中国、台湾新政権の出方探る 蔡氏「一つの中国」認めず

今回の台湾の総統選挙で、中国が妙に大人しいのが気にかかります(※1)。何事もなかったかのように、台湾独立志向の蔡英文・民進党主席が当選してしまいました。

報道の通り、中国側は慎重に対中姿勢を見極める構えなのかも知れませんが、過去には様々な横槍を入れていましたので、何もなしというのは中国らしくありません。水面下で何らかの「中国寄りの合意」があるのか、それとも軍区体制の変更手続きで中国の内情が混乱しているのか、はたまた単純に軍資金が欠乏しているのか、実態は不明ですが、少なくとも中国経済の不振が影響していることは間違いなさそうです。

韓国の日本寄り転換、そして台湾の離反、いずれも中国経済の不振が背後にありそうです。仮に今回の台湾総統選挙に対して中国が本当に「自然体」であったとするならば、中国の経済不振はなりふり構わず火消しに回らざるを得ないほどの相当な大きさではないかと思われます。

やはりここは、ソロス並みの想定で慎重に構えるのが得策でしょう。


[以下、引用]
◆(※1)中国、台湾新政権の出方探る 蔡氏「一つの中国」認めず

2016/1/17 0:41日本経済新聞 電子版

【台北=山田周平】台湾で16日行われた総統選挙で、独立を志向する最大野党の民進党が大勝し、8年ぶりの政権復帰が決まった。国民党の馬英九政権はその間、中国共産党との政治対立に終止符を打ち、経済を軸とした中台交流が拡大した。しかし、当選した蔡英文・民進党主席は交流の前提となった「一つの中国」の原則を認めていない。中国は新政権の対中姿勢を慎重に見極める構えだ。

蔡氏は同日夜の記者会見で「一貫性があり、予測可能で、長続きする両岸(中台)関係を築く」と語った。安全保障上の脅威でありながら、輸出など経済では依存する中国との関係の安定が新政権の最大の課題だと認識している。

中台は国共内戦で国民党が台湾に敗走した1949年に分断し、双方が「自らが中国の正統政権だ」と主張して対立した。2000~08年には台湾独立を党綱領に掲げる民進党が政権に就き、「統一・独立」問題に形を変えて対立が続いた。

国民党が08年に政権復帰すると、国共両党は和解を進めた。自由貿易協定(FTA)に当たる経済協力枠組み協定(ECFA)など23の協定を締結。昨年11月に習近平国家主席と馬英九総統による初の首脳会談を開くまで関係を改善した。

16日の総統選で国民党が敗れたのは、台湾住民が行き過ぎた対中接近に警戒感を抱いたのが理由のひとつだ。とはいえ、経済界を中心に「両岸関係の安定を望む声は根強い」(国民党長老)。蔡氏は対中政策で微妙なかじ取りが求められる。

中国は蔡氏について、前回の民進党政権で急進独立路線を歩んだ「陳水扁(総統)よりずっと理性的だ」(アモイ大学台湾研究院の劉国深院長)と判断している。まずは馬政権と結んだ協定を破棄するような強攻策は避け、蔡氏の出方を探るとの見方が多い。

実際に、習氏は中台首脳会談で「過去にどんな主張をした政党であろうと、我々は『92年コンセンサス』の歴史的事実を認めさえすれば交流を望む」と語り、民進党に対話の条件を早々と投げかけていた。92年コンセンサスとは中国大陸と台湾が「一つの中国」に属するとの原則を指す。

蔡氏は5月20日の総統就任式の演説で、自らの対中政策を明確に語るとみられる。ただ、就任前にも中国に対話継続のサインを送る見通しだ。ある民進党幹部は同党が16日の改選で過半数を獲得した「立法院がカギを握る」と指摘する。

中国は馬政権にECFAの具体化を再三求めてきたが、立法院運営のまずさから関連法案を成立させられなかった。民進党主導で成立させ、中台の実務関係を前進させる意志を示すシナリオだ。

ただ、民進党は長年、92年コンセンサスは「存在しない」との立場をとっており、蔡氏も現時点では「92年に(中台の交流窓口機関の)会談があった歴史的事実は否定しない」と述べるにとどめている。「認める」ことを対話の条件とする中国とはまだ距離がある。

一方、中国はこの8年間で海洋進出を加速し、西太平洋で軍事・外交上、米国に対抗しうる態勢づくりを目指してきた。その出入り口に位置する台湾が“嫌中・親日米”の民進党政権に交代することは、中国の勢いをそぐ効果を持ちそうだ。

しかし、前回の民進党政権では陳水扁総統(当時)が「台湾名義での国連加盟」など中国が「法的独立」と見なす言動を繰り返し、逆に台湾海峡の緊張を招いた経緯もある。米国は蔡主席の当選を歓迎しつつ、自制を求める見通しだ。
[以上 引用/マクロ経済動向と資産運用形成研究室]