日韓 慰安婦問題が決着 安倍首相「おわびと反省」

日韓の慰安婦問題については、文書化と調印がなされていないという不安感はありますが、取りあえずは米国を第三者的証人として日韓両国の外務大臣が解決の声明を発表しましたので、後戻りはできないものと思います(※1)(※3)。

外交問題は当室の守備範囲を超えてはいますが、国際法的には1965年に締結の日韓請求権協定によって国家間の債権債務は解決されていると判断するのが妥当であり、個人ベースにしろそれ以上の対日請求は韓国側のゴリ押しです(※2)。個人に対して補償するのであれば、韓国国内の問題と見るのが正当でしょう。

とはいえ、今回の妥協の背景には、韓国経済の行き詰まりがあることは間違いのないところであると思います。韓国はこれまでの日本経済の停滞と中国経済の発展とを見比べて、中国に接近を図りましたが、最近の中国経済の低迷と中国側の姿勢変化を目の当たりにし、方向転換を図らざるを得なかったというのが当室の見解です。取りあえずは、通貨スワップの再締結か、あるいは別な形での経済援助が裏に潜んでいると思われて仕方ありません。急転直下、妥協を急いだところを見ますと、韓国経済は「倒産寸前」ではないかという感じですので、たったの10億円で済む話ではなく、何らかの大き目の対韓支援話が近いうちに浮上して来るものと思います。


◆(※1)日韓 慰安婦問題が決着 安倍首相「おわびと反省」
外相会談「最終的かつ不可逆的に解決」 新財団に10億円
2015/12/29付日本経済新聞 朝刊

【ソウル=黒沼晋】岸田文雄外相は28日、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相とソウルで会談し、従軍慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的な解決」で合意した。日本政府は旧日本軍の関与を認め「責任を痛感」するとともに、安倍晋三首相が「心からのおわびと反省の気持ち」を表明。韓国政府が設立する元慰安婦支援の財団に、日本政府が10億円程度を一括拠出することになった。

最大の懸案だった従軍慰安婦問題が国交正常化50年の2015年中に決着したことで、日韓は関係改善へ全力を挙げる。

首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領は電話協議で合意内容を確認した。首相は「元慰安婦の方々の筆舌に尽くしがたい苦しみを思うと心が痛む。日本国の首相として心からおわびと反省の気持ちを表明する」と伝えた。大統領は「首相の言葉が元慰安婦にしっかりと伝わるようにしたい。(財団を通じ)元慰安婦の名誉と尊厳と心の傷を癒やす事業が実施されれば、この問題が再び議論されることはない」と応じた。元慰安婦への安倍首相の手紙も検討している。

首相は16年に日本で開く日中韓首脳会談にあわせた訪日も要請した。

岸田氏は会談後の共同記者発表で「軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた。日本政府は責任を痛感している」と述べ、交渉の焦点だった責任に言及した。

日本政府は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」との立場だが、国の責任の明確化を求めた韓国に配慮。歴代首相の元慰安婦への手紙にある「道義的責任」との言葉を使わず「責任」と表現し、解釈の余地を残した。

岸田氏は共同発表後、記者団に「日本政府の法的立場は従来と何ら変わりはない」と語った。首相も大統領との電話で同じように説明した。日本政府の財団への資金拠出は「賠償ではない」(岸田氏)としている。

慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」は岸田、尹両氏が共同発表で明言した。岸田氏は「国連など国際社会で本問題について互いに非難、批判することを控える」と話した。尹氏も「相互非難、批判を自制する」と足並みをそろえた。

ソウルの日本大使館前にある慰安婦を象徴する少女像の撤去に関し、尹氏は共同発表で「可能な対応方法に対し、関連団体との協議などを通じて適切に解決されるよう努力する」と述べるにとどめた。岸田氏は記者団に「適切に移転がなされる」と期待感を示した。


◆(※2)日韓請求権協定 財産・請求権「解決」と明記

2015/12/29付日本経済新聞 朝刊

▽…韓国が日本による植民地支配から独立するにあたり、両政府が1965年に双方の債権・債務の関係などを清算するために結んだ取り決めを指す。協定は個人の財産・請求権問題について「完全かつ最終的に解決された」と明記していることから日本政府は旧日本軍による従軍慰安婦問題は「完全かつ最終的に決着済み」と主張している。

▽…協定は日韓両国が外交関係を樹立する根拠となった日韓基本条約と同時に締結した。お互いに未払い賃金などの請求権を放棄し、日本が無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力をすることで決着。65年6月に署名され、同年12月に発効した。2015年11月の日韓首脳会談では、国交正常化50年の年であることを念頭に、慰安婦問題の早期妥結に向けた交渉加速を確認した。

▽…韓国憲法裁判所は11年、同政府が日本と交渉しないのは元慰安婦らの人権侵害で違憲と判断。韓国政府は日本に「誠意ある措置」をとり、早急に解決するよう求めた。安倍晋三首相は15年11月、個人の財産・請求権問題は解決済みとの立場を堅持しつつ「どのような知恵があるのか、一致点を見いだすこともできる」と表明。両国の外務省局長などが協議を続けてきた。


◆(※3)慰安婦問題決着「歓迎する」 米が声明発表

2015/12/29 4:02日本経済新聞 電子版

【ワシントン=吉野直也】ケリー米国務長官は28日午後(日本時間29日未明)、日韓両国の懸案だった旧日本軍による従軍慰安婦問題が合意したことについて「歓迎する」との声明を発表した。

声明は合意について「米国の最も重要な同盟国である日韓関係の和解を促し、改善を後押しすることを信じている」と指摘。同時に「日韓の指導者が持つ勇気と未来像を称賛し、国際社会がこの合意を支持することを求める」と強調した。

さらに地域や国際的な課題の解決に向けて「米国は日韓両国と経済的な結びつきと安全保障上の協力を前進させることを含め、継続して取り組むことを楽しみにしている」と表明した。ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)も同趣旨の声明を出した。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]