整頓をするのが安倍首相の目標なのであろうと思います。

安倍政権下で国連安保理常任理事国入りを目指しているような動きも垣間見られますので、最終目標はそのあたりだとして、そのための法的政策的準備は結構腕力が必要であると理解するのが普通です。当室管理人的には、日本は米中と対等であって欲しくはありますが、安保理常任理事国などになって欲しいとは思いません。それは国民の望む平穏な毎日の暮らしとは、少しベクトルが違うように感じます。

いずれにしましても、消費税再増税が延期されることは、日本経済および株価にとっては朗報です。少なくとも年内は強気で行けそうな情勢となりました。

ただし、引き続き、中国経済の崩落とそのマイナス影響には注意が必要であるという見方には変更ありません。


[以下、引用]
◆(※1)なぜ記者はこうも間違うのか!? 消費増税見送り解散&総選挙には大義がある
「消費増税先送り」解散で官僚とバトルする
2014年11月14日(金) 長谷川 幸洋 「ニュースの深層」 現代ビジネス (抜粋・整理して引用)

消費増税先送りで解散総選挙への流れが確定的になった。

なぜいま解散総選挙なのか。
それは増税を先送りするからだ。解散が先にあって、その次に増税先送りがあるのではない。この順番が重要である。ところが、あたかも解散が先にあって、ついでに先送りがあるかのように報じるマスコミもある。そうすると、いったいなぜ解散総選挙なのか、さっぱり分からなくなる。

増税はすでに法律で決まっている。その法律は野田佳彦政権で与党だった民主党と野党の自民党、公明党の3党合意で成立した。だから、安倍首相がいくら「再増税はしません」と言ってみたところで、実はそれだけで増税は止まらない。増税を本当に止めようと思ったら、もう一度、増税凍結延期法案を可決成立させなければならないのだ。

では、なぜ安倍政権は増税を止めようとしているのか。それは景気が悪いからだ。景気が悪いのに増税すれば、景気は一層、悪くなる。それで法人税をはじめ税収が減る。すると、せっかく増税しても肝心の税収が増えず、財政再建という本来の目標は達成できない。

それどころか、政権の大目標であるデフレ脱却も遠のいてしまう。だから増税先送りなのである。

まず出発点は景気が悪い。だからこそ日銀が追加の金融緩和に踏み切った。そうであれば、ますます増税はできない。景気が悪ければ、金融は緩和し財政は減税または歳出増で景気刺激という政策は、大学1年生が習う「経済政策のポリシーミックス」である。

ただ、現実の政治は正しい経済政策を目指して動くとは限らない。

それは、正しい経済政策を実行しようとすると、必ず既得権益を握った官僚機構と衝突して抵抗に遭うからだ。言い換えると、政治家と官僚のバトルになる。これが日本政治の深層構造である。

2006年から07年にかけて第1次安倍政権が目指したのは、まさに官僚とのバトルに打ち勝って正しい政策を断行する政治だった(詳細は拙著『官僚との死闘七〇〇日』講談社刊)。たとえば公務員制度改革だ。ところが、その政権はバトルに負けて、あえなく1年で崩壊した。

今回の第2次安倍政権は再チャレンジである。つまり菅義偉官房長官が折に触れて強調する「政治主導の改革政権」、これこそが安倍政権の本質なのだ。そんな政権の本質を前提に考えれば今回、景気は悪いのだから「当然、増税先送りを目指す」と理解できる。

そのうえで、ではどうやって先送りするのか、という話になる。

それは「官僚との戦いに勝つ」という話だ。けっして生易しい戦いではない。はっきり言って、正面から戦ったら勝ち目はない。財務省には権力の源泉が3つある。まず予算編成権、次に徴税権、それから情報収集と配分能力である。

予算編成権は国会議員へのアメ玉だ。財務省に「地元に予算を付けてあげます」と言われて、喜ばない議員はいない。徴税権は逆でムチだ。「先生の政治資金がちょっと」と言われたら震え上がるだろう。記者は財務官僚から「これは貴方だけだけど」と囁かれて政策ペーパーをもらったら、だれでもポチになる。これが情報力である。財務省に議員とマスコミを抑えられたら、勝ち目はない。

いくら首相でも法律で決まっている増税を「私はやめます」と言ってみたって、凍結法案を可決成立させなければ、増税は止まらない。しかも、そもそも増税を決めたのは自民党を含めた3党合意だった。

いまの自民・公明連立政権は3党合意による増税路線を訴えて前回総選挙で勝った。同じ連立政権が増税路線を修正するなら、もう一度、国民の声を聞かなければおかしい。増税を願って自民、公明に投票した国民は、そのまま先送りと聞いたら裏切られたと思うだろう。「景気条項があるじゃないか」という東京新聞や朝日新聞は、増税を求めた国民が裏切られてもいい、と思っているのだろうか。

消費増税は言うまでもなく内政の最重要課題である。いまのように景気が悪化しているときはなおさらだ。そんな重要課題の扱いをめぐって正々堂々、解散して国民の声を聞く。それは民主主義の原理そのものである。

ちなみに東京は増税反対、朝日は増税賛成だ。正反対の立場であるはずの両紙がそろって「解散に大義はない」と唱えるのは、いま解散になると安倍政権が信認されて野党が負けると思っているからだろう。つまり安倍政権そのものに反対なのだ。そうだとすれば「お里が知れる」という話である。

自民党も賛成した重要な政策路線を変更する。そのために国民に信を問う。これが正しくないわけがない。増税断行を願う国民は政権に反対すればいいのだ。逆に先送りを願う国民は政権を支持すればいい。その結果、凍結法案の帰趨がおのずと決まる。

つまり、国民が増税するかどうかを決めるのである。私はこれこそが今回の総選挙の歴史的意義だと思う。これまで増税するかどうかを決めるのは事実上、永田町と霞が関の手に委ねられていた。だが、安倍首相は解散によって最終判断を国民に委ねる。

言い換えると、これまで「政治家と官僚のバトル」だった構図を「国民と官僚のバトル」に変えた。それによって勝算を見い出す。政権の力だけでは勝てない増税派に対して、国民の意思を背に一気呵成に勝負に出る。政治の戦場と力学構造を永田町、霞が関から国民レベルにまで一挙に拡大する。それで増税凍結法案を可決成立させる。根本的にはそういう話である。

講談社
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◆首相「勝てる時機」探る (そのまま引用)
高支持率も念頭に 衆院選、政策後押し狙う

2014/11/12付日本経済新聞 朝刊

安倍晋三首相が月内を含めた早期の衆院解散を検討しているのは、内閣支持率が高く、野党の選挙準備も整っていない「今なら衆院選に勝てる」との判断があるためだ。来年の政治課題には安全保障関連法の整備など「不人気政策」が並ぶ。来年10月に予定する消費再増税の延期論も当面の政権運営へのリスクを減らしたいとの思いが底流にある。(1面参照)

「圧勝できるような態勢を整えていきたい」。自民党の二階俊博総務会長は11日の記者会見で早期解散について聞かれ、自信をのぞかせた。主要閣僚の1人は「解散は政権が強いときにする。今後4年間、信任を得たことになる」と強調した。

現在の衆院議員の任期は2016年12月まで。今年12月は任期の折り返し地点にあたり、首相の経済政策「アベノミクス」の中間決算期とも位置づけられる。首相周辺などには、景気の回復がもたつくなかで、自民党が衆院選で勝利すれば、首相が民意をバックに年明け以降の経済や外交・安保政策を強力に推進できるとの狙いが透ける。

政府・与党内では当初、安倍政権3年目の来年の通常国会で集団的自衛権の行使容認を具体化する安全保障法制を整備した後の「来夏の解散・総選挙」が有力視されていた。だが9月の改造内閣発足以降、「政治とカネ」の問題が広がるにつれ、風向きが変わった。来年の通常国会では、江渡聡徳防衛相や西川公也農相、望月義夫環境相らが引き続き野党の追及を受けるとみられている。会期中には、世論で賛否が割れる九州電力川内原発の再稼働や安保法制の国会審議などを予定している。内閣支持率が下落し、首相の求心力が低下する波乱の芽をはらむ。

安倍内閣の支持率は、小渕優子前経済産業相と松島みどり前法相が辞任した直後の10月下旬の日本経済新聞の世論調査でも48%の高水準を維持した。自民党は前回12年衆院選で大勝し、衆院全体の6割の議席を占めている。党内では「いま戦えば、現在の議席から減ったとしても『負け』はない」(党三役経験者)との観測が広がる。

連立を組む公明党も解散容認にカジを切った。山口那津男代表は11日の記者会見で、年内解散に向けた選挙準備を党内に指示したと表明し、永田町の解散風を強めた。同党は来春の統一地方選や再来年の参院選を重視しており、両選挙と離れた日程で衆院選を戦いたいとの思惑がある。

与党内には慎重論もある。11日の自民党総務会では村上誠一郎元行政改革相が「円安対策ができておらず、選挙の状況にない。首相に『慎重の上に慎重に』と伝えてほしい」と、谷垣禎一幹事長にクギを刺した。

首相が何を掲げて衆院選に臨むかは不透明だ。政府・与党内では円安・株高を背景に「アベノミクスの信任を問うべきだ」との意見があるが、消費増税を延期すれば、争点はさらに見えにくくなる。自民党内からも「大義名分のない選挙はよくない。国民の声を恐れることが大事だ」(野田毅税制調査会長)との声があがっている。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]