原油価格はどこまで下がるか、いつまで下がるか

原油価格の見通しに関するインタビュー記事が、1月17日の日経新聞に掲載されていましたので、それを基にして備忘的に原油動向見込みのコメントを記載しておきたいと思います。エネルギー分析の第一人者であるダニエル・ヤーギン氏のコメントの要点は次の通りです。

①原油価格の下落要因としては、米国のシェールブームに伴う供給増、世界経済の成長鈍化に伴う欧州や中国での需要減、リビアでの生産急回復による。
②サウジアラビアが『原油価格調整』の役割を放棄したことも下落に拍車をかけた。
③原油価格は、まだ底値をつけていない。2015年は北米のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の年平均で1バレル50ドル近辺で推移し、16年は15年に比べ10~30%上がる見通しだ。
④米原油の増産基調は続き、15年の上半期まで減少はない。15年半ばに減り始める頃には(大きな混乱がなければ)価格について強気になる人が出始める。
⑤シェール革命は初期の段階だ。革命は続く。足元は1バレル40ドル台で、多くのシェール企業にとって厳しい局面にあるが、掘削や採集の技術が日々進化してコストは下がっている。
⑥今回の局面で勝者は原油を輸入に頼っていた日本と中国だ。特に日本はエネルギーの高いコストが製造業の競争力を損なっている事実がある。安倍晋三首相はエネルギー安をいかし、経済を活性化する政策を『4本目の矢』として推進すべきではないか。

ヤーギン氏の見通しですと、今年2015年の上半期はまだ原油の増産が継続するということですので、価格的に底打ちが確認できるのは、その後ということになりそうです。

他のファクターが変化しないとするならば、原油対象のETFを2015年4月以降に一定買いするもの面白いかも知れません。前回1998年のロシア危機は、原油価格の回復に伴い、1999年~2000年にかけて急速に改善したこともまた、投資機会の一つとして採用可能でしょう。

原油(WTI原油先物) 現在値 48.48↓ (15/01/16 17:14 EST)
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(WTI原油先物10年間チャート:SBI証券より引用)

[以下、引用]
◆(※1)原油安でもシェール革命は続く ヤーギン氏に聞く

2015/1/17 3:30日本経済新聞 電子版

原油価格の急落は国際情勢や米国のシェールブームにどう影響するのか。エネルギー分析の第一人者であるダニエル・ヤーギン氏に聞いた。

ダニエル・ヤーギン氏 米シンクタンクIHS副会長。米エール大で英文学を専攻し、英ケンブリッジ大で博士号。代表作「石油の世紀」でピュリツァー賞を受賞した。67歳。

――原油価格はなぜ急落しているのですか。

「まず米国のシェールブームが供給増をもたらした。昨年8月以降には世界経済の成長の鈍化が意識され、欧州や中国で需要が鈍る懸念が出てきた。リビアで生産が急回復し始め、価格の崩落につながった」

「サウジアラビアが『原油価格調整』の役割を放棄したことも下落に拍車をかけた。サウジは減産すれば、米シェールだけでなく、イランやイラクなど他の中東諸国にもシェアを奪われる恐れがあった。サウジが減産に応じないのはシェアを確保するという経済的な強い動機のためだ」

――原油価格はどこまで下がるとみますか。

「まだ底値をつけていない。2015年は北米のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の年平均で1バレル50ドル近辺で推移し、16年は15年に比べ10~30%上がる見通しだ。米原油の増産基調は続き、15年の上半期まで減少はないと予想する。15年半ばに減り始める頃には(大きな混乱がなければ)価格について強気になる人が出始めるのではないか」

――1バレル100ドルの時代はもう来ないのですか。

「絶対ないとは言い切れない。思い出して欲しい。過激派『イスラム国』が台頭した時、一時115ドルまで上昇した。生産地での政治的な混乱は今後も価格に影響を与える要素だ」

――倒産した米シェール企業もあります。

「1バレル70ドルなら8割のシェール企業が成長できる。同60ドルだと利益が出るのは半分だ。足元は同40ドル台で、多くのシェール企業にとって厳しい局面にある」

「ただコストは下がっている。見逃せないのは掘削や採集の技術が日々進化している点だ。今後はM&A(合併・買収)でコストを改善する企業も出てくるだろう。シェール革命は初期の段階だ。革命は続く」

――国際情勢にはどのような影響を与えますか。

「ロシアは経済制裁と原油安のダブルパンチを受けている。資源分野での市場や資金の出し手を求め、中国により接近するだろう。イランのロウハニ大統領は経済改革を旗印に、米国と対話路線だ。原油安で経済が混乱すれば最高指導者が反米的なだけに、政治的に苦しい立場となる」

「今回の局面で勝者は原油を輸入に頼っていた日本と中国だ。特に日本はエネルギーの高いコストが製造業の競争力を損なっている事実がある。安倍晋三首相はエネルギー安をいかし、経済を活性化する政策を『4本目の矢』として推進すべきではないか」

――米国はどうですか。

「今回の原油安局面では米国も(ガソリン安による消費の活性化などで)勝者の部類に入るが、事情は複雑だ。例えば、石油開発が盛んなテキサス州は2008年の経済危機の時は、それほど影響を受けなかったが、今回は相応のマイナスの影響が出る可能性がある」

「注目しているのは原油輸出解禁の議論の行方だ。原油を輸出すると、国際市場に価格がさや寄せされ、ガソリン高につながると懸念されていた。しかし、そんなことはない。原油輸出は米国の世界への影響力をさらに高める。日本も(有数の原油産地の)アラスカから輸入できるようになる。足元のガソリン安で、原油輸出の解禁を巡って議論するには良いタイミングだ」

――原油の供給過剰の解消には時間がかかりそうです。

「(需給のバランスが取れていた)過去とは全く違った世界になってしまった。国家や企業は多くの開発投資を実施してきた。しかし、供給が増えた割には、需要が予想したほど増えなかった。かつての中国のような高い成長を誇る国はもはやない」

――足元の原油安の状況は想定外だったのでしょうか。

「実は、2年前に『ボルテックス』と名付けたシナリオを作ったことがある。(シェールの台頭などで)1バレル50ドルに向かうというシナリオだ。その時、人々はありえないと言った。人々は原油を考える場合、コンベンショナル(在来型)的な発想を壊さなければならない。世界は変わった」

「過去11年を振り返っただけでも、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(BRICS)の台頭、08年の突然の需要の落ち込み、11年には民主化運動『アラブの春』による中東での市民革命、そして、米シェール革命が起きた。少し振り返るだけでも多くの出来事があった。まさに、人は物事が進んでいると知ったときには、既に新たな要素が生まれて変貌してしまっている。我々が置かれている環境もまさにそうなのかもしれない」(ワシントン=稲井創一)
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]