追い込まれていくプーチン大統領と習主席 鍵は米金利と石油価格

マクロ経済的にロシアと中国の現状を比較的要領よくまとめた記事がありましたので、掲載しておきたいと思います(※1)。

2016年、世界の政治経済情勢を左右する鍵は、米金利と石油価格。1980年代、当時の米レーガン政権は高金利によって石油相場を押し下げた。資金難のモスクワはワシントンが仕掛ける軍拡に対抗できなくなった。結末が91年のソ連崩壊である。ワシントンはFRBの政策転換によって、反米産油国に浸透する北京の戦略を頓挫させつつある。

・・・と記事は指摘しています。


[以下、引用]
◆(※1)追い込まれていくプーチン大統領と習主席 鍵は米金利と石油価格

2016.01.12 ZAKZAKより
【日曜経済講座】

2016年、世界の政治経済情勢を左右する鍵は、米金利と石油価格だとみる。米連邦準備制度理事会(FRB)による市場の利上げ期待は原油価格をさらに押し下げ、エネルギー収入が政府予算の5割近くを占めるロシアを苦しめる。中国の対外膨張を担う国有企業は人民元安で債務負担増と株暴落の泥沼に沈む。

グラフはFRBのドル資金発行残高と原油相場と中国最大の国有石油資本「ペトロチャイナ」の株価の変動を重ね合わせている。FRBは08年9月のリーマンショックのあと3度にわたって資金を大量増発する量的緩和(QE)を実施し、14年10月に打ち切った。QEと原油相場は見事に連動している。QEの終了観測が出始めた14年半ばから余剰ドルは市場から引き揚げ、原油価格は下落し始めた。利上げの動きの表面化とともに下落傾向は加速している。 

ロシア経済は旧ソ連時代のエネルギー依存体質を受け継いだ。1980年代、当時の米レーガン政権は高金利によって石油相場を押し下げた。資金難のモスクワはワシントンが仕掛ける軍拡に対抗できなくなった。結末が91年のソ連崩壊である。

ロシア帝国復興をもくろむプーチン政権に対し、ワシントンはレーガン時代の戦略を参考にしているかのようだ。FRB首脳陣は、2015年12月中旬に景気への衝撃を憂慮する内外の根強い慎重論を押し切って利上げに踏み切ったが、今年も段階的に追加利上げする姿勢だ。利上げの数日後には米議会が米国産石油輸出解禁に踏み切り、石油市場急落に弾みをつけた。

ワシントンに振り回されるプーチン政権としては、エネルギー市場の支配権を確保したい。14年3月のクリミア編入、15年9月のシリアへの軍事介入には石油や天然ガスのパイプライン戦略がからんでいる。ロシア産天然ガスの大半は親米のウクライナを経由して欧州に供給されている。パイプライン・ルートのクリミア半島はロシアにとって地政学的要衝である。

シリアはイラクやイランなど中東の欧州向け石油パイプライン計画の中心である。シリア政権が親米欧派に代わってパイプライン計画を実現すれば、欧州はロシアへのエネルギー依存度を大きく下げられる。ロシアが反米のアサド政権を見放すはずがない。

ペトロチャイナは国有エネルギー企業の中核として、石油相場が上昇を続けているとき、イランなど中近東、ベネズエラなど中南米、スーダン、ナイジェリアなどアフリカの産油国への進出を担ってきた。FRBのQEが終了とともに、原油相場が落ち込むと、海外プロジェクトの多くは巨大損失しか生まなくなり、相次いで撤収に追い込まれている。ワシントンはFRBの政策転換によって、反米産油国に浸透する北京の戦略を頓挫させつつある。

ロシアと中国は今後、結束を強めるだろうか。1月中旬に初の総会が開かれるアジアインフラ投資銀行(AIIB)は中露間の石油・ガスのパイプライン建設資金提供の母体となるが、ドルが立ちはだかる。AIIBには世界最大の資金の出し手である日本とドル金融の本家米国が加盟していない。このため、AIIBが外貨調達のために発行する債券は米格付け機関から格付けを得られていない。得られたとしても、信用度は低く、金利が高くなる。米利上げも足かせになる。

本紙を除くわが国の主要メディアの大半が、昨年のAIIB設立時には「バスに乗り遅れるな」という論調を掲げ、中国共産党が仕切る習近平国家主席のためのこの多国間融資機関への参加を安倍晋三政権に迫った。AIIBが中国膨張の一環であるという現実を無視した甘い考えだ。不参加はまさに正解だった。

AIIBは人民元建ての資金を活用するしかない。元は16年10月から国際通貨基金(IMF)・特別引き出し権(SDR)構成通貨入りする予定だが、元や株式の相場は暴落不安がつきまとうし、金融市場は閉鎖的だ。貴重なエネルギー資源の代金を使い勝手が悪い通貨で受け取るのはばかげている。プーチン大統領としても元建ての取引には慎重になるだろう。

ワシントンの金融政策によって追い込まれるプーチン政権はウクライナ、中東でこれまで以上に武力にものを言わせようとするのか。習政権は米利上げというデフレ圧力によって膨れ上がる巨大企業債務(本欄昨年12月27日付参照)の重圧の中で、破れかぶれのダンピング輸出攻勢をかけるのか。あるいは、対米協調に転じてワシントンの警戒を解こうとするのだろうか。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]